9EX

シイジビデフエ
アドフリミエロ

MH30

2015-04-26 11:11:11 | 小説
 皆にほめそやされて、マンザラデモない顔をしているサワちんをミナコは見ていた。
その目は氷の中の気泡のように暗く動かなかった。

(その子はニシのヒトやで……)ミナコは言ってしまいたい衝動にかられた。

 そんなことをしたら他のヒトタチを同じになってしまう。
和やかなこの雰囲気に水をさしてしまうことになりかねない。

いずれ、軽音楽部の人たちもサワちんがニシの子だと知るだろう。
そしたら、彼らの対応にどんな変化があるんだろう、変化はあるかもしれないし、ないかもしれない。

私の口から今、あえて言う必要なんてない。

まんまとこのシステムの作り出す罠にハマるところだと気づいた。
ヤバイ気をつけな。
私がここの参加者として感情に流されて行動してしまったら目的を果たせない。

 問題点を見つけ、調査し、評価する、それが私がここにいる目的。
この世界での少しの誤謬も見逃してはならない。

 マツダセイコを4Dホログラムで見た覚えがあるとドラム男が言っていた。
ギター男とボーカルのマツキはマツダセイコをあまり知らないようだった。

 ミナコとサワちんは軽音楽部のバンド練習の途中で先に帰った。
先輩と明日から、ここに来る約束をした。
教科書とかノートとか鞄を置いたままだったから、
一度自分たちの教室に戻らなければならなかった。

教室にもどるまであまりしゃべらなかった。

なんか重たい雰囲気だった。

どうしてやろ。

ミナコが弾けもしないギターを無理して弾いたからかもしれないし。

ニシのくせに先輩男子にチヤホヤされているサワちんが浮かれ顔をしていたからかもしれない。

だったら、サワちんがどんな顔をしていたら、満足なワケ?……ミナコは自問していた。

水をかけられて、半泣きだったら、いいってワケ?



教室に戻りミナコは、「トイレで水をかけたヤツ、二度とせえへんようにせなな」サワちんにぽつりと言った。



――吉高浩司――
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