入賞発表/11月1日(木)~10日(土)

2007-11-14 10:17:45 | 入賞発表
■入賞発表

□高橋信之選

【最優秀】
★唐辛子吊るす向うに水平線/志賀たいじ
構図が単純であるだけにイメージは、鮮明で、読み手に訴えてくる強さがある。唐辛子の赤と海の青との対比にある美しさは、単純であって鮮明である。「向うに」というところに作者の存在が確と示された。(高橋信之)

【特選7句】
★青空が私を包み冬立てり/堀佐夜子
「青空が私を包み」という口語に続き、下五の「冬立てり」が文語なのだが、これもひとつの破調とし、その働きを理解したい。言葉のいい働きを見逃してはならないのだ。「青空が私を包み」という優しい口語ではじまって、「冬立てり」という文語で強い主情を表わした。「青空が私を包み」という優しい気持、「冬立てり」という強い主情。口語に続く文語は、作者の気持がそうさせたので、何の不自然も無い。私の好きな句。(高橋信之)

★法座果て家路清しき星月夜/黒谷光子
法座でいいお話を聞き、その家路のすがすがしい気持を、なお清々しくしてくれる星月夜である。(高橋正子)

★胡麻莚すぐに伸びくる山の影/澤井 渥
山の傍のわずかな庭なのだろう。収穫した胡麻を干しているが、すぐに山の影が伸びてきて、日陰になってしまう。自然と共にある慎ましい生活が窺える。(高橋正子)

★行くほどに銀杏色づく通学路/上島笑子
通学の道に銀杏が続いている。ずっと歩いてゆくほどに、銀杏が黄葉している印象が強まる。銀杏黄葉に染まる作者である。(高橋正子)

★竹林を透いて真直ぐに初冬の日/臼井愛代
静かな初冬の景、下五の「初冬の日」がよりよく効果を上げています。(篠木 睦)

★霧晴れて今朝の赤城のありありと/小口泰與
平明簡潔な句で赤城山のくっきりとした景が目に浮かぶ。「今朝の」が効いている。(國武光雄)

★塀高く枳殻の実が棘の中/竹内よよぎ
まるまると実った枳殻の実が棘の中にあると詠まれて、何か、守られているような優しさがあります。白秋の詩による日本歌曲も思い浮かべながら、秋の静かな情景を思いました。(臼井愛代)

□高橋正子選

【最優秀】
★野の日向ことに竜胆静かなる/甲斐ひさこ
野に日向がある。その見方が新鮮だ。そこに竜胆が咲いている。竜胆によってまことに静かな日向となっている。(高橋正子)

【特選7句】
★法座果て家路清しき星月夜/黒谷光子
法座でいいお話を聞き、その家路のすがすがしい気持を、なお清々しくしてくれる星月夜である。(高橋正子)

★唐辛子吊るす向うに水平線/志賀たいじ
構図が単純であるだけにイメージは、鮮明で、読み手に訴えてくる強さがある。唐辛子の赤と海の青との対比にある美しさは、単純であって鮮明である。「向うに」というところに作者の存在が確と示された。(高橋信之)

★胡麻莚すぐに伸びくる山の影/澤井 渥
山の傍のわずかな庭なのだろう。収穫した胡麻を干しているが、すぐに山の影が伸びてきて、日陰になってしまう。自然と共にある慎ましい生活が窺える。(高橋正子)

★行くほどに銀杏色づく通学路/上島笑子
通学の道に銀杏が続いている。ずっと歩いてゆくほどに、銀杏が黄葉している印象が強まる。銀杏黄葉に染まる作者である。(高橋正子)

★青空が私を包み冬立てり/堀佐夜子
「青空が私を包み」という口語に続き、下五の「冬立てり」が文語なのだが、これもひとつの破調とし、その働きを理解したい。言葉のいい働きを見逃してはならないのだ。「青空が私を包み」という優しい口語ではじまって、「冬立てり」という文語で強い主情を表わした。「青空が私を包み」という優しい気持、「冬立てり」という強い主情。口語に続く文語は、作者の気持がそうさせたので、何の不自然も無い。私の好きな句。(高橋信之)

