3000mの山に登りたい。
山には興味のなかった君がそうつぶやいた。僕はそんな君をよりによって槍ケ岳へ連れて行くことにした。
果たして3000mの頂に僕たちは立つことが出来るのだろうか。
雨の降る中、黙々と歩いた。滑りやすい雪渓をひたすら歩いた。やがて雨はやみ、気がつけば槍の穂先が眼前に迫ってきた。
なんとも言えぬ高度感。空に昇っていくような気がした。怖かった。それでも僕たちは登った。そして、君は笑顔で頂上を極めた。
よく歩いたね。何ひとつ不平不満を漏らすことなく君は歩き通した。
僕は素直に褒めてあげた。
もっともっと幼い頃からこうして褒めてあげればよかったのにね。