写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

龍鬢表(りゅうびんおもて)

2019年02月12日 | 生活・ニュース

 テレビで「絶滅寸前! 日本を守る職人たち」という番組を見ていた。今では日本国内で、たった4軒でしか作っていない特殊な畳表を、4代にわたって作り続けている尾道の職人のことをやっていた。

 畳表の一種である「龍鬢表」という特殊なものである。「龍鬢表」とは、乾燥した良質のイグサだけを選んで、水洗い・天日乾燥を3回繰り返した後、もう一手間を施して無地織りにし、均一の渋茶色・飴色に仕上げた畳表のことである。座敷で使用する普通の畳表の1.4cmの目幅に対して、大目は3.6cm、小目は2.2cmに織られる。

 龍鬢表は茶室の床畳や和室の床畳として使われる。その理由は、水洗い・天日乾燥などを施すことで渋茶色・飴色に変色させることにより、床に花瓶などを置いた場合、置いた所だけが日焼けしないで色むらが出るのを防ぐ目的があるという。
 
 また、その昔、電灯がなかった時代、ろうそくや菜種油の火を灯したが、畳の色が青いと部屋全体が薄暗く感じられる。しかし、龍鬢表を使用した大目の畳は色が黄金色のため、部屋の中、特に床の間を少しでも明るく見せたいという思いから人々の間で受け入れられ、親しまれてきたということを知った。

 番組を見終わった後、スケールをもって我が家の和室に入ってみた。改めて部屋の畳を見ると、目の幅は普通の畳表の1.4cmのものであった。家を新築して以来30年近くが経っている。今まで何度も床に花瓶を置いたり、鏡餅を飾ったりで床畳を見ているが、目の大きさはいくらあるかと聞かれても、全く関心を持って見ていなかったので答えられない。

 スケールで目幅を測ってみると、大目の3.6cmあった。これを本当の「龍鬢表」というのかどうか分からないが、新築するとき、建築士と床畳の仕様について話し合った覚えはないのに、知らぬ間に「龍鬢表」が使われていた。今、施工不良で話題になっている賃貸アパートのレオパレスとは違って、我が家の建築士は、ちゃんとした日本古来の畳文化の仕様を守り、仕様書通りに施工管理をしてくれていることに安どしている。