★百段を登りて立冬の空へ寄る/古田けいじ
百段ほどもある石段を登ると、立冬の空へ自分がより近くなったということ。きっちりと、一歩一歩を踏み、冬が来た空へ近寄るのはうれしいことではないか。(高橋正子)

★ゆく秋の空が遠のく奥武蔵/尾 弦
奥武蔵が効いた。去りゆく秋の空を見上げると、奥武蔵の山々を下に置いて、空はますます高く、遠くなっていく。「遠のく」にゆく秋の空のさびしさが詠まれている。(高橋正子)

【入選Ⅰ/15句】
★花すすき風離れては光るなり/高瀬哲朗
風に倒れるように陰へ入るとき、陽に迎えられるごと起き上がって耀くとき。花すすきの自在な姿が、美しく浮かびます。(かわなますみ)

★冬うらら出船入船見て楽し/あみもとひろこ
よく晴れた日に、広い広い空と海を眺めたり出船入船を見たいです。(松本和代)

★捥いできて供える柿の日の温み/藤田洋子
日の温み」から、十分に色づいた艶やかな柿が見えてきます。また同時に、作者の心の暖かみも感じられます。(島津康弘)

★さくさくと紅葉踏みしめ子ら歩く/高橋秀之
目には、とりどりの美しい色、耳にはさくさくと楽しい音。地面に散り敷く紅葉を子らと踏み歩く楽しさが伝わってきます。(臼井愛代)

★水楢の太き影なる星月夜/小西 宏
数多の星が輝く空だからこそ、はっきりと浮かび上がる水楢の影。夜の大木の寝息が聞こえてきそうな、神秘的な句です。(安藤かじか)

★一人来て独り楽しむ菊花展/澁谷洋介
一人から独りへの表現の変化が、作者が菊と向き合ってしっかりと鑑賞され、秋のひとときを堪能された様子を伝えていると思います。(臼井愛代)

★姉に逢う水引の花テーブルに/松本和代
テーブルに飾られるものが水引の花という素朴な野の花であることが、親しい方を迎える時の、気取らない素直なうれしさを表わしているようです。(臼井愛代)

★秋の日のかけらが照らす山葵取り/安藤かじか
「秋の日のかけら」といううつくしい表現に、作者の、行く秋を惜しむ気持ちが込められているようです。(臼井愛代)

★どの木かと大きな落葉呼び止める/平田 弘
大きな落葉、傷のない落葉、色が目をひく落葉を見たとき、ふとどの木かと気になり、見上げるものです。それを「呼び止める」と表現されたことで、季節との対話、物語がここからはじまるような気持ちになります。(藤田荘二)

★海光る甍も光る冬隣/多田有花
上五に続き、中七で畳掛け、晩秋の好天気の景をうまく表現している。(宮本和美)

★小菊活けたちまちそこに静けさを/藤田裕子
小菊を活けるとそこに違った静かな空間が生まれる。ナイーブで日本女性らしい人柄がしのばれます。余韻が残る好きな句です。(竹内よよぎ)

★霜降の朝ほの白く澄みゆけり/笠間淳子
霜降の朝の、引き締まって凛とした空気感が伝わってきます。(臼井愛代)

★空にまだ明るさ残る花芒/おおにしひろし
日に日に暮れるのが早くなるこの時期の、暮れるのを惜しむかのような夕刻の空の明るさを背景に、花芒がやわらかな光を載せている優しい情景を思います。(臼井愛代)

★歌舞伎跳ねさらに大きく秋の川/かわなますみ
歌舞伎を楽しんだ高揚感や満足感を思いました。滔々と流れる静かな秋の川に、作者は、絶えることなく受け継がれる伝統のイメージを重ねられたりもしたのかもしれません。(臼井愛代)

★中心に炬燵を据えし日の夕餉/小川美和
気候は寒くなっていきますが、それを上回る家族団欒の暖かさが感じられます。(高橋秀之)

【入選Ⅱ/24句】
★真っ赤なる夕日すとんと冬に入る/池田多津子
冬の大きくて真っ赤な夕日があっと言う間にすとんと沈む様が好きです。(平田 弘)

★余呉よりの風来たりけり暮れの秋/まえかわをとじ
余呉は作者の故郷なのであろうか、とにかく何か思い入れのある地なのであろう。景を詠んでその背景に作者の抒情的なものを感ずる私の好きな句。「暮れの秋」がぴったりだと思いました。(尾崎 弦)

