吉田繁治氏 ビジネス知識源 395号:中間選挙開票後の米国株価の下落は、負債のレバレッジ経済が崩壊する兆候か リンク
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テーマは、中間選挙後では異例である株価下落が、米国の過剰流動性相場つまり株価バブルを終わらせる兆候になるのかどうかの、検討です。「2019年は、米国株場バブル崩壊から金融危機、つまり10年目のリーマン危機」になるだろうと見ている人も、出始めたからです。
【米国株の上昇と下落の、5つの要因】米国株のバブル的な上昇は、以下の3つの要因からきていました。
(1)10年で15兆ドル(165兆円)のトランプ減税の開始、(2)海外での企業利益を米国に還流させた場合35%の税がかかっていましたが、2018年の利益についてはリバトリ法(愛国法)によって0%にしたこと。過年度の利益についても、8%から15.5%に減税しています。これが、海外のドルの米国への大還流をもたらし、株買いになっています。(3)2017年は50兆円、18年は70兆円の自社株買い。
他方で、米国株の下落をもたらす要因は、以下の2つです。
(1)米国FRBの、18年8月の利上げ(0.25%)と、2019年の3回の利上げの予告。(2)中国輸入(50兆円)の50%対する2018年は10%、19年は25%の課税と、課税品目の全輸入への拡大予想。この関税は、中国と米国の2019年からのGDPを低下させます。
以上5つの要因が、今後、どう働くかということです。
【中間選挙後の株価】2年ごとの定期的な中間選挙のあとは、11月から12月の年末であり、過去は開票結果にかかわらず、米国株は上げていました。わが国の、時期が定まらない国政選挙の前にも、与党の関与により、株価が上がることが多かったことと似ています。与党は、株価を上げることで、政権への支持を増やす狙いをもつからです。「政治サイクル」と言われます。
NYダウは、10月29日には2万4429ドルであり、10月16日からは5.4%下げていました。10月30日からは上げに転じ、開票直前の11月8日には、2万6129ドルにまで8.9%上げていました。8日間で+8.9%は、急騰です。
その後の、11月12日(月)までの4日間、NYダウは2万5387ドルへと2.8%下げています。3%程度上がる方向の中の下げですから、「4日間で2.8%+3%=5.8%」の急落と見なければならない。
【2017年と18年は、自社株買いが、株価を上げてきた】2018年の、米国市場の大手銘柄の自社株買いは、合計で70兆円という巨額になっています。これが、2018年の米国株が上昇するときの原因です。前年の自社株買いは50兆円/年でした。当時も「大きすぎる自社株買い」と言われ、「2018年はさすがに減るだろう」と見られていましたが、逆でした。
【世界のGDPの伸びを低下させるトランプ関税】日・米・中そして世界の、2019年のGDPの伸びを、1ポイント(IMF予想)から2ポイント(当方の予想)は低下させるトランプ関税という新しい要素が加わっています。
輸出の減少つまりGDP伸びの低下は、企業の売上収益(粗利益)の減少です。伸びてきた売上収益が10%減れば企業の利益の黒字はなくなります。リーマン危機のあとに起こった、企業への波及がこれでした。企業利益が半分に減れば、PER(株価/次期予想純益)は2倍になって、株価には50%下落調整の売り圧力が加わります。
【リーマン危機】リーマン危機のときは、日米の株価時価総額が50%に減少しました。経済の中で、現在のようにマネー量が増えている過剰流動性相場では、GDPの期待成長率の2ポイント(%)の下げが、株価を半分か、それ以下に暴落させ、恐慌めいた経済になっていくのです。
【対策としてのFRBのQE】リーマン危機のあとの、米国の銀行資産での信用収縮は、世界の実体経済を恐慌に陥れる規模でした。FRBは3度のQE(長的緩和で約4兆ドル(440兆円)を信用創造してマネーを増発し、恐慌になる事態を押しとどめたのです。FRBの信用創造、つまりマネーの増刷の副作用として、株価と不動産が値上がりしました。株価は2018年までに3.3倍に上がり、不動産はリーマン危機前の高値を超えています。
