something in the medicine.

2011-12-08 22:51:00 | 看護/医療全般
  表題の英語は、先日のフローレンス・ナイチンゲールの講演会のときに講演者のLynn McDonald氏(世界中からナイチンゲールの手稿原稿も含め可能な限り収集して編纂されたCollected Works of Florence Nightingale16巻の編集責任者)のスライドで、'Nightingale's nursing'という項目の中にあったものだ。

 看護には医師とは独立した管理体系が必要で、マトロン(現在の看護部長)の役割は医師がしてはならないとし、「医師はいずれの場合も管理は上手くできない」とあって、それに続くナイチンゲールのジョークだとしている。
  something in the medicine.
  「医学にはそういう何かがあるのよね」というのが訳である。

 訳付けは文字だけでなく前後の文脈から推論していくのだが、スライド原稿は、講演の要点を短いフレーズで記すのでやりにくいところがあるし、不明な箇所が出てくることは避けられず、講演者との確認がどうしても必要だ。実際、この部分の訳は、直前のMcDonald氏との打ち合わせと、そのあと、当日同行していた大東文化大学大学院通訳論のイギリス人学生からsomethingの慣用表現、特にジョークでよく使われる表現とこの文脈での使われ方について貴重な意見を出してもらい、検討の結果、最終的に出てきたものだ。

-----説明は以下のようになる。

 このsomethingは、「その環境には目に見えない不思議な力があって、あの人たちにあのような影響を与えている」という意味になる。この意味では、'something in the water' という表現がジョークでよく使われているという。たとえば、

  All the children at that school are good at languages. There must be something in the water. 
  (あの学校の生徒は皆、語学が得意だ。あそこにはそういう何かがあるのだろう)

(残念ながら、somethingのこのような使い方については、日本にある辞書では詳しく説明されていない)。

 表題の'somthing in the medicine'に話を戻すと、この文脈では、waterをmedicineに入替えたplay on wordsと解釈できる。

-----

 'somthing in the medicine'とまとめたのはMcDonald氏なのだが、出所であるナイチンゲールの表現は、それよりももう少し踏み込んだジョークになっている。以下は、ナイチンゲールがクリミア戦争後の1859年、友人のシドニー・ハーバート(当時の陸軍大臣)に送った手紙の内容だ。

  As for doctors, civil and military, there must be something in the smell of the medicines which induces absolute administrative incapacity.
(Lynn McDonald (2010):Florence Nightingale at First Hand, Continuum: London, p156)

(民間、軍関係(病院)に関わらず、医師については、医学の雰囲気の中に、完全に管理無能力にする何かがあるようだ):(直訳では「薬のにおい」になるが、これもmedicinesで掛けた表現だろう)

 確かに、ナイチンゲールは一貫して、医師は治療に専念すべきであり、病院管理は医師でないものがすべきであると主張している。

 The great progress made in improving nursing in England was 'due to the fact that in many of our hospitals the management of the hospital is in the hands of civilians'.
(ibid. pp120-121)

(英国で看護が進歩したのは、多くの病院の管理が、civilianの手で行われるようになったことによる) 
 
 ここでいっているcivilianは、非専門家、つまり、医師でない者という意味だろう。医療のシビリアン・コントロール、つまり、医療は社会人文科学系の知識のある人が行うべきものと解釈できる。
 
 件の講演の締めくくりで、McDonald氏は、「ナイチンゲールは全く、古くなく、今の世の中に大きなヒントを与えてくれている」と言っていたが、まさにそのとおりだと思う。

("Florence Nightingale at First Hand"はCollected Works of Florence Nightingaleをおよそ200ページにまとめ別途、2010年に出版された)。
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