★冬陽ほこほこ蝶が地面を飛んでいて/吉田 晃
小春である。冬陽があり、蝶がいる。「ほこほこ」と長閑である。しかし作者は、冬日がかろうじて蝶を地面近くに支えている、という冬の現実をも見つめているのだろうか。(小西 宏)

★ざわざわと子ら朝顔の実を集め/飯島治蝶
今年咲いた朝顔が終わり又、来年も美しい花を咲かそうと種を取り集めている賑やかな子供達の様子が見えてきます。(小河原宏子)

★島々をかけて茜の鰯雲/島津康弘
入日とともに茜色に映える空一面に鰯雲が広がり、紺青の海には小島が点在して--。雄大で美しい光景が目に浮かぶようです。(河野啓一)
点々と見える小島、空は連なる鰯雲、なんと,すべてが茜で燃えて居るような景が見えてきました。(祝 恵子)

★秋の宵遠くに聞こゆ祭り笛/吉川豊子
秋の短い夕日が沈み、黄昏の中を遠くから祭囃子の笛の音が聞こえて来る・・。秋の宵はどこか寂寥感が漂いますが、遠くから聞こえてくる祭り笛は現実の音と作者の遠い日の追憶の心象風景とが重なって感じられ、叙情と郷愁を覚えます。(かつらたろう)

★立冬の清き水にて茶を点てる/井上治代
★白樺に冬の日柔らか赤城山/柳 あき
★冬めくにヨガして体暖めし/松本千恵子
★細き目の大仏爽か晶子の碑/おくだみのる(信之添削)
★大和路の秋や柳生の朴葉すし/河野啓一
★経師屋の塀に秋ぐみ紅く熟れ/大山 凉
★目つむりて桜紅葉の中にいる/宮本和美
★どんこ舟水面を照らす白秋忌/國武光雄
★予防接種うけて星無き月仰ぐ/祝 恵子
★枯葦の風に吹かれて丈揃う/篠木 睦
★冬立つや木立の影の薄々と/大給圭泉
★露わなる原爆ドーム秋天に/岩本康子
★病院へいつもの銀杏の散る朝に/藤田荘二
★石畳の先に祠や冬灯す/湯澤まさえ
★消防の鐘行き過ぎる冬近し/丸山草子
★校門の桜紅葉に閉ざしけり/かつらたろう
★炊き立ての飯に実紫蘇の醤油漬け/宮島千生
★野菊咲きとんぼを軽く休ませし/小河原宏子

好きな句(互選)/11月1日‐10日

2007-11-11 11:28:43 | 互選
互選高点句(11月1日‐10日)最終結果

50名の方々から50句の投句があり、互選締め切りまでに40名が互選に参加されました。以下は、<11月1日‐10日>の互選最終結果です。すべて1点として集計しています。同点は投句者名五十音順となっています。

【最高点/17点】
◎竹林を透いて真直ぐに初冬の日/臼井愛代

【次点/12点/同点2句】
○唐辛子吊るす向うに水平線/志賀たいじ
○島々をかけて茜の鰯雲/島津康弘

(集計/臼井愛代)

好きな句(互選)を下の<コメント>にお書き込みください。
①下記の<投句一覧/11月1日‐10日>の中から選んでください。
②好きな句(互選)を5句選んで、番号のみをお書きください。もっとも好きな句1句にコメントも付けてください。
③互選は、11月16日(金)まで許されますが、互選集計の対象は、11月13日(火)の午後6時までに書き込まれた<好きな句(互選)>に限ります。
④投句をされていない方も互選に積極的に参加してください。
ただし、投句されていないの選は集計の対象にはならなことをご了承ください。
※今回から青葉句会、たちばな句会、沙羅句会の方もご参加をいただき、ブログ句会との合同句会となりました。

■投句一覧50名1人1句/11月1日‐10日(高橋正子抽出)

01.白樺に冬の日柔らか赤城山/柳 あき
02.冬めくにヨガして体暖めし/松本千恵子
03.霜降の朝ほの白く澄みゆけり/笠間淳子
04.どの木かと大きな落葉呼び止める/平田 弘
05.細き目の大仏爽か晶子の碑/おくだみのる(信之添削)
06.大和路の秋や柳生の朴葉すし/河野啓一
07.法座果て家路清しき星月夜/黒谷光子
08.花すすき風離れては光るなり/高瀬哲朗
09.経師屋の塀に秋ぐみ紅く熟れ/大山 凉
10.唐辛子吊るす向うに水平線/志賀たいじ

