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森羅万象 ~ 歩く印象派

野ブタ。をプロデュース

2005年10月01日 18時55分41秒 | 読んだ本・おすすめ本・映画・TV評
 白岩玄さんの「野ブタ。をプロデュース」がこの秋、TVドラマ化され放映される。この春、読んだのだがTV化にあたって再読してみた。「人のセックスを笑うな」とともに芥川賞の有力候補作だったことも印象に残っている。(個人的には「野ブタ」を推奨してたんだけどな。)あと、清志郎先生が渋い本屋の主人役で登場というのもファンとしては気になるところだ。 

 転校生の野ブタ君はお定まりのいじめに遭いクラスで孤立無援の高校生活を送り始める。
一見クラスの人気者、実は本当の自分を決してさらすことの無い主人公の修二はひょんなことから野ブタ君と遭遇し、彼を「いじめられっ子」からクラスの人気者に仕立てあげて行くことを思いつくのだが‥‥。

 筆者の「いじめ」にたいする洞察力の鋭さはたいしたもんだ。同じ笑いでも二通りあって「‥‥笑いをバカにすんな。今まで陰で笑われてたのとはワケがが違うぞ。表の笑いだからな。本人をちゃんと目の前にして笑ったんだ。向かい合って笑った後に続くのは会話だ。」と言い切る。野ブタ君もこれには納得。
笑いについてはもう一度考察している。
「嫌悪先攻の蔑みの笑いと、バカにしても根元に愛嬌のある笑いの違いは大きい。わかりやすく言えば『あいつキモイよな』と『おまえキモイよな』では全然意味が違うということだ。」
集団によるいじめの本質が徹底した本人の存在の無視にあることを見抜いている。本人不在の「欠席裁判の」得意な御仁は本書をよく読まれたし。
 こんなセリフにも一理ある。「人間、中身を嫌われるとどうしようもないもので、他人からこういうところがいけないから直せと言われたところでまず直るものではない。」野ブタ君は性格で嫌われたのではなく、見た目や挙動不審ぶりで嫌われた点が幸いしたようだ。

ラストは少し消化不良な感も無きにしもあらずだが、TVでは大幅に変わってしまうんだろうな、たぶん。それでも10月15日からの放送が待ち遠しい。

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