【FRBには、次の金融危機への、対策の手段がない】今度は、不動産からではなく、株価の下落が先導するリーマン危機の再来になっても、FRBは08年のリーマン危機のような4兆ドル(440兆円)のQE(量的緩和)という手段は取ることができません。FRBの通貨発行量を示すバランスシートは、$4.1兆(451兆円)と膨らんだまま来ているからです。
イエレン前FRB議長は、「再びの金融危機のときの対策がとれるように出口政策を進める」といっていました。しかし、FRBが買った国債を売って量的緩和マネーを減らす出口政策は、金利を高騰させ、米国債の価格を大きく下げるためとることができていません。実行できているのは、短期金利であるFF金利の、1回0.25%の上げだけです(合計8回)。これは「出口政策の15%程度」にしかならないでしょう。
【短期金利上昇にもかかわらず、10年債の長期金利が上がっていない理由】米国債は、金利が0%付近の円国債を日銀に、1年に40兆円売った日本の銀行が、「海外投資」として買い増し、米国の長期金利の上昇は抑えられています。
日本からの米国債の買いがなければ、3.15%の長期金利(10年債の金利:11月12日)は、4%以上に上がっているはずです(短期金利2.25%:長期金利4%)。
FRBは、通貨を増発する量的緩和は、停止しました。しかしゼロ金利を敷く日銀のマネーが、FRBの下請け機関になって、民間銀行経由で、金利のつく米国債を買うことにより、量的緩和の役割を果たしています。
「国債のゼロ金利を敷く日銀が、銀行のもつ国債を買って現金を供給→銀行は、国債を売って、増えた現金で金利のつくドル国債を買って、米国債をもつ米国の金融機関に現金を供給」。
これは、FRBが国債を買って、米国の金融機関に現金を供給していることと同じ量的緩和に該当します。米国は日米の金利差を利用して、量的緩和を継続しているのです。
匿名希望
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テーマは、中間選挙後では異例である株価下落が、米国の過剰流動性相場つまり株価バブルを終わらせる兆候になるのかどうかの、検討です。「2019年は、米国株場バブル崩壊から金融危機、つまり10年目のリーマン危機」になるだろうと見ている人も、出始めたからです。
【米国株の上昇と下落の、5つの要因】米国株のバブル的な上昇は、以下の3つの要因からきていました。
(1)10年で15兆ドル(165兆円)のトランプ減税の開始、(2)海外での企業利益を米国に還流させた場合35%の税がかかっていましたが、2018年の利益についてはリバトリ法(愛国法)によって0%にしたこと。過年度の利益についても、8%から15.5%に減税しています。これが、海外のドルの米国への大還流をもたらし、株買いになっています。(3)2017年は50兆円、18年は70兆円の自社株買い。
他方で、米国株の下落をもたらす要因は、以下の2つです。
(1)米国FRBの、18年8月の利上げ(0.25%)と、2019年の3回の利上げの予告。(2)中国輸入(50兆円)の50%対する2018年は10%、19年は25%の課税と、課税品目の全輸入への拡大予想。この関税は、中国と米国の2019年からのGDPを低下させます。
以上5つの要因が、今後、どう働くかということです。
【中間選挙後の株価】2年ごとの定期的な中間選挙のあとは、11月から12月の年末であり、過去は開票結果にかかわらず、米国株は上げていました。わが国の、時期が定まらない国政選挙の前にも、与党の関与により、株価が上がることが多かったことと似ています。与党は、株価を上げることで、政権への支持を増やす狙いをもつからです。「政治サイクル」と言われます。
NYダウは、10月29日には2万4429ドルであり、10月16日からは5.4%下げていました。10月30日からは上げに転じ、開票直前の11月8日には、2万6129ドルにまで8.9%上げていました。8日間で+8.9%は、急騰です。