11.余呉よりの風来たりけり暮れの秋/まえかわをとじ
12.胡麻莚すぐに伸びくる山の影/澤井 渥
13.目つむりて桜紅葉の中にいる/宮本和美
14.野の日向ことに竜胆静かなる/甲斐ひさこ
15.霧晴れて今朝の赤城のありありと/小口泰與
16.どんこ舟水面を照らす白秋忌/國武光雄
17.冬うらら出船入船見て楽し/あみもとひろこ
18.空にまだ明るさ残る花芒/おおにしひろし
19.小菊活けたちまちそこに静けさを/藤田裕子
20.捥いできて供える柿の日の温み/藤田洋子

21.青空が私を包み冬立てり/堀佐夜子
22.予防接種うけて星無き月仰ぐ/祝 恵子
23.海光る甍も光る冬隣/多田有花
24.真っ赤なる夕日すとんと冬に入る/池田多津子
25.枯葦の風に吹かれて丈揃う/篠木 睦
26.冬立つや木立の影の薄々と/大給圭泉
27.竹林を透いて真直ぐに初冬の日/臼井愛代
28.立冬の清き水にて茶を点てる/井上治代
29.露わなる原爆ドーム秋天に/岩本康子
30.さくさくと紅葉踏みしめ子ら歩く/高橋秀之

31.水楢の太き影なる星月夜/小西 宏
32.いくほどにいちょう色づく通学路/上島笑子
33.百段を登りて立冬の空へ寄る/古田けいじ
34.病院へいつもの銀杏の散る朝に/藤田荘二
35.冬陽ほこほこ蝶が地面を飛んでいて/吉田 晃
36.一人来て独り楽しむ菊花展/澁谷洋介
37.歌舞伎跳ねさらに大きく秋の川/かわなますみ
38.ゆく秋の空が遠のく奥武蔵/尾 弦
39.中心に炬燵を据えし日の夕餉/小川美和
40.ざわざわと子ら朝顔の実を集め/飯島治蝶

41.姉に逢う水引の花テーブルに/松本和代
42.島々をかけて茜の鰯雲/島津康弘
43.石畳の先に祠や冬灯す/湯澤まさえ
44.消防の鐘行き過ぎる冬近し/丸山草子
45.校門の桜紅葉に閉ざしけり/かつらたろう
46.炊き立ての飯に実紫蘇の醤油漬け/宮島千生
47.秋の日のかけらが照らす山葵取り/安藤かじか
48.塀高く枳殻の実が棘の中/竹内よよぎ
49.秋の宵遠くに聞こゆ祭り笛/吉川豊子
50.野菊咲きとんぼを軽く休ませし/小河原宏子


▼好きな句(互選)は、下記コメントの数字をクリックし、5句選んで、番号のみをお書きください。もっとも好きな句1句にコメントも付けてください。

入賞発表/10月21日(日)~日31(水)

2007-11-03 09:01:57 | 会員一覧
■入賞発表

□高橋信之選

【最優秀】
★桐一葉どこからか来て日に軽し/竹内よよぎ
「桐一葉」の在りようが鮮明で軽やかだ。樹を離れてからの「桐一葉」の命を見た。(高橋信之)

【特選/5句】
★波乗りを高く乗せ来る秋の波/臼井愛代
秋の海岸に寄せ来る高い波。その中に見えるサーファー。見る間に高いところから波のそこへ滑り降りる。そんな風景を想像させられた。 (古田けいじ)

★農小屋に耕運機有り鰯雲/堀佐夜子
「耕運機」と「鰯雲」との取り合わせがいい。生産的だからだ。生きていく力があって、人間のつながりも見えてくる。(高橋信之)

★障子貼る今日はそのこと念入りに/小川美和
「そのこと」に集中した。「今日」のことに集中した。日常のいい生活だ。(高橋信之)

★団栗を分け合うている子らの声/小河原宏子
大きな愛に包まれた子供たち、生き生きとした様子が浮かんで来ます。(碇 英一)

