中国製ギョーザで10人中毒症状 農薬検出 千葉・兵庫
2008年01月30日21時28分朝日
日本たばこ産業(JT)子会社の「ジェイティフーズ」(東京都品川区)が輸入した冷凍ギョーザを食べた千葉、兵庫両県の3家族計10人が下痢や嘔吐(おうと)などの中毒症状を訴え、このうち、女児(5)が一時意識不明の重体になっていたことが30日、わかった。いずれも中国の食品会社「天洋食品廠公司」の製造。両県警がギョーザを鑑定したところ、メタミドホスなど有機リン系農薬が検出されたため、ジェイティフーズは、同公司製造の23品目、約58万点の自主回収を開始。冷凍食品大手の「加ト吉」(香川県観音寺市)も、同公司に委託製造した冷凍串カツ6種の回収を始めた。味の素グループの「味の素冷凍食品」も同日夜、中国の問題の工場で加工した牛肉を使った冷凍チャーハンの製造をしていることを確認、自主回収を始めることを明らかにした。
厚生労働省は、同公司から冷凍ギョーザを輸入した実績がある業者に対し、都道府県を通じて輸入自粛と販売中止を要請。事態を重く見た中国当局(国家品質監督検査検疫総局)も「日本の関係部門と連携を取りながら早急に事実解明をしたい」として調査に入った。
両県警などによると、中毒症状を訴えたのは、千葉県市川市の店員女性(47)ら家族5人と、千葉市稲毛区の女性(45)と女児(3)の母子2人、それに兵庫県高砂市の男性(51)ら親子3人。
市川市の5人は今月22日、同市内の「ちばコープ コープ市川店」で購入した「CO・OP 手作り餃子(ぎょうざ)40個」を食べたところ、吐き気や下痢などの症状を訴えたという。女性と長女(18)、小4の長男(10)、小2の次男(8)が重症、次女(5)が意識不明の重体になった。5人とも快方に向かっているが、現在も入院している。
千葉市の母子2人は昨年12月28日、同市花見川区の「コープ花見川店」で買った同じ商品を食べて吐き気などをもよおし、入院や通院をしたという。いずれも昨年10月20日製造の商品だった。
高砂市の男性の家族3人は今年1月5日、スーパーで購入した「ひとくち餃子」(20個入り、260グラム)を食べた後に同様の症状を訴え、10~14日間入院したという。これは昨年10月1日の製造だった。
警察庁によると、市川市と高砂市の被害者が食べたギョーザからはメタミドホスが検出された。また、千葉市の2人のギョーザからは、メタミドホスとは特定できていないものの有機リン系農薬の成分が検出された。
JTによると、冷凍ギョーザは、中国でパッケージされて輸入されたものという。原材料はキャベツ、ニラといった野菜と豚肉などだった。
厚労省の藤崎清道食品安全部長は30日夜、緊急記者会見を開き、「通常の残留農薬では考えにくい急性症状が出ている」と述べ、現状で発生件数が限られていることなどから、生産段階で使用された農薬が中毒の原因となった可能性は低いとの見方を示した。
厚労省によると、同公司製造の冷凍ギョーザは昨年1月から今年1月28日までに約1300トン輸入され、約1230トンを輸入するジェイティフーズのほか、2社が約70トン扱っているという。
一方、千葉県警と兵庫県警は、業務上過失傷害や食品衛生法違反容疑で農薬の混入経路などを調べる方針だ。
◇
〈メタミドホス〉 主に殺虫のために使用される有機リン系の農薬の一つ。日本では農薬として登録されていないが、中国では農薬として一般的に利用されているという。中毒症状としては、神経が異常に興奮状態となり、吐き気や発汗、瞳孔の縮小などが現れる。ひどい時には呼吸障害から昏睡(こんすい)となり、死亡に至る。内閣府食品安全委員会によると、一度に口から与えて半数が死ぬ「半数致死量」は、ラットの場合、体重1キロ当たり16ミリグラムで、急性毒性は毒物劇物取締法の毒物に相当する。
激しい吐き気、しびれる体 好物のギョーザ、命脅かす
2008年01月31日03時05分朝日
夕食のテーブルにのぼったギョーザは、農薬入りだった――。千葉、兵庫両県の3家族計10人が、下痢や嘔吐(おうと)の食中毒症状を訴えて入院していた。原因は中国製の冷凍ギョーザで、販売したのは消費者の信頼が売り物の生協や大手食品メーカー。「食の安全」を脅かす事態が、家族だんらんの食卓を直撃した。
