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森羅万象 ~ 歩く印象派

東京スカイツリーは21世紀のピラミッド 池田信夫の「サイバーリバタリアン」 ― 第127回

2011年02月04日 19時43分52秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)
2010年10月13日 12時00分更新 ASCCI.JP

文: 池田信夫/経済学者

スカイツリーで電波障害は増える

 東京都墨田区で建設中の「東京スカイツリー」の高さが488メートルに達し、電波塔としては日本で歴史上第1位になったという。完成すると634メートルで、電波塔としては世界一になるそうだ。
実際に建設を担当している大林組のサイトより。東京タワーの332.6メートルはすでに大きく上回っている

 ところで、このスカイツリーは何のために建てるのだろうか。電波塔というからには、これが建てば今までより電波の届く範囲が広がるはずだが、すでに地デジの関東での電波カバー率はほぼ100%。これ以上カバー率を上げることはできない。スカイツリーは東京タワーより高いので遠くまで電波が届くと思っている人がいるが、東京タワーの電波の届く範囲は関東一都六県に限られており、これ以上広げることはできない。

 ではタワーが高くなると、ビル陰が減って電波が届きやすくなるだろうか。これも今の東京タワーでビル陰になるところは、ほぼ100%ケーブルテレビなどで難視聴対策が行なわれているので、これ以上、受信状態がよくなることはありえない。むしろ東京タワーから移動すると、電波の飛んでくる角度が変わるので、新たにビル陰ができてカバー率が落ちる。デジタルの電波はゴーストが出ない代わり、電界強度が一定以下だとまったく見えなくなる。

 要するに、スカイツリーによって電波事情が改善されるどころか、電波障害が増えるのだ。今までは電波の飛んでいるところにビルが建ったので、「原因者」であるビルの所有者が共聴アンテナを建てるなどビル陰対策を行なうが、電波の角度が変わって電波が受信できなくなる場合の原因者は国だ。全国マンション管理組合連合会は「国がビル陰対策の費用を負担しろ」と主張しているが、政府は補償しないので各家庭が対策を取らなければならない。

地デジの放送には必要のない展望台

 実はスカイツリーの事業主体である東武鉄道も、その目的に「地上デジタル放送の受信エリアの拡大」をうたっていない。その公式ウェブサイトには、こう書かれている。

新タワーに移行すると、地上デジタル放送の送信高は現在の約2倍となりますので、年々増加する超高層ビルの影響が低減できるとともに、2006年4月に開始された携帯端末向けのデジタル放送サービス「ワンセグ」のエリアの拡大も期待されているところです。

 つまりスカイツリーの目的は、ワンセグの受信改善なのである。ワンセグは屋外で使うので、ビル陰に入りやすく、ケーブルテレビなどの手段がないからだ。しかしワンセグはもう成熟商品で、出荷台数は前年割れ。特に最近はiPhoneなどのスマートフォンが増えて、ワンセグ機能はあまり重要視されなくなってきた。ワンセグは視聴率調査の対象にもならないので、テレビ局の営業収入にもつながらない。

 「新東京タワー」の構想が持ち上がったのは、地デジの放送が決まった1997年で、デジタル放送開始と同時に新タワーから放送する予定だった。しかし各社の意思統一ができないうちに2003年に東京タワーで放送が始まってしまい、ビル陰対策も7年かけてほぼ終わった。ところが「地域振興」にこだわった自治体が誘致合戦を繰り広げたため、放送には意味のないタワーをつくることになったのだ。

 石原慎太郎・東京都知事は、2004年の記者会見で新タワーについて質問されて「つくる必要はないと思う。インターネット時代でシステムが変わろうとしている時代に、あんなばかでかいタワーが要るかどうか、それはもう基本的な問題だ」と批判した。建設予定地は航空機の進路にあたるため、都の都市計画審議会では許可が下りず、計画を縮小して墨田区の都市計画審議会で通した。

 だからテレビ局は、スカイツリーの建設費を負担していない。建設費はすべて東武鉄道が出し、テレビ局はそれを借りるだけだ。経費はツリーだけで約650 億円、併設のオフィスビルや水族館など周辺開発を含めると総額約1430億円だが、設備投資を回収するキャッシュフローは展望台などの利用料金だけで、回収期間は25年かかるという。

 要するにスカイツリーは、地デジの放送には必要のない単なる展望台なのだ。こんなものを建てなくても、通信衛星を使えば100億円以下で全国100%に放送できたのだが、ここまで1兆円以上のコストをかけた以上、もう引っ込みはつかない。スカイツリーの建設には世界最先端の技術が使われているそうだが、この無用の長物は、技術者は世界一優秀だが経営者は世界最悪といわれる日本の企業を象徴する「21世紀のピラミッド」である。

八百長疑惑:3年前誘われた…元力士が証言

2011年02月04日 01時08分37秒 | 歩く印象派
毎日新聞 2011年2月3日 15時00分
 「星の貸し借りというやり方がある。金額は1番20万円だ」。08年当時、十両だった元力士が毎日新聞の取材に八百長を持ちかけられたことを証言した。八百長をうかがわせるメールが警視庁が押収した携帯電話に残っていた元幕内力士の春日錦(35)=現竹縄親方=との対戦前日で、仲介役とみられる当時の十両力士は、今回の疑惑で日本相撲協会の特別調査委員会が聴取する13人には含まれていない。角界に八百長がまん延していた実態が浮かんだ。

 元力士は08年に西日本であった場所中、支度部屋の外にある喫煙スペースにいたところ、十両力士が歩み寄ってきて、八百長の誘いをしてきたという。

 元力士はその時、八百長の存在を初めて知ったといい、「春日錦の名前は出してこなかったが、恐らく(春日錦に)言われてこちらの様子を探りに来たのだろう」と振り返る。

 誘いを断ったためか、その後こうした誘いはなくなった。しかし、これ以降、場所中に東西の支度部屋を行き来する特定の力士数人の存在が目に付くようになったという。相撲協会は不文律で東西の支度部屋の往来を禁止しているが、往来を目撃した中には、今回八百長メールのやり取りが確認された三段目・恵那司力士(31)も含まれていたという。

 元力士は「十両下位の力士らがグループを作り、八百長に手を染めるケースが一番多いと聞く。十両は月の手取りが約85万円だが、幕下に降格するともらえるのは2カ月に1回の小遣い約15万円だけ。負け越して降格するくらいなら星を買ってでも残りたくなる」と解説する。

 一方で、今回の八百長メールの発覚については「支度部屋でやり取りをして、取組をした力士同士が口裏を合わせれば絶対に証拠が残らない。痕跡が残るメールでやっていたこと自体が驚きだ」と話した。【袴田貴行】