★訓練の号令月の夜に高く/安藤かじか
防災の「訓練」であろうか。「訓練の号令」が肩肘張ったものではない。夜空の「月」を見たからだ。月が見てくれたからだ。(高橋信之)


□高橋正子選

【最優秀】
★桐一葉どこからか来て日に軽し/竹内よよぎ
大きな桐の一葉。それがどこから来たのか、日に当たって、浮くように軽がるとしている。桐の一葉の乾いた質感、しずかな日当たりの様子が快く伝わってくる。(高橋正子)

【特選/5句】
★種用と実に書き下がる秋茄子/祝恵子
種を採るために残された茄子。もっとも充実した茄子が、「種用」としっかり書かれてぶら下がっている。種にされた茄子にユーモアがある。(高橋正子)

★波乗りを高く乗せ来る秋の波/臼井愛代
沖より秋の波が寄せてくる。その波は、波乗りを高く乗せて、伸びやかに滑らせる。さわやかな秋の波と波乗りがあざやかに詠まれた。(高橋正子)

★信州の落葉は青き高みより/古田けいじ
信州の空は、高い山々よりもなお高い。そのことを思うと、落葉は、木々の隙間に見える「青き高み」から舞い落ちる。信州の深く澄んだ空が落葉を通して詠まれた。(高橋正子)

★訓練の号令月の夜に高く/安藤かじか
訓練には、たとえば、消防訓練だろうか。昼間は仕事があるので、みんなが寄り集まって訓練ができるが、夜になる。訓練の夜は月夜であった。号令の声も月に高く響いて、てきぱきと訓練行われたことが知れる。「月の夜」と「号令」に詩情がある。(高橋正子)

★団栗を分け合うている子らの声/小河原宏子
団栗を拾い集めて子どもたちが分け合っている。そのことがかわいらしく、いきいきとしている。作者の眼差しがやさしい。(高橋正子)


【入選Ⅰ/10句】
★風吹けば風にまかせて竹の春/松本和代
親竹も若竹も秋には青々と生命力に溢れ、風の強弱に合わせてしなる。作者の余裕も感じさせる句です。(島津康弘)

★冠に秋日を受けて稚児過ぎる/上島笑子
美しい秋日に包まれ過ぎて行った稚児のかわいらしさがあたたかく伝わってきます。冠にが良いと思いました。(丸山草子)

★落鮎のせばりの漁の賑わいぬ/井上治代
落ち鮎漁は何種類もあるようですが、せばりは石を投げて追い込む漁とか。見物人も居て、賑わっているのでしょうね。(祝 恵子)

★教会の戸を開け放ち秋晴るる/かつらたろう
教会の戸が開け放たれ外は快晴、秋晴れの清々しさが良く表現されていると思います。(小河原宏子)

★灯さるゝショーウィンドウや冬近し/尾 弦
点灯されたショーウィンドウに感じる暖か味に、冬が近いことを実感されます。(臼井愛代)

★一眠りして一湾の月ながむ/篠木 睦
一眠りしたあとでも、まだ月は目の前の湾内を照らしている。月が親しく感じられた夜の感慨があります。(臼井愛代)

★十三夜想うに大仏月明かり/大給圭泉
月明かりに照らされた大仏の佇まいに十三夜の情緒を重ねられた作者の、しみじみと静かな心のうちを思います。(臼井愛代)

★樫の実の落ちる音して奥野院/湯澤まさえ
樫の実のひとつ落ちる音さえも聞き取れる、奥の院ならではの静けさ、秋の山の静けさが伝わってまいります。(臼井愛代)

★霜降や頭上ゆく鳥羽音たて/丸山草子
頭上を行く鳥が伝える羽音の確かさに、深まる秋の冷たく澄んだ空気感を思いました。(臼井愛代)

★鹿鳴けば炊さんの火の風に飛ぶ/島津康弘
自然の営みと人の営みが秋の気配の中で一体となっている豊かさを感じます。(臼井愛代)

【入選Ⅱ/18句】
★海光へなだるる島の蜜柑照り/藤田洋子
豊かに稔った蜜柑山、降り注ぐ瀬戸の陽光がまぶしく、海や風の色も感じます。(多田有花)

