写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

今どきの体温計

2014年10月04日 | 生活・ニュース

 少し熱っぽい感じがしたので体温を測ってみようと思い薬箱を開けた。ここ数年、体温など計ったことがない。いつもの所に置いてある体温計が見当たらない。それらしきところを探してみるが、どこにもない。翌日、大型の薬店に買いに出かけた。

 「体温計」と掲げた棚に、メーカー別、型式別に色々なものが並べてある。まずは価格表示に目が行った。1000円から2000円、3000円くらいの大きく3段階のものがあった。ぶら下げられている簡単な説明を読むと、価格の差は、どうやら測定時間の差だと判断した。
 安いものは10分間、実際は6分間くらいで計れるようだ。価格の高いものは20秒で計れるという。どこでこんな差が出るのか。そんなことは分からなかったが、家で体温を測るのに、測定時間を気にするような生活スタイルではない。時間はいくらでもある。そう思って、安い1000円のものを買って帰った。

  実際に使ってみると5,6分で「ぴぴぴぴっ」と測定終了を知らせる音が出る。私が使うにはそれほど問題はないが、幼い児の急な発熱に驚く母親の立場に立てば、一刻も早く知りたいだろう。20秒で測定できる体温計のニーズもうなずける。
 ところでなぜこんなに早く測定できるのか、疑問に思い調べてみた。体温計には
「実測式」と「予測式」の2つの測定方式がある。予測式は、実測式の欠点ともいえる「検温時間」を短縮するために開発された方法である。

 実測式とは、水銀体温計や電子体温計の一部のものがこの方式で、これ以上、上がらない温度(平衡温)になるまで測る必要がある。予測式とは、平衡温を短時間で分析・演算した値を表示する方式である。1983年にテルモが日本ではじめて開発した。

 何ごとも早い方がもてはやされる今の時代、敢えて遅い方を選んでみたこの体温計。測定開始5分後の「ぴぴぴぴっ」という音を聞きながら、やっぱり20秒で計れるという予測式にすれば良かったかな、いや、年金も削られる一方だしなどと思いながら、小さい秋の庭を眺めている。