千葉県市川市の家族5人が問題のギョーザを食べた22日夜。近所の知人男性の家に、子供の一人が「トイレを貸してほしい」と飛び込んできた。
男性が「おかしいな」と思い、この家族宅を訪ねると、長女(18)らが下痢や嘔吐を繰り返し、「おなかが痛い」「寒い寒い」と震えていた。男性が119番通報した。
家族の母親(47)の症状は当初、軽いようにみえた。男性らが事情を聴くと、母親は「ギョーザを食べ終わってから、みんな調子がおかしくなった」と話し、味については「問題なかった」と答えた。ギョーザは子供の好物で、食卓によく並んだという。
兵庫県高砂市で被害にあったのは自営業男性(51)と妻(47)、高校生の次男(18)の3人。
妻と次男によると、今月5日午後6時半ごろ、冷凍ギョーザを調理し、3人で食卓を囲んだ。
最初に食べた妻は、強い苦みが口の中に広がり、ツンと鼻に抜けるようなにおいに驚いた。すぐに吐き出した。次男も苦みを感じたが、パッケージに「ハーブにんにくを使っています」と書かれていたので「こんなものなのかな」と10個以上食べた。
次男はまもなく、めまいを訴え、横になった。続いて激しい吐き気をもよおし、スーパーの袋にもどした。両目の焦点が定まらず、体がしびれて手足が動かなくなった。
次男は病院に搬送された。救急車に同乗した妻が「わかる?」と呼びかけても「あー」とうめくだけだった。この直後、男性と妻も吐き気に襲われ、嘔吐と涙、鼻水が止まらなくなった。3人は入院し、胃洗浄の処置を受けた。次男の症状が特に深刻で、医師からは「このまま意識が戻らない可能性もある」と伝えられた。
次男は翌6日、意識を取り戻し、15日に退院。妻は17日に、男性も間もなく自宅に戻った。
次男は「呼吸もまともにできないし、自分はどうなってしまうんだろうと不安で苦しかった。農薬が入っていても目に見えないし、食べる側としては防ぎようがない」と憤る。
2008年01月30日21時28分朝日
日本たばこ産業(JT)子会社の「ジェイティフーズ」(東京都品川区)が輸入した冷凍ギョーザを食べた千葉、兵庫両県の3家族計10人が下痢や嘔吐(おうと)などの中毒症状を訴え、このうち、女児(5)が一時意識不明の重体になっていたことが30日、わかった。いずれも中国の食品会社「天洋食品廠公司」の製造。両県警がギョーザを鑑定したところ、メタミドホスなど有機リン系農薬が検出されたため、ジェイティフーズは、同公司製造の23品目、約58万点の自主回収を開始。冷凍食品大手の「加ト吉」(香川県観音寺市)も、同公司に委託製造した冷凍串カツ6種の回収を始めた。味の素グループの「味の素冷凍食品」も同日夜、中国の問題の工場で加工した牛肉を使った冷凍チャーハンの製造をしていることを確認、自主回収を始めることを明らかにした。
厚生労働省は、同公司から冷凍ギョーザを輸入した実績がある業者に対し、都道府県を通じて輸入自粛と販売中止を要請。事態を重く見た中国当局(国家品質監督検査検疫総局)も「日本の関係部門と連携を取りながら早急に事実解明をしたい」として調査に入った。
両県警などによると、中毒症状を訴えたのは、千葉県市川市の店員女性(47)ら家族5人と、千葉市稲毛区の女性(45)と女児(3)の母子2人、それに兵庫県高砂市の男性(51)ら親子3人。
市川市の5人は今月22日、同市内の「ちばコープ コープ市川店」で購入した「CO・OP 手作り餃子(ぎょうざ)40個」を食べたところ、吐き気や下痢などの症状を訴えたという。女性と長女(18)、小4の長男(10)、小2の次男(8)が重症、次女(5)が意識不明の重体になった。5人とも快方に向かっているが、現在も入院している。
千葉市の母子2人は昨年12月28日、同市花見川区の「コープ花見川店」で買った同じ商品を食べて吐き気などをもよおし、入院や通院をしたという。いずれも昨年10月20日製造の商品だった。
高砂市の男性の家族3人は今年1月5日、スーパーで購入した「ひとくち餃子」(20個入り、260グラム)を食べた後に同様の症状を訴え、10~14日間入院したという。これは昨年10月1日の製造だった。