★快晴のきちきちばった高く跳べ/多田有花
「快晴の」がこの句を俳句にしていると思いました。「きちきちばった」も韻律軽やかに句を引き締めているように感じました。(尾崎 弦)

★霜降や億光年の澄みし星/飯島治蝶
遥か遠くの星が及ぼす神秘的な力を感じさせる美しい句です。(安藤かじか)

★地に零る木犀金の華やぎを/藤田裕子
金木犀の極小さい花は、咲き始めには妙なる香りで魅了し、花期が終われば残り香を放ちながら地面に零れ落ち、濃いオレンジ色で地面を埋め尽くし又、華やぎを添えて映えますね。いつも朝のバス停で眺めていましたので、晩秋を飾るのに相応しい華やぎを感じとても共感します。(かつらたろう)

★梨を食む雲にもいたる音を立て/藤田荘二
「雲にもいたる音を立て」とは意表をついていながら的確です。梨の食感、秋の空の澄明さを堪能させてくれる句です。(小西 宏)

★あたたかい夜明けは鵙も猛らずに/おおにしひろし
鵙のけたたましい鳴き声は耳につき、胸が刺さるような感じがします。あたたかく気持ちもゆるんだ夜は、そんな鵙も猛らずに聞こえます。鵙もくつろいでいるのかもしれません。(竹内よよぎ)

★からからと軽き糸瓜の種を採る/池田多津子
★車窓より高く仰ぎし十三夜/岩本康子
★秋晴れの海岸線をひた走る/高橋秀之
★湯に入れば桧の香り十三夜/小西宏
★朝日溶け白輝ける花芒/池田加代子
★土までの音を大きく朴落葉/碇英一(正子添削)
★真直ぐに一輪挿しの石蕗の花/澁谷洋介
★今宵より隣家独りに胡桃割る/かわなますみ
★草紅葉踏みて夕星遠嶺には/松原恵美子
★柱積み雪吊仕度の兼六園/宮島千生
★点てたての朝のコーヒー冬隣/吉川豊子
★コスモスの薄紅の丘青き空/友田修

好きな句(互選)/10月21日‐31日

2007-10-29 19:17:50 | 互選
互選高点句(10月21日‐31日)最終結果

36名の方々から36句の投句があり、互選締め切りまでに25名が互選に参加されました。以下は、<10月21日‐31日>の互選最終結果です。すべて1点として集計しています。

【最高点/11点】
◎海光へなだるる島の蜜柑照り/藤田洋子

【次点/10点】
○桐一葉どこからか来て日に軽し/竹内よよぎ

(集計/臼井愛代)

好きな句(互選)を下の<コメント>にお書き込みください。
①下記の<投句一覧/10月21日‐31日>の中から選んでください。
②好きな句(互選)を5句選んでください。もっとも好きな句1句にコメントも付けてください。
③互選は、11月7日(水)まで許されますが、互選集計の対象は、11月4日(日)の午後6時までに書き込まれた<好きな句(互選)>に限ります。
④投句をされていない方も互選に積極的に参加してください。
ただし、投句されていないの選は集計の対象にはならなことをご了承ください。

■投句一覧36名1人1句//10月21日‐31日(高橋正子抽出)

★あたたかい夜明けは鵙も猛らずに/おおにしひろし
★地に零る木犀金の華やぎを/藤田裕子
★海光へなだるる島の蜜柑照り/藤田洋子
★農小屋に耕運機有り鰯雲/堀佐夜子 
★種用と実に書き下がる秋茄子/祝恵子
★快晴のきちきちばった高く跳べ/多田有花
★からからと軽き糸瓜の種を採る/池田多津子
★波乗りを高く乗せ来る秋の波/臼井愛代
★一眠りして一湾の月ながむ/篠木睦
★十三夜想うに大仏月明かり/大給圭泉

★落鮎のせばりの漁の賑わいぬ/井上治代
★車窓より高く仰ぎし十三夜/岩本康子
★秋晴れの海岸線をひた走る/高橋秀之
★湯に入れば桧の香り十三夜/小西宏
★冠に秋日を受けて稚児過ぎる/上島笑子
★朝日溶け白輝ける花芒/池田加代子
★信州の落葉は青き高みより/古田けいじ
★土までの音を大きく朴落葉/碇英一(正子添削)
★梨を食む雲にもいたる音を立て/藤田荘二
★真直ぐに一輪挿しの石蕗の花/澁谷洋介

