■入賞発表
□高橋信之選
【最優秀】
★唐辛子吊るす向うに水平線/志賀たいじ
構図が単純であるだけにイメージは、鮮明で、読み手に訴えてくる強さがある。唐辛子の赤と海の青との対比にある美しさは、単純であって鮮明である。「向うに」というところに作者の存在が確と示された。(高橋信之)
【特選7句】
★青空が私を包み冬立てり/堀佐夜子
「青空が私を包み」という口語に続き、下五の「冬立てり」が文語なのだが、これもひとつの破調とし、その働きを理解したい。言葉のいい働きを見逃してはならないのだ。「青空が私を包み」という優しい口語ではじまって、「冬立てり」という文語で強い主情を表わした。「青空が私を包み」という優しい気持、「冬立てり」という強い主情。口語に続く文語は、作者の気持がそうさせたので、何の不自然も無い。私の好きな句。(高橋信之)
★法座果て家路清しき星月夜/黒谷光子
法座でいいお話を聞き、その家路のすがすがしい気持を、なお清々しくしてくれる星月夜である。(高橋正子)
★胡麻莚すぐに伸びくる山の影/澤井 渥
山の傍のわずかな庭なのだろう。収穫した胡麻を干しているが、すぐに山の影が伸びてきて、日陰になってしまう。自然と共にある慎ましい生活が窺える。(高橋正子)
★行くほどに銀杏色づく通学路/上島笑子
通学の道に銀杏が続いている。ずっと歩いてゆくほどに、銀杏が黄葉している印象が強まる。銀杏黄葉に染まる作者である。(高橋正子)
★竹林を透いて真直ぐに初冬の日/臼井愛代
静かな初冬の景、下五の「初冬の日」がよりよく効果を上げています。(篠木 睦)
★霧晴れて今朝の赤城のありありと/小口泰與
平明簡潔な句で赤城山のくっきりとした景が目に浮かぶ。「今朝の」が効いている。(國武光雄)
★塀高く枳殻の実が棘の中/竹内よよぎ
まるまると実った枳殻の実が棘の中にあると詠まれて、何か、守られているような優しさがあります。白秋の詩による日本歌曲も思い浮かべながら、秋の静かな情景を思いました。(臼井愛代)
□高橋正子選
【最優秀】
★野の日向ことに竜胆静かなる/甲斐ひさこ
野に日向がある。その見方が新鮮だ。そこに竜胆が咲いている。竜胆によってまことに静かな日向となっている。(高橋正子)
【特選7句】
★法座果て家路清しき星月夜/黒谷光子
法座でいいお話を聞き、その家路のすがすがしい気持を、なお清々しくしてくれる星月夜である。(高橋正子)
★唐辛子吊るす向うに水平線/志賀たいじ
構図が単純であるだけにイメージは、鮮明で、読み手に訴えてくる強さがある。唐辛子の赤と海の青との対比にある美しさは、単純であって鮮明である。「向うに」というところに作者の存在が確と示された。(高橋信之)
★胡麻莚すぐに伸びくる山の影/澤井 渥
山の傍のわずかな庭なのだろう。収穫した胡麻を干しているが、すぐに山の影が伸びてきて、日陰になってしまう。自然と共にある慎ましい生活が窺える。(高橋正子)
★行くほどに銀杏色づく通学路/上島笑子
通学の道に銀杏が続いている。ずっと歩いてゆくほどに、銀杏が黄葉している印象が強まる。銀杏黄葉に染まる作者である。(高橋正子)
★青空が私を包み冬立てり/堀佐夜子
「青空が私を包み」という口語に続き、下五の「冬立てり」が文語なのだが、これもひとつの破調とし、その働きを理解したい。言葉のいい働きを見逃してはならないのだ。「青空が私を包み」という優しい口語ではじまって、「冬立てり」という文語で強い主情を表わした。「青空が私を包み」という優しい気持、「冬立てり」という強い主情。口語に続く文語は、作者の気持がそうさせたので、何の不自然も無い。私の好きな句。(高橋信之)
★百段を登りて立冬の空へ寄る/古田けいじ
百段ほどもある石段を登ると、立冬の空へ自分がより近くなったということ。きっちりと、一歩一歩を踏み、冬が来た空へ近寄るのはうれしいことではないか。(高橋正子)
★ゆく秋の空が遠のく奥武蔵/尾 弦
奥武蔵が効いた。去りゆく秋の空を見上げると、奥武蔵の山々を下に置いて、空はますます高く、遠くなっていく。「遠のく」にゆく秋の空のさびしさが詠まれている。(高橋正子)
【入選Ⅰ/15句】
