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殿は今夜もご乱心

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施設ジプシー・11

2025年03月01日 10時34分35秒 | みりこんぐらし
昨日、実家の母サチコは退院した。

入院の荷物を車に積み込むと、そのまま隣市の施設へ直行。

紹介された介護付き有料老人ホームへ見学に行くのだ。


ちなみに有料老人ホームには、介護付き有料老人ホームと

住宅型有料老人ホームの二種類がある。

介護付き有料老人ホームとは、施設が介護サービスもまとめて行う形態の所。

住宅型有料老人ホームとは、施設が利用者に建物を貸して家賃を受け取り

介護サービスの方は、別の介護業者が行う形態の所。

別の介護業者といっても、たいていは施設が運営する会社なので

そう大きな違いは無いと思われる。


「見学で気に入って、入ると言ってくれたらいいけど…」

そこまでの期待は持ってない。

自宅から遠いことを理由に、必ず嫌がるはずだ。

説得?そんなことができる人間なら、実子に逃げられたりしない。


ともあれ、今空いている2階の個室を見送ったら

次はいつになるかわからない。

早く退院させて見学させなければ…

その一心で賭けに出たが、結論から申し上げると、私は賭けに負けた。


施設に向かう道中でも、サチコは遠い遠いを連発。

到着してケアマネの案内の元、ひと通り見学したが

「家から遠過ぎる…地元の施設なら入ってもいいけど」

その後の面談で、やはり予想通りのことを言った。

地元の施設が無理だとわかっていて、逃げるために言うのだ。


「地元の施設に入れるまで、こちらでお待ちいただけますよ」

ケアマネは言ったが、遠過ぎる、遠過ぎると繰り返すばかりで

ラチはあかない。

「何日か考えて、また改めてお電話させていただきます」

私はそう言って施設を後にしたが、次は断りの電話になるだろう。


サチコは帰り道でも、ブツブツ言いっぱなしだ。

「知らん所へ行きとうない」

「あんな所へ捨てられるんなら、◯んだ方がマシ」

「あれじゃあ姥捨山じゃ」


運転しながら、そう言い出すのを待っていた。

「今さら何を言いよんじゃ、すでに自分の娘に捨てられとるが」

「え…」

「家に帰ったらマーヤの年賀状、見てみんさい。

親には会いに来られんでも、家族旅行には行っとるで」

「どこへ行ったんでしゃ」

「タイと伊勢神宮、あとカンボジアじゃ。

それと、どこか知らんけど何かのテーマパーク。

その写真を印刷した年賀状を送りつける神経!

さすが、あんたの子供じゃ」


「タイいうたら、どこらへんかいの」

都合が悪くなると、話をそらせる。

「まあ、家に帰ったら見なさいよ。

私はマーヤの旅行のために、あんたの世話をやりようるんじゃないよ。

近くに住んどるけん、仕方なしじゃ。

ちったあ自分の置かれた立場を考えんさい」

「でも優しい家族に囲まれとるあんたは幸せじゃが!

私は不幸なのに!」

「幸せじゃったら不幸なモンの面倒見んといけんのか!

婆さん押し付けられて、年取っても走り回らんといけんのに

どこが幸せじゃ!大不幸じゃ!」

「ホンマじゃのぅ、ハハハ」

都合が悪くなったら笑って逃げる。


「老人ホームはマーヤの強い希望なんよ。

何としてでも入れてくれと、はっきり言われとる。

本人に電話して、聞いてみ」

「……」

もっと都合が悪くなったら黙るか、泣く。


これまでの数年、マーヤのことに触れるのは極力避けてきた。

サチコにマーヤを思い出させると、電話をかけまくると思ったからだ。

あの子も忙しいのに、仕事で疲れて帰って

サチコの胸が悪くなるような電話攻撃に遭ったら身が持たない…

マーヤの年賀状を見て、そんな私の気持ちは無駄だと知った。

今回、思いっきり言えてスカッとしたわい。

相手は認知症だから、すぐ忘れてしまうだろうけど

逆に言えば、すぐ忘れてしまうからこそ何を言ってもいいみたい。


サチコが「買い物に行きたい」と言うので

私の住む町のスーパーへ連れて行き、地元へ帰りついた。

有料老人ホーム入居の夢は終わったが、私にはもう一つ

残された期待案件がある。

玄関のドアだ。


入院中に変えた玄関ドアを、サチコはまだ見てない。

彼女は入院中、ずっとドアの心配をしていた。

表向きは「玄関がどう変わったのか心配」というもの。

しかし本心は「工事にかこつけて継子に大金を引き出されたのではないか」

という心配である。

あんまりドアドアと言うので、入院中に相談員と一時帰宅して

家を見る予定まで組まれていたが、相談員が急に退職したため

私が断る形で、一時帰宅は白紙になった。


「継子にお金を取られた」

これを言ったら即、絶縁する予定。

慣れているので全然平気だけど、傷ついたということにして激怒し

もう知らん!と言い捨てて帰るのだ。

言ってくれんかな〜。


しかし、甘かった。

車の中でさんざんマーヤの話を出したのが災いして

サチコの意識はマーヤに向いてしまい、ドアへの興味は失われていた。

「あら、自然な感じでいいじゃないの」

それで終了。

残念。


かくして私は、再び元の生活に戻る羽目となった。

玄関ドアが変わったら、デイサービスの送り出しはやめるつもりだったが

昨日、精神病院でもらった薬をショウタキへ預けに寄った時

ケアマネから、もう少し続けて欲しいと言われた。

言い分はわかる。

デイサービスに持って行くお風呂セットを毎日、バッグから出して

どこかへしまい込むため、毎回、一から支度をする必要にかられるのだ。


さあ、振り出しに戻った。

へえ、こうなるとは薄々思ってました。

でないと、施設ジプシーなんてタイトルはつけまへん。

今後もジプシーを続けるだけでありんす。

しかしサチコに言いたいことを言ったからか

疲れは無く、気分だけは爽快である。


皆様、不毛な話にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

《完》

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (みりこん〜しおやさんへ)
2025-03-01 17:12:30
マーヤから年賀状はほぼ毎年、一年間に行った
家族旅行の写真が地名付きで
所狭しとプリントされています。
家族一同、旅行が好きみたいですね。
こういうことが無ければ、楽しそうで
微笑ましい年賀状です。

数年に一回は写真館で撮影した家族写真の
年賀状もあって、サチコはそれを額に入れて
台所のテーブルに飾り、いつも眺めています。
自分に関心の無い子供を恋い慕う親心…
私には滑稽に映ります。
返信する
Unknown (しおや)
2025-03-01 15:08:30
ちょっと待ってくださいみりこんさん!

タイ、伊勢神宮、カンボジア、テーマパークて
1年間でですか!?!?

はぁあ!?!?
返信する

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