第43代紫組要領次第

開成高校第43代紫組要領次第係のホームページ。

年の瀬

2010-11-06 21:09:24 | Weblog
年の瀬。

寒くなると年末を感じて、慄然とする。それはなぜだろう、とふと立ち止まって考えてみるというかすでに立ち止まっているというか座っている。

寒いと、寒い⇒年末⇒今年も終わりか⇒さびしいなあ。となる。

冬にはめでたいこともたくさんある。正月しかり、クリスマスしかり。
でも、なぜか、寒い⇒年明け間近⇒正月の賑わい⇒楽しみだなあ、とはならない。

きっと「年の瀬」という感覚が日本人の私の身の奥に刻まれているからではないか。

---
---
---

瀬、とは川であり、歩いてわたれるようなそんな水場である。

この前こんな夢を見た。

ずっと以前になくなった祖父が川を渡っていく夢である。夢の中の私は子供だった。一緒にちいさな公園で遊んでいた。遊び終えた後、彼は、川の中に入っていった。すこしずつ深くなるが、あわてるわけでもなくたじろぐわけでもなく、ただただしずしずと進んでいく。しまいにはあたまのてっぺんまで水につかってしまう。そうして、おや、と思っているうちに、対岸の方で、頭が見えてきて、そのまますこしずつ水の上に姿をあらわして対岸に渡り終えた。

その一部始終をこちらから眺めている、そんな夢だった。

瀬。とはそういうものである。
対岸と書いたが、彼岸のことである。ひがん。
三途の川を渡る、そのイメージが僕の頭にはきっと日本人として生活していく中で身についたのだろう。
彼岸には黄泉の国がある。川を渡ればすぐそこなのだ。

---
---
---

話は変わるが、
冬になると音が冴える。

不思議なもので、夏場、窓があいているときよりも、窓もドアも閉まっている冬のほうが外の音がよく聞こえる気がする。遠くから聞こえる、電車の音。足音。裏の小さな路地まで入ってきて灯油を売っている車の安っぽいアナウンス。
冬のほうが空気が澄んでいて音が邪魔されないからだ、とかいう理屈はつけないでおく。


もともと病気がちで家に篭ることが多かった自分にとって、
見えるものというのは、部屋の中のある限られたものだけであった。

しかし、音は違った。
遠くから聞こえてくるものは、
世界にいろんなものがあふれているということを教えてくれた。

そうして、それらと音を介してつながっているということに気付くことで、
何とかじぶんも生きているんだなあと、その存在を確かめるものだった。

冬と年の瀬。

生きることについて---生きる意味とか人生の目的、とかそんな堅苦しいことではなくて---ただぼんやりと生きることについて考えるには、もってこいの季節である。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