★花すすき風離れては光るなり/高瀬哲朗
風に倒れるように陰へ入るとき、陽に迎えられるごと起き上がって耀くとき。花すすきの自在な姿が、美しく浮かびます。(かわなますみ)
★冬うらら出船入船見て楽し/あみもとひろこ
よく晴れた日に、広い広い空と海を眺めたり出船入船を見たいです。(松本和代)
★捥いできて供える柿の日の温み/藤田洋子
日の温み」から、十分に色づいた艶やかな柿が見えてきます。また同時に、作者の心の暖かみも感じられます。(島津康弘)
★さくさくと紅葉踏みしめ子ら歩く/高橋秀之
目には、とりどりの美しい色、耳にはさくさくと楽しい音。地面に散り敷く紅葉を子らと踏み歩く楽しさが伝わってきます。(臼井愛代)
★水楢の太き影なる星月夜/小西 宏
数多の星が輝く空だからこそ、はっきりと浮かび上がる水楢の影。夜の大木の寝息が聞こえてきそうな、神秘的な句です。(安藤かじか)
★一人来て独り楽しむ菊花展/澁谷洋介
一人から独りへの表現の変化が、作者が菊と向き合ってしっかりと鑑賞され、秋のひとときを堪能された様子を伝えていると思います。(臼井愛代)
★姉に逢う水引の花テーブルに/松本和代
テーブルに飾られるものが水引の花という素朴な野の花であることが、親しい方を迎える時の、気取らない素直なうれしさを表わしているようです。(臼井愛代)
★秋の日のかけらが照らす山葵取り/安藤かじか
「秋の日のかけら」といううつくしい表現に、作者の、行く秋を惜しむ気持ちが込められているようです。(臼井愛代)
★どの木かと大きな落葉呼び止める/平田 弘
大きな落葉、傷のない落葉、色が目をひく落葉を見たとき、ふとどの木かと気になり、見上げるものです。それを「呼び止める」と表現されたことで、季節との対話、物語がここからはじまるような気持ちになります。(藤田荘二)
★海光る甍も光る冬隣/多田有花
上五に続き、中七で畳掛け、晩秋の好天気の景をうまく表現している。(宮本和美)
★小菊活けたちまちそこに静けさを/藤田裕子
小菊を活けるとそこに違った静かな空間が生まれる。ナイーブで日本女性らしい人柄がしのばれます。余韻が残る好きな句です。(竹内よよぎ)
★霜降の朝ほの白く澄みゆけり/笠間淳子
霜降の朝の、引き締まって凛とした空気感が伝わってきます。(臼井愛代)
★空にまだ明るさ残る花芒/おおにしひろし
日に日に暮れるのが早くなるこの時期の、暮れるのを惜しむかのような夕刻の空の明るさを背景に、花芒がやわらかな光を載せている優しい情景を思います。(臼井愛代)
★歌舞伎跳ねさらに大きく秋の川/かわなますみ
歌舞伎を楽しんだ高揚感や満足感を思いました。滔々と流れる静かな秋の川に、作者は、絶えることなく受け継がれる伝統のイメージを重ねられたりもしたのかもしれません。(臼井愛代)
★中心に炬燵を据えし日の夕餉/小川美和
気候は寒くなっていきますが、それを上回る家族団欒の暖かさが感じられます。(高橋秀之)
【入選Ⅱ/24句】
★真っ赤なる夕日すとんと冬に入る/池田多津子
冬の大きくて真っ赤な夕日があっと言う間にすとんと沈む様が好きです。(平田 弘)
★余呉よりの風来たりけり暮れの秋/まえかわをとじ
余呉は作者の故郷なのであろうか、とにかく何か思い入れのある地なのであろう。景を詠んでその背景に作者の抒情的なものを感ずる私の好きな句。「暮れの秋」がぴったりだと思いました。(尾崎 弦)
★冬陽ほこほこ蝶が地面を飛んでいて/吉田 晃
小春である。冬陽があり、蝶がいる。「ほこほこ」と長閑である。しかし作者は、冬日がかろうじて蝶を地面近くに支えている、という冬の現実をも見つめているのだろうか。(小西 宏)
★ざわざわと子ら朝顔の実を集め/飯島治蝶
今年咲いた朝顔が終わり又、来年も美しい花を咲かそうと種を取り集めている賑やかな子供達の様子が見えてきます。(小河原宏子)
★島々をかけて茜の鰯雲/島津康弘
入日とともに茜色に映える空一面に鰯雲が広がり、紺青の海には小島が点在して--。雄大で美しい光景が目に浮かぶようです。(河野啓一)
点々と見える小島、空は連なる鰯雲、なんと,すべてが茜で燃えて居るような景が見えてきました。(祝 恵子)
★秋の宵遠くに聞こゆ祭り笛/吉川豊子
