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森羅万象 ~ 歩く印象派

乾物と塩蔵で体に良い成分量が違う!

2010年05月22日 20時09分15秒 | 歩く印象派
 わかめ、こんぶ、もずくなど、私たち日本人にとって海藻は身近な食材。けれど、加工や戻し方によって、口にするときの成分の含有量が変わります。選ぶとき、加工法による違いを頭の片隅に置いておくと、賢くお買い物ができると思います。

塩蔵と乾物で成分量は異なる

 今回はもずくを例にあげて説明しましょう。

 もずくには、フコイダンとアルギン酸という水溶性食物繊維が豊富に含まれています。水溶性食物繊維は脂肪の吸収をおだやかにしたり、排出を助けたりする働きがあると言われています。つまり、油っこい食事にもずく料理を一皿加えると、食べ合わせが良くなります。

 ところがこのフコイダン、加工法によって含有量が変わってきます。カタログハウスでは、第三者検査機関である財団法人日本食品分析センターに、乾燥もずくと塩蔵もずくのフコイダン含有量の分析を依頼。その結果、乾燥もずくのほうが約11%多いことが明らかになりました。塩蔵もずくの場合、塩抜きのときにぬめりが取れてしまうため、ぬめりに含まれるフコイダンが流れ出てしまったものと考えられます。

バラつきのない製品にするために

 採れたてのもずくの栄養素をぎゅっととじこめたのが、「沖縄乾燥もずく」。沖縄産のもずくを現地で洗浄、乾燥させて板状にしたものです。保存がきき、食べたい分だけ手でちぎり、水につければ1~2分で戻る手軽さから、「通販生活」でも人気の食品です。

 けれど、発売開始1年後、商品にばらつきがでることが判明。検査人とメーカーとの二人三脚で原因を探ったところ、同じ沖縄県内でも、収穫場所や時期、水温や日照条件などによって、色や太さが変わることが明らかになりました。

 バラつきをなくすためにメーカーと協議して、色と太さの限度見本を作成。規格外のもずくは混ぜないことと、収穫したもずくをブレンドして全体で均一な状態にしてから製品化することを取り決めました。こうした生産者と加工業者の努力が実ったからこそ、商品のばらつきが抑えられ、「沖縄乾燥もずく」はベストセラーに成長していったのだと思います。

「すべて同じ」は不自然?

 とはいえ、もずくは自然の影響をうけやすい海藻であり、年によっての出来具合の差は生じてしまいます。自然の中で育つものはどうしても個体差が生まれます。均一化の努力はもちろん欠かせませんが、豊かな海が育むものだからこそ出る違いも、楽しんでいただければと思います。

 12回にわたりお送りしてきたこの企画も今回が最後です。商品が『通販生活』に登場するまでのテストの過程や、メーカー、生産者の方々の隠れた苦労もわずかながら、ご紹介できたかと思います。今後みなさまが食品や化粧品を選ぶときの、ひとつのヒントになっていれば幸いです。


執筆者

丸野泰則(まるの やすのり)
カタログハウス・ソロー事業部検査室長。1971年生まれ。日大生産工学部卒。ワックス・洗剤メーカーを経て98年入社。休日は神奈川・北鎌倉の自宅で野菜や果物の栽培を楽しむ。塗っているのは、米ぬかが原料の洗顔料。効果だけでなく、肌につけて荒れないかなどを確かめる。「使う側の代表として戦っています」