★今宵より隣家独りに胡桃割る/かわなますみ
★灯さるゝショーウィンドウや冬近し/尾弦
★障子貼る今日はそのこと念入りに/小川美和
★霜降や億光年の澄みし星/飯島治蝶
★草紅葉踏みて夕星遠嶺には/松原恵美子
★風吹けば風にまかせて竹の春/松本和代
★鹿鳴けば炊さんの火の風に飛ぶ/島津康弘
★樫の実の落ちる音して奥野院/湯澤まさえ
★霜降や頭上ゆく鳥羽音たて/丸山草子
★教会の戸を開け放ち秋晴るる/かつらたろう

★柱積み雪吊仕度の兼六園/宮島千生
★訓練の号令月の夜に高く/安藤かじか
★桐一葉どこからか来て日に軽し/竹内よよぎ
★点てたての朝のコーヒー冬隣/吉川豊子
★団栗を分け合うている子らの声/小河原宏子
★コスモスの薄紅の丘青き空/友田修

入賞発表/10月14日(日)~20日(土)

2007-10-24 21:01:28 | 入賞発表
■入賞発表

□高橋信之選

【最優秀】
★虫の音を歩みて川のざわめきへ/安藤かじか
静かな世界だ。その中での自然の確かな息遣いが聞こえてくる。虫や川の生きいきとした営みの声だ。自然の息遣いを聴いている作者の姿が見える。(高橋信之)

【特選/5句】
★芒また芒の風に吹かれおり/竹内よよぎ
芒が時間差をおいて「芒の風に」ゆれるさまが、私の気持ちにすっと入ってきました。心地よい秋の風と芒のしなやかさ、ひろい景色を感じました。(藤田荘二)

★山迫り空迫り来て初時雨/湯澤まさえ
山あいの突然降りだす時雨の状景がよく伝わり、初めての時雨に早くも寒々とした冬の兆しが漂うようです。 (藤田洋子)

★旅終えて目覚めし朝の鰯雲/多田有花
旅から帰宅した翌朝に見た鰯雲に、作者は、また少し秋が深まったことを感じ、また、いつもの空がある日常に、旅を終えた感慨を覚えられたのかもしれません。(臼井愛代)

★くっきりとビルにビル影秋夕陽/岩本康子
ビルがビルに映すあきらかな影が、街の中で感じられる秋の澄んだ爽やかさを伝えているようです。(臼井愛代)

★無骨なる指触れさせて真弓の実/宮島千生
かわいらしい真弓の実に、それとは対照的な「無骨なる指」が触れる様子を思い、植物への優しい接触が印象に残ります。(臼井愛代)

□高橋正子選

【最優秀】
★芒また芒の風に吹かれおり/竹内よよぎ
芒が吹かれる。その芒は、芒を吹いて来た風。一面の芒原を芒の穂を靡かせて、風がわたる様子が、芒の穂のようなやわらかさで詠まれた。(高橋正子)

【特選/5句】
★草の絮限りなく飛び吾が身にも/おおにしひろし
草の穂を離れ、しきりに絮が飛んで、作者の身を包んで飛び過ぎていく。さらりとした秋風を感じることができる。(高橋正子)

★軽きもの手に転がしてふうせんかずら/祝恵子
ふうせんかずらは、何かの用に立つわけではないが、ふうせんのように空気を詰めた黄緑の実は、手にもてあそびたくなる。「軽きもの」なので、さりげなく転がしてみたりもする。(高橋正子)

★月掲げ銀杏黄葉の大き影/丸山草子
銀杏黄葉の後ろには、月があがり、月の光が、大きな銀杏の影を生んでいる。銀杏黄葉も聳える月夜のイメージが澄んで伝えられている。(高橋正子)

★稲架解かれ川音高く聞こえくる/池田多津子
稲架が解かれると、さえぎるものがなくなり、野川の音が高く響いてくる。稲架が解かれる晩秋の景色に、川音が加わり、立体的な構成の句となった。(高橋正子)

