木野村寧氏の修正追試
道徳「この顔でよかった」
長山知直(TOSS芳賀野)tomonao@lime.ocn.ne.jp
中学生時代には、自分の個性を意識するようになってくる。そして、それが時には悩みになることもある。そんな中学生に、「海綿状血管腫」という病気になり、さまざまな差別を受けながらも、前向きに克服していく藤井輝明さんの生き方は、自分の個性を大切にすることを教えてくれる。本実践では、木野村寧氏の「ジロジロ見ないで」の授業を、藤井さんの差別を前向きに乗り越える姿に視点をあてて、組み立てを変えてみた。また、説明には、「運命の顔」(草思社)と「この顔でよかった」(ダイヤモンド社)を使った。 |
*キムタクの写真を提示する。
発問1 もし、あなたがキムタクだったとして、町の中を歩いていたら、周りの人は、どんな反応をすると思いますか? |
*列指名で発表させる。
*続いて、藤井輝明さんの写真を提示する。
説明1 藤井輝明さんです。顔のあざが大きく腫れ上がり垂れています。これは, 海綿状血管腫という病気なのです。 |
*資料(病気になった当時の話)を配付して読む。(「運命の顔」P72・13行目~p7 3・11行目)
発問2 もし、あなたが藤井さんだったとして、町の中を歩いていたら、周りの人はどんな反応をすると思いますか?
指示1 ノートに書きなさい。 |
*列指名で発表させる。
説明2 実際にあった話です。藤井さんが電車に乗っていると、知らない男の人ににらまれたり、つばをかけられたりしました。そんなことが、なんと100回くらいありました。 |
*資料(つばをかけられた時の様子)を配布して読む。(「運命の顔」P221・11行~P222・12行目)
発問3 なぜ、そんなことをされたと思いますか?
指示2 ノートに書きなさい。 |
*列指名で発表させる。(できるだけ、どのように考えているかを、多くの生徒に発表させたい。)*生徒たちからは、「気持ち悪いから」、「みにくいと思ったから」などという意見が出た。それらを受けて、厳しい表情をしながら、次のように話す。
*「差別」と大きく板書する。
説明4 小学校時代、このあざのために藤井さんはいじめられました。あだ名は「化け物」でした。 |
*資料(小学校時代のいじめに関する話)を配布して読む。(「この顔でよかった」P36・6行目~P37・10行目)
説明5 大人になって、大学をとても優秀な成績で卒業しても、「君のような顔の人は雇えない。」と、どの会社でも雇ってもらえませんでした。 |
*資料(藤井さんが就職活動で受けた差別の話)を配布して読む。(「運命の顔」P103・4行目~P104・9行目)
説明6 藤井さんは、子どもの頃からずっと、外見だけで判断されてきたのです。 |
発問4 こんな藤井さんをどう思いますか?
指示3 ノートに書きなさい。 |
*列指名で発表させる。
説明7 現在でも、藤井さんの嫌な経験は絶えません。普段の生活でも、藤井さんの顔をジロジロと見る人は数え切れないほどいます。「なんだ、その醜い顔は。気持ちが悪い。」そういう視線です。 |
発問5 そのような視線でジロジロ見られた時、藤井さんはどうすると思いますか?
指示4 ノートに書きなさい。 |
*列指名で発表させる。
説明8 正解は、なんと「笑顔でおじぎをする」です。このことについて、藤井さんは次のように言っています。「そういう相手に対して、にらみ返したこともありました。でも、にらみ返すことは、ぼくにとって、ちっとも気持ちのよいことではありません。そこで、笑顔でおじぎをすることにしました。そうすると、たいていの相手は、キョトンとした顔になります。あわてて視線をそらす人や、気まずそうにうつむく人など、反応はさまざまです。しかし、中には、ぼくにつられて笑顔になる人や、おじぎを返してくれる人もいるのです。この方が、相手にとってもぼくにとっても、よっぽど気持ちがいいことだと思いませんか?」 |
説明9 こうして、藤井さんは、顔のあざというコンプレックスを乗り越え、前向きに、前向きに、人生を切り拓いていったのです。 |
説明10 そんな藤井さんの前向きな努力に対して応援してくれる人も現れるようになりました。そして、努力が正当に評価されるようになり、周囲の協力もあり、ついに夢だった看護学の教授になったのです。 |
説明11 藤井さんの言葉です。「病気がなければ、平凡な人生を送っていたかもしれない。『血管腫』という病気があったからこそ、今の自分があるのだ。」 |
説明12 そして、こう言うのです。「この顔でよかった。」 |
*列指名で発表させていく。
※以下のような発表があった。
・人とは違うし、みんなからジロジロ見られるのに、笑顔でおじぎをしたり、藤井さんは、この顔でよかったと言っていて、すごく感動した。
・前向きに考えられることはすごいと思った。よい方に考えれば、人生は楽しくなるのではないかと思う。
・血管腫という病気なのに、こんなに前向きで、夢を叶え、「この顔でよかった」と思える藤井さんはとてもすばらしい人だと思った。
説明13 藤井さんは自分のコンプレックスを跳ね返し、プラスにしていったのですね。みんなも、自分の個性や欠点について悩んでしまうこともあるでしょう。「自分はダメだな。」とか「なぜ自分はこんなにも、他の人と違っているのだろう。」と落ち込むことがあるかもしれません。そんな時、コンプレックスを跳ね返し、前向きに生きる藤井さんのことを思いだしてほしいと思います。 |
*生徒たちは、真剣に聞いていた。
《先行実践》木野村寧氏「ジロジロ見ないで」、尾崎秀利氏「藤井輝明氏の生き方から学ぶ」
《参 考》 藤井輝明著「運命の顔」(草思社)、藤井輝明著「この顔でよかった」(ダイヤモンド社)、「ジロジロ見ないで」(扶桑社>
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