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県警は取材自粛要請…日テレ「判断甘かった」

2010年08月01日 23時40分26秒 | 山関係のニュース(報道されたもの)
8月1日21時52分配信 読売新聞

 「結果として判断が甘かった」。埼玉・秩父のヘリ墜落現場を取材中の日本テレビの記者ら2人が死亡した事故で、同社幹部は反省の言葉を口にした。

 現場はベテランでも命を落としかねない危険な山で、地元県警は取材自粛要請を出していた。なぜ2人はガイドと別れて山に戻ったのか、登山装備は適正だったのか――。

 東京都港区にある日本テレビ本社ビル18階の会議室。1日午後4時からの記者会見に集まった50人以上の報道陣の前で、細川知正社長は「有能で意欲的な2人を失い、残念な思いでいっぱい。原因を究明し、再びこういう事態が起こらないようにしたい」と陳謝した。

 同社によると、亡くなったカメラマンの川上順さん(43)は、チベットでの取材経験もあり、同社の山岳取材の中心的存在だった。ヘリ墜落事故では地上から現場に向かうことを希望し、最終的に「ガイドをつけ、小型カメラで1日限り」という条件付きで社会部長が許可した。記者の北優路さん(30)は登山経験が乏しかったが、事故発生時の取材にかかわったことから、今回の取材も希望したという。

 2人は7月31日午前6時前、「今から入山します」というメールを最後に、上司とは連絡が取れなくなった。沢を登るときはTシャツ姿だったが、杉本敏也・報道局次長は、「それほど不適切な服装とは考えていない」と説明。ガイドといったん下山後、再度2人だけで入山した経緯については、「事前の打ち合わせと違う行動で、私どもも一番知りたい」と戸惑いを見せた。

 取材の自粛要請が出ていたことについては、「適正な装備、十分な準備をすれば、取材は可能ではないかと判断した」と説明したが、「結果として判断が甘いという指摘は免れない」と認めた。



>こちらは朝日の記事

2010年8月1日23時0分  朝日COM

 「無理しないよう指示していたのだが……」。埼玉県秩父市で、ヘリコプター墜落現場取材に向かった日本テレビ記者ら2人が遭難死した。同社は1日の記者会見で、事前の準備に問題はなかったと繰り返した。だが、警察が現場取材の自粛を求める中での事故だけに、「結果として判断が甘かった」とも述べた。2人を知る関係者は突然の死に驚き、嘆いた。

 「2人がガイドと離れ、登山道に戻った理由はわかっていません」

 記者会見で、渡辺弘報道局長は戸惑いを見せた。細川知正社長は「なぜこのような事態になったのか早急に把握したい」と述べた。

 同社によると、今回の取材の目的は、墜落したヘリの機体を地上から撮影することだった。取材を希望した川上順カメラマン(43)と北優路記者(30)に、社会部長がガイドの同行や1日で取材を終えることなどを条件に認めたという。

 川上さんは、6~7人でつくる同社山岳取材班の中心的存在。装備や現場での判断も任されてきた。杉本敏也報道局次長は会見で、Tシャツにジャージー、沢登り用ブーツという服装について、「装備は川上カメラマンが一元的に管理していた。不適切とは考えていない」と話した。

 2人から本社への連絡は、7月31日午前6時前に「入山します」とのメールがあっただけで、以後はなかった。本社からは2人の携帯電話や衛星電話に日中から連絡を試みたが、つながらなかったという。同社がガイドから聞き取った話では、3人でいったん沢まで下りたが、事故機が見える場所には行けなかった。川上さんと北さんが「機体が見える場所を探す」と言って再び山に戻ったという。

 地上から撮影した墜落現場の映像は、一部のテレビ局が既に放送している。杉本次長は「より詳細に事故のことを伝えたい気持ちはあったが、危険な山岳取材なので無理をするなと指示した」と述べ、2人に撮影に対するプレッシャーは与えていないと強調。再度入山したのは「現場の判断」と語った。

 同社は災害取材時などに備えた「取材安全基準」を設けているが、山岳取材に関する細かい規定はないという。

■ガイド「不安だった」

 一方、ガイドの水野隆信さんは1日夜、秩父署で記者会見し、2人について「装備的にも技術的にも不安があったので、早くやめようと思った」と述べた。ただ、何もしないでやめるのは難しいため、沢の水の冷たさを体験してもらい、雲行きも怪しかったので「やめましょう」と言ったという。2人が再び入山したことについては「尾根の方も見てみたいと言い、尾根は一般ルートなので不安を感じなかった」と語った。

■急峻で深い谷、危険が多い地域

 現場は埼玉と山梨の県境で、標高約2千メートルの山々に囲まれている。急斜面の谷間をいくつもの沢が走り、沢登りや渓流釣りで人気がある。一方で、付近では滑落事故などがたびたび起きるなど危険も多い地域だ。

 「谷が深く急峻(きゅうしゅん)で、川が樋(とい)のように狭い。夕立があると、すぐに水位が1~2メートルは上がり危険だ」と、地元の秩父山岳連盟の浅見豊さん(76)=秩父市中町=は指摘する。

 日本テレビの2人は7月31日早朝、山岳ガイドを伴って墜落現場に向かった。県警によると沢に下りたが、水が冷たく、水流も多いためいったん引き返している。

 再入山した豆焼橋付近から2人の発見現場までは直線で約2キロ。周辺には大小の滝があり、そこまで行くには通常、登山用具のザイルなどの装備が必要だという。

 沢登りは渓流に沿って山を登る。滑りやすい所を歩くことが多く、県警幹部は「頑丈な隊員でもしっかりとした装備と準備が必要」と指摘。沢登り経験が豊富な吉川仁さん(69)=秩父市大宮=は「岩登りをする時と同じような装備と技術で登らなければならない」と話す。

■カメラマンは山岳経験豊富

 日本テレビによると、川上順カメラマンは、アラスカや中国の梅里雪山、チベットの大氷河などの取材経験がある。元同僚の記者によると、大学時代に山岳部に所属し、「突撃カメラマンで性格は明るく、後輩らに報道カメラについて話す時の笑顔が印象的だった。面倒見が良く親しまれていた」という。

 北優路記者は社会部に所属し、事件や裁判取材が長い。埼玉県内に6月まで勤務しており、今回の取材に参加した。よく取材を受けていた埼玉県警の関係者は「物静かだが、理解できるまで引き下がらない熱心さが印象的だった」。別の県警関係者は「とても子煩悩だった。信じられない」と語った。