★あきかぜに槐からから実を鳴らす/かわなますみ
槐は、夏に白いまめ科の花をさかせるが、秋になると、豆のような実をつける。風が吹くと、それらが触れ合ってからから鳴る。晩秋のものさびしい音であるが、「からから」と軽い音なので、明るいほうへ導かれる。(高橋正子)

【入選Ⅰ/10句】
★三日月へ祭太鼓の勇み音/藤田裕子
月と祭、つい先日見た光景です。はっぴ姿の若者を思います。(祝 恵子)

★秋冷に聖書日課のペ-ジ繰る/小川美和
信仰のある生活の清らかさを感じました。「秋冷」が生きていると思います。(多田有花)

★コスモスの花咲くほどに吹き撓う/藤田洋子
コスモスは美しく弱弱しく見えますが風に吹かれて撓っているのを見るとなかなか丈夫なんだと思いますね。(堀佐夜子)

★蜆蝶秋のひかりを惜しむかに/堀佐夜子
美しい色の蜆蝶が秋の光の中でよりきれいに見えます。蝶を愛おしむ作者がいます。(丸山草子)

★人参の間引き楽しや鵙日和/井上治代
秋の清々しい空気を吸っての農作業、花が揺れ、鳥が鳴いて、楽しさが伝わってきます。(松原恵美子)

★道連れは眩しき夕日鳥渡る/高橋秀之
真っ赤な夕日の中を歩いている。その空に北国から鳥が渡ってきた。自然の偉大な移ろいに秋を感じている。(おおにしひろし)

★すっきりと目覚めし朝の鵙高音/篠木睦
鵙は朝から鋭く鳴く鳥です。すっきりと気持ちよく目覚めた作者にはことさらくっきりと聞こえたことでしょう。今日一日何かいいことがありそうに思える朝です。(古田けいじ)

★にぎわしく鳥の声して実南天/大給圭泉
南天の実をついばんでいるのでしょうか。喜んでいる鳥の声が聞こえてくるような気がします。(松本和代)

★狩り終えて山静かなるぶどう棚/小西 宏
和やかで楽しげな人の声や気配を漂わせていたぶどう狩りが終わったあとの、山の静かなやすらぎを感じます。(臼井愛代)

★秋晴れに神輿の通る音が来る/臼井愛代
表現が素直だ。その素直さがあって、「秋晴れ」の季節が強く読み手に訴えてくる。「秋晴れ」にあって、作り手の気分が爽やかに伝わってくる。(高橋信之)

【入選Ⅱ/14句】
★秋蝶の生け垣一気に越えていき/上島笑子
秋の蝶は華やかさはなく、どこか哀れ深いのですが、その蝶が一気に最後の力を振り絞って生垣を越えていった。その哀れさが良いと思います。特に「い」音、三音が素敵だと思います。(小口泰與)

★朝日溶け白輝ける花芒/池田加代子
朝日を受けて花芒がきらきら輝いてく時が刻々と見えるようです。(大給圭泉)

★落ちる日に影を落として鶴来る/藤田荘二
美しい日本画を観るようです。遥かな空を日輪とともに渡ってきた鶴に、清められる心地がいたします。(かわなますみ)

★青空の地球は丸し鱗雲/吉田晃
広い水平線をずっと見ていると本当に地球は丸いんだなあと、私も思ったことがあります。スケールの大きい句だと思います。(小河原宏子)

★満月の夜よ自転車ふたり乗り/野仁志水音
本当は自転車二人乗りはいけないのですが、それを注意することも憚られる二人の仲のよさが感じられます。(高橋秀之)

★青々とインク滲ませ秋更くる/尾弦
旧知へのお手紙でしょうか、あるいはひとりだけの心覚えでしょうか。紙ににじむインクの青に、深まる秋の余情を感ぜさせられます。(小西 宏)

★信濃行く野菊の紺色鮮やかに/古田けいじ
★地に枝を桜紅葉の垂れかな/渋谷洋介
★絵を描く子まっかな石榴ザックリと/飯島治蝶
★分か去れのどちらへ行くも落葉道/松原恵美子
★朝露の我が家埋もるる椎の森/島津康弘
★ふたば菜に高低ありぬ鉢の中/かつらたろう
★咲き初む金木犀に暮色立つ/吉川豊子
★黄菊咲きぱっと華やぐ垣根かな/小河原宏子