曖昧批評

調べないで書く適当な感想など

戦後70年ドラマスペシャル「妻と飛んだ特攻兵」の感想

2015-08-17 23:40:55 | テレビ・映画
この8月は、終戦後70年目ということで、安保法制改正を阻止したいテレビ朝日が大量の反戦?番組を投入している。その一環としてこのドラマが企画されたのだろうが、堀北真希が出ている以上、見ないわけにはいかない。

それにしても、戦争大嫌い・軍備大嫌いのテレビ朝日なのに、終戦記念日的な番組を作るために時代考証や戦術戦略、兵器の研究をずいぶんしている。このドラマなんて、3000万円かけて97式戦闘機を復元している。そういうことをやっているうちに、スタッフがミリタリー好きになっちゃうんじゃないかと思うのだが、どうなんだろう。



ドラマの筋は、タイトル通り、特攻しに行くパイロットの妻が一緒に乗っていってしまうというものだ。特攻というと海軍機で、ぶつける相手は米海軍の艦艇だと思っていたのだが、本作は陸軍の話。しかも舞台が満州で、相手はソ連陸軍戦車である。今まで映像化されてきた特攻、カミカゼとは随分趣が違う。

節夫(成宮)たちの特攻は、8月15日の午後1時に出撃する予定だった。そのため、出撃前に正午の玉音放送を聞いてしまう。いったんは、「拾った命」をそれぞれが大事にしよう的な話になる。そこから、なぜ、やはり特攻しようということになるのか。その辺が、ワンパターンになりがちな「特攻もの」とは違うストーリーの見せどころだった。

節夫は教え子(特攻要員)の後を追うため。房子は夫と一緒にいたいから。女性の場合は、ソ連兵に凌辱されるよりは死んだ方がまし、というのもある。西村(八島智人)は、捕虜になってシベリアで凍死するなら敵を巻き込んで死ぬ派。小熊(荒川良々)はもともと武断派。湯浅は結婚したばかりの妻が母親と自殺(凌辱されるのを避けるためと思われる)したので後を追う。まあ、だいたいどの動機もスジは通っていた。

が、湯浅が前日まで言っていた内容が僕の感想だ。そんなことをしたってソ連軍は止められない。キャタピラーが切れるだけで戦車は止まるし、航空機から狙える上面の装甲は薄いが、満州の民間人が襲われるのを遅らせるほどの損害を与えられるとは思えない。無駄死にである。節夫の教え子だって、靖国で待っているわけではない。死んだら無である。まあ、それは僕の死生観だが、何が何でも生き延びるという考え方はなく、みんな基本的には命より名誉が大事だった、という風である。それは、国家がそういう風に仕向けていたのと、戦国時代から続いている日本人独特の美学なんだろうが、それが当たり前の考え方なのが、現代の感覚では異常で、幼稚だ。異常で幼稚な行為を強いた当時の政府は、やはり間違っていたのだろう。


土壇場で小西真奈美が小熊機に搭乗し、まさかの男女二組体制で突撃した。

ただ、節夫が道場大尉にいう「国が国民を苦しめるような国にはならないでほしい」は、節夫=谷藤徹夫氏のではなく、テレビ朝日の考えだろう。そこまでで「国家のせいで我々は苦しんでいる」という話は出てこない。余計なシーンだった。しかも、エピローグでも「大事なことだから2回」とばかりに、もう一回出てくる。

「まっしろ」は数字的に苦しい作品だったが、本作では安定した演技、特に得意の泣きの演技もあり、まずまずよかった。やはり堀北真希はモンペ姿が似合うし、ちょっと古い時代のドラマが合うようだ(オールウェイズとか)。八嶋、荒川はコミカルな部分がないのに起用されているが、それぞれ個性的な人物の存在感を出せていた。成宮は、こういう役に慣れている、または視聴者側が見慣れている感じで安心して見ていられた。テレビ朝日の安保法制改正反対キャンペーンに乗るのは抵抗があったのだが、結構良くできた脚本とドラマだった。

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