その後の、11月12日(月)までの4日間、NYダウは2万5387ドルへと2.8%下げています。3%程度上がる方向の中の下げですから、「4日間で2.8%+3%=5.8%」の急落と見なければならない。
【2017年と18年は、自社株買いが、株価を上げてきた】2018年の、米国市場の大手銘柄の自社株買いは、合計で70兆円という巨額になっています。これが、2018年の米国株が上昇するときの原因です。前年の自社株買いは50兆円/年でした。当時も「大きすぎる自社株買い」と言われ、「2018年はさすがに減るだろう」と見られていましたが、逆でした。
【世界のGDPの伸びを低下させるトランプ関税】日・米・中そして世界の、2019年のGDPの伸びを、1ポイント(IMF予想)から2ポイント(当方の予想)は低下させるトランプ関税という新しい要素が加わっています。
輸出の減少つまりGDP伸びの低下は、企業の売上収益(粗利益)の減少です。伸びてきた売上収益が10%減れば企業の利益の黒字はなくなります。リーマン危機のあとに起こった、企業への波及がこれでした。企業利益が半分に減れば、PER(株価/次期予想純益)は2倍になって、株価には50%下落調整の売り圧力が加わります。
【リーマン危機】リーマン危機のときは、日米の株価時価総額が50%に減少しました。経済の中で、現在のようにマネー量が増えている過剰流動性相場では、GDPの期待成長率の2ポイント(%)の下げが、株価を半分か、それ以下に暴落させ、恐慌めいた経済になっていくのです。
【対策としてのFRBのQE】リーマン危機のあとの、米国の銀行資産での信用収縮は、世界の実体経済を恐慌に陥れる規模でした。FRBは3度のQE(長的緩和で約4兆ドル(440兆円)を信用創造してマネーを増発し、恐慌になる事態を押しとどめたのです。FRBの信用創造、つまりマネーの増刷の副作用として、株価と不動産が値上がりしました。株価は2018年までに3.3倍に上がり、不動産はリーマン危機前の高値を超えています。
【FRBには、次の金融危機への、対策の手段がない】今度は、不動産からではなく、株価の下落が先導するリーマン危機の再来になっても、FRBは08年のリーマン危機のような4兆ドル(440兆円)のQE(量的緩和)という手段は取ることができません。FRBの通貨発行量を示すバランスシートは、$4.1兆(451兆円)と膨らんだまま来ているからです。
イエレン前FRB議長は、「再びの金融危機のときの対策がとれるように出口政策を進める」といっていました。しかし、FRBが買った国債を売って量的緩和マネーを減らす出口政策は、金利を高騰させ、米国債の価格を大きく下げるためとることができていません。実行できているのは、短期金利であるFF金利の、1回0.25%の上げだけです(合計8回)。これは「出口政策の15%程度」にしかならないでしょう。
【短期金利上昇にもかかわらず、10年債の長期金利が上がっていない理由】米国債は、金利が0%付近の円国債を日銀に、1年に40兆円売った日本の銀行が、「海外投資」として買い増し、米国の長期金利の上昇は抑えられています。
日本からの米国債の買いがなければ、3.15%の長期金利(10年債の金利:11月12日)は、4%以上に上がっているはずです(短期金利2.25%:長期金利4%)。
FRBは、通貨を増発する量的緩和は、停止しました。しかしゼロ金利を敷く日銀のマネーが、FRBの下請け機関になって、民間銀行経由で、金利のつく米国債を買うことにより、量的緩和の役割を果たしています。
「国債のゼロ金利を敷く日銀が、銀行のもつ国債を買って現金を供給→銀行は、国債を売って、増えた現金で金利のつくドル国債を買って、米国債をもつ米国の金融機関に現金を供給」。
これは、FRBが国債を買って、米国の金融機関に現金を供給していることと同じ量的緩和に該当します。米国は日米の金利差を利用して、量的緩和を継続しているのです。
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