写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

虫出しの雷

2018年03月06日 | 季節・自然・植物

 これも「老人性」という枕言葉がつくのだろうか、乾燥肌で湿疹ができるので、2カ月に1度、皮膚科に行って保湿剤を出してもらっている。昨日は朝から春にしては強い雨が降っていたが、ネットで予約を入れておき、10時に雨を突いて病院へ出かけた。

 強い雨のせいか、待合室に座っている患者は日ごろに比べると少ない。順番が来る間、置いてある週刊誌を読んでいた。その時、建物の裏の方から突然「ドッカン」と、何かが大爆発したような、とてつもないでっかい音がした。

 私の右前で直角方向に向って座っている60歳くらいの女性も週刊誌を読んでいたが、音がした瞬間、お尻を浮かせて私と目が合った。数秒の間、顔を見合わせたまま、きょとんとしていたが「雷だったんですね」と言うと、ほっとしたような顔をして「びっくりしましたね」という。

 まさにとてつもない春雷であった。「春雷」とは、春の季語で、3月から5月くらいの時期に起こり、冬の終わりを告げる雷のことをいう。特に立春後に起こる雷を「春雷」と呼ぶ。冬から春へ季節が移る時の寒冷前線の動きが影響し、夏の雷に比べて短時間で音も小さいのが特徴と書いてあるが、そんな小さな音ではなかった。

 春の訪れを知らせる雷とも言われ、別名を「虫出しの雷」とも呼ばれている。そういえば今日6日は24節気の「啓蟄」である。「冬籠りの虫が這い出る」という意味であるが、まさにあの春雷の一喝で、地中に寝ていた虫は全員目を覚ましたに違いない。