警察庁によると、市川市と高砂市の被害者が食べたギョーザからはメタミドホスが検出された。また、千葉市の2人のギョーザからは、メタミドホスとは特定できていないものの有機リン系農薬の成分が検出された。
JTによると、冷凍ギョーザは、中国でパッケージされて輸入されたものという。原材料はキャベツ、ニラといった野菜と豚肉などだった。
厚労省の藤崎清道食品安全部長は30日夜、緊急記者会見を開き、「通常の残留農薬では考えにくい急性症状が出ている」と述べ、現状で発生件数が限られていることなどから、生産段階で使用された農薬が中毒の原因となった可能性は低いとの見方を示した。
厚労省によると、同公司製造の冷凍ギョーザは昨年1月から今年1月28日までに約1300トン輸入され、約1230トンを輸入するジェイティフーズのほか、2社が約70トン扱っているという。
一方、千葉県警と兵庫県警は、業務上過失傷害や食品衛生法違反容疑で農薬の混入経路などを調べる方針だ。
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〈メタミドホス〉 主に殺虫のために使用される有機リン系の農薬の一つ。日本では農薬として登録されていないが、中国では農薬として一般的に利用されているという。中毒症状としては、神経が異常に興奮状態となり、吐き気や発汗、瞳孔の縮小などが現れる。ひどい時には呼吸障害から昏睡(こんすい)となり、死亡に至る。内閣府食品安全委員会によると、一度に口から与えて半数が死ぬ「半数致死量」は、ラットの場合、体重1キロ当たり16ミリグラムで、急性毒性は毒物劇物取締法の毒物に相当する。
激しい吐き気、しびれる体 好物のギョーザ、命脅かす
2008年01月31日03時05分朝日
夕食のテーブルにのぼったギョーザは、農薬入りだった――。千葉、兵庫両県の3家族計10人が、下痢や嘔吐(おうと)の食中毒症状を訴えて入院していた。原因は中国製の冷凍ギョーザで、販売したのは消費者の信頼が売り物の生協や大手食品メーカー。「食の安全」を脅かす事態が、家族だんらんの食卓を直撃した。
千葉県市川市の家族5人が問題のギョーザを食べた22日夜。近所の知人男性の家に、子供の一人が「トイレを貸してほしい」と飛び込んできた。
男性が「おかしいな」と思い、この家族宅を訪ねると、長女(18)らが下痢や嘔吐を繰り返し、「おなかが痛い」「寒い寒い」と震えていた。男性が119番通報した。
家族の母親(47)の症状は当初、軽いようにみえた。男性らが事情を聴くと、母親は「ギョーザを食べ終わってから、みんな調子がおかしくなった」と話し、味については「問題なかった」と答えた。ギョーザは子供の好物で、食卓によく並んだという。
兵庫県高砂市で被害にあったのは自営業男性(51)と妻(47)、高校生の次男(18)の3人。
妻と次男によると、今月5日午後6時半ごろ、冷凍ギョーザを調理し、3人で食卓を囲んだ。
最初に食べた妻は、強い苦みが口の中に広がり、ツンと鼻に抜けるようなにおいに驚いた。すぐに吐き出した。次男も苦みを感じたが、パッケージに「ハーブにんにくを使っています」と書かれていたので「こんなものなのかな」と10個以上食べた。
次男はまもなく、めまいを訴え、横になった。続いて激しい吐き気をもよおし、スーパーの袋にもどした。両目の焦点が定まらず、体がしびれて手足が動かなくなった。
次男は病院に搬送された。救急車に同乗した妻が「わかる?」と呼びかけても「あー」とうめくだけだった。この直後、男性と妻も吐き気に襲われ、嘔吐と涙、鼻水が止まらなくなった。3人は入院し、胃洗浄の処置を受けた。次男の症状が特に深刻で、医師からは「このまま意識が戻らない可能性もある」と伝えられた。
次男は翌6日、意識を取り戻し、15日に退院。妻は17日に、男性も間もなく自宅に戻った。
次男は「呼吸もまともにできないし、自分はどうなってしまうんだろうと不安で苦しかった。農薬が入っていても目に見えないし、食べる側としては防ぎようがない」と憤る。