母が入院し、不安で、息ができなくって、
駆け込んだ裏のお宅から、見事に咲いた牡丹をいただいた。
母の寝ている部屋は、
上品な桃色の花の、芳しいかおりがしている。
今日、携帯に姉から電話があった。
母に電話したいが、頻繁にかけすぎると不審に思わないかと
心配してる。
私たちは告知を選択したものの、
はっきりした病名は主治医も口にしなかった。
転移や余命について、母は聞こうとしなかった。
ただ、体調だけは日に日に変わっていく。
私は、あれだけ悩んで告知を選択したんだから、
我慢しなくていい。
声を聞きたければ、毎日だって電話すればいいと姉に言った。
泣かなくなった姉が、電話の向こうで声を上げて泣いている。
「強いから!大丈夫だから!」
そう言って電話を切った。
カーラジオの音を掻き消すような大声で泣いた日以来、
私は泣けなくなった。
真実を一番受け入れてないのは、私なのかもしれない。