写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

裏方さん

2005年06月04日 | 旅・スポット・行事












 6月1日、錦帯橋の鵜飼いが始まった。毎年のことではあるが、これが始まると夏の到来を感じる。

 その日の夕方、まだ陽があるときに河畔に行ってみた。対岸の川原にはテントが張ってあり、初日の何か行事がある様子であった。

 手前の岸には整備された鵜飼い舟が静かにその時を待って佇んでいる。少し上流に目を移すと、男衆が桟敷舟にござ・座布団などを運び込んでいた。

 それぞれの舟には、「招待客名」と書いた紙が張ってあり、客の乗る船が分かるようにしてある。

 初日は、どうやら招待客だけの夕のようだ。川岸は、開始の時刻に向け準備は万端整いつつあった。

 その場を離れ、城山の裾にある吉香公園の外周を車で走っていると、はるか前方の道幅一杯に、20人ばかりの男の背中が見えた。
 
 粋な法被姿の鵜飼いの男衆と、主役の鵜匠たちのようだ。この日を待ちに待ったというように大きく肩を揺らし、背なの柄模様を躍らせて、リアカーを押して川の方に歩いているのが見えた。

 夜の帳の中、かがり火に浮かぶ鵜匠だけでなく、多くの裏方が数百年前の夏の風物詩を、今に再現するために尽力していることがよく分かる。

 向こう3ヶ月間、岩国錦川の清涼感あふれる夏の川遊びは、今年もこうして幕を開けていった。
   (写真は、小躍りしている鵜飼いの「男衆」)