■イタリア協奏曲1楽章、ゼクエンツが美しさをより明るく輝かす■
~第2回イタリア協奏曲・アナリーゼ講座、構造を初版譜から読み解く ~
2016.7.9 中村洋子
★これまでのブログで、「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」や
「Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集」第1巻3番に見られる、
Bachの「Sequenzゼクエンツ」について、分析してきました。
★それでは、「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」はどうでしょうか?
第1楽章をみますと、Bach特有の美しいSequenz ゼクエンツが、
すぐに、見つかります。
★例えば、42小節目後半から43、44、45小節目にかけての
Sequenz ゼクエンツです。
(注:第1楽章の主調はF-Dur ですが、ここでは属調のハ長調
C-Durに転調しています。)
★42小節目後半「Ⅰ」、43小節目「Ⅳ Ⅱ」、44小節目「Ⅴ Ⅲ」、
45小節目「Ⅵ ドッペルドミナント」という和声です。
★各小節の1拍目だけ見ますと、[ Ⅳ - Ⅴ - Ⅵ ]の順になり、
2拍目だけ見ますと、[ Ⅰ - Ⅱ - Ⅲ - ドッペルドミナント]
になります。
ここでもし、機械的に割り振りますと、
[ Ⅰ - Ⅱ - Ⅲ - Ⅳ ]となります。
その場合は、このようになります。
★Bachが書いた通りの、42小節目2拍目~45小節目にかけての
Sequenz ゼクエンツの和声要約をしますと、このようになります。
★もし、45小節目2拍目の和音を「Ⅳ」の和音にした場合、
和声要約は、このようです。
★この四つの譜例を、ゆっくりと弾いてください。
45小節目後半の和音が、「Ⅳ」で「f²」であっても美しいのですが、
そこをもう一工夫し、Sequenz の「fis²」にしたことで、
さらに、絶妙な美しさとなります。
明るい中に、太陽の光がギラッと差し込むかのようです。
★この「ドッペルドミナント」という和音の詳しい説明は、
私の著書≪クラシックの真実は大作曲家の自筆譜にあり!≫の、
Chapter 2 の Page 35~36 「ワルトシュタインと月光ソナタの
冒頭を和声分析すると・・・」に、詳しく説明されています。
★「ワルトシュタインソナタ 」第1楽章冒頭2小節目4拍目~
3小節目にかけての、
「ドッペルドミナント」から「ドミナント」への和声進行が、
「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」
第1楽章45~46小節目にかけての和声進行と、
全く同じであることが、よくお分かりになると思います。
★イタリア協奏曲はこうです。
ワルトシュタインの該当箇所は、ここです。
そこを和声要約しますと、
全く同じになります。
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■中村洋子 Bach《イタリア協奏曲》アナリーゼ講座
~第2回:イタリア協奏曲の 「構造」を、初版譜から読み解く~
・日 時 : 8月10日(水) 午前10時~12時30分
・会 場 : カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9
(尾山神社前 南町バス停より徒歩3分 有料駐車場をご利用下さい)
・予 約: Tel.076-262-8236 金沢ショップ
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★イタリア協奏曲アナリーゼ講座の第1回目では、
Bachの「後期和声様式」についてご説明し、
その和声をどう演奏に活かすかを、具体的にピアノで音にしながら、
耳と頭(理論)で体験していただきました。
第2回は、イタリア協奏曲第1楽章がどのような「構造」で成り立っているか・・・
第3回は、演奏するうえで、これまでの分析をどのように活かすか・・・
についてお話いたします。
★≪tutti(総奏)は強く、soloは弱く弾く・・・≫という、
固定観念に囚われていませんか?
それでは誰が弾いても、同じ単調な演奏となってしまいます。
Bachの豊潤な後期和声様式は、決して貧弱に縮こまったものではないのです。
★「盤石な構成」と「色彩豊かな和音」、
この二つが互いに照らし合うような演奏こそが、
この傑作の真価を発揮できる演奏といえます。
107小節目から110小節目にかけての、
美しい反復進行(Sequenz)を見てみましょう。
★和声進行を支えているバスのみを抽出してみますと、
旋律線を形成します。
これは、実は曲の構造の要であるmotifでもあるのです。
★Bach生前1735年に出版された初版譜を勉強することにより、
作曲家の意図した構造が、しなやかに浮かび上がってきます。
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■講師: 作曲家 中村 洋子
東京芸術大学作曲科卒。
・2008~09年、「インヴェンション・アナリーゼ講座」全15回を、東京で開催。
・2010~15年、「平均律クラヴィーア曲集1、2巻アナリーゼ講座」全48回を、
東京で開催。
自作品「Suite Nr.1~6 fur Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」、
「10 Duette fur 2Violoncelliチェロ二重奏のための10の曲集」の楽譜を、
ベルリン、リース&エアラー社 (Ries & Erler Berlin) より出版。
・2014年、自作品「Suite Nr. 1~6 fur Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」の
SACDを、Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏で発表
(disk UNION : GDRL 1001/1002)。
・2016年 ブログ「音楽の大福帳」を書籍化した
≪クラシックの真実は大作曲家の「自筆譜」にあり!≫
~バッハ、ショパンの自筆譜をアナリーゼすれば、曲の構造、演奏法までも分かる~
(DU BOOKS社)を出版。
・2016年、ドイツのベーレンライター出版社(Barenreiter-Verlag)が刊行した
バッハ「ゴルトベルク変奏曲」Urtext原典版の「序文」の日本語訳と
「訳者による注釈」を担当。
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第3回 イタリア協奏曲第1楽章 9月28日(水) 10:00~12:30 金沢ショップ
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