秋の短い夕日が沈み、黄昏の中を遠くから祭囃子の笛の音が聞こえて来る・・。秋の宵はどこか寂寥感が漂いますが、遠くから聞こえてくる祭り笛は現実の音と作者の遠い日の追憶の心象風景とが重なって感じられ、叙情と郷愁を覚えます。(かつらたろう)
★立冬の清き水にて茶を点てる/井上治代
★白樺に冬の日柔らか赤城山/柳 あき
★冬めくにヨガして体暖めし/松本千恵子
★細き目の大仏爽か晶子の碑/おくだみのる(信之添削)
★大和路の秋や柳生の朴葉すし/河野啓一
★経師屋の塀に秋ぐみ紅く熟れ/大山 凉
★目つむりて桜紅葉の中にいる/宮本和美
★どんこ舟水面を照らす白秋忌/國武光雄
★予防接種うけて星無き月仰ぐ/祝 恵子
★枯葦の風に吹かれて丈揃う/篠木 睦
★冬立つや木立の影の薄々と/大給圭泉
★露わなる原爆ドーム秋天に/岩本康子
★病院へいつもの銀杏の散る朝に/藤田荘二
★石畳の先に祠や冬灯す/湯澤まさえ
★消防の鐘行き過ぎる冬近し/丸山草子
★校門の桜紅葉に閉ざしけり/かつらたろう
★炊き立ての飯に実紫蘇の醤油漬け/宮島千生
★野菊咲きとんぼを軽く休ませし/小河原宏子
□高橋信之選
【最優秀】
★唐辛子吊るす向うに水平線/志賀たいじ
構図が単純であるだけにイメージは、鮮明で、読み手に訴えてくる強さがある。唐辛子の赤と海の青との対比にある美しさは、単純であって鮮明である。「向うに」というところに作者の存在が確と示された。(高橋信之)
【特選7句】
★青空が私を包み冬立てり/堀佐夜子
「青空が私を包み」という口語に続き、下五の「冬立てり」が文語なのだが、これもひとつの破調とし、その働きを理解したい。言葉のいい働きを見逃してはならないのだ。「青空が私を包み」という優しい口語ではじまって、「冬立てり」という文語で強い主情を表わした。「青空が私を包み」という優しい気持、「冬立てり」という強い主情。口語に続く文語は、作者の気持がそうさせたので、何の不自然も無い。私の好きな句。(高橋信之)
★法座果て家路清しき星月夜/黒谷光子
法座でいいお話を聞き、その家路のすがすがしい気持を、なお清々しくしてくれる星月夜である。(高橋正子)
★胡麻莚すぐに伸びくる山の影/澤井 渥
山の傍のわずかな庭なのだろう。収穫した胡麻を干しているが、すぐに山の影が伸びてきて、日陰になってしまう。自然と共にある慎ましい生活が窺える。(高橋正子)
★行くほどに銀杏色づく通学路/上島笑子
通学の道に銀杏が続いている。ずっと歩いてゆくほどに、銀杏が黄葉している印象が強まる。銀杏黄葉に染まる作者である。(高橋正子)
★竹林を透いて真直ぐに初冬の日/臼井愛代
静かな初冬の景、下五の「初冬の日」がよりよく効果を上げています。(篠木 睦)
★霧晴れて今朝の赤城のありありと/小口泰與
平明簡潔な句で赤城山のくっきりとした景が目に浮かぶ。「今朝の」が効いている。(國武光雄)
★塀高く枳殻の実が棘の中/竹内よよぎ
まるまると実った枳殻の実が棘の中にあると詠まれて、何か、守られているような優しさがあります。白秋の詩による日本歌曲も思い浮かべながら、秋の静かな情景を思いました。(臼井愛代)
□高橋正子選
【最優秀】
★野の日向ことに竜胆静かなる/甲斐ひさこ
野に日向がある。その見方が新鮮だ。そこに竜胆が咲いている。竜胆によってまことに静かな日向となっている。(高橋正子)
【特選7句】
★法座果て家路清しき星月夜/黒谷光子
法座でいいお話を聞き、その家路のすがすがしい気持を、なお清々しくしてくれる星月夜である。(高橋正子)
★唐辛子吊るす向うに水平線/志賀たいじ
構図が単純であるだけにイメージは、鮮明で、読み手に訴えてくる強さがある。唐辛子の赤と海の青との対比にある美しさは、単純であって鮮明である。「向うに」というところに作者の存在が確と示された。(高橋信之)
★胡麻莚すぐに伸びくる山の影/澤井 渥
山の傍のわずかな庭なのだろう。収穫した胡麻を干しているが、すぐに山の影が伸びてきて、日陰になってしまう。自然と共にある慎ましい生活が窺える。(高橋正子)
★行くほどに銀杏色づく通学路/上島笑子
通学の道に銀杏が続いている。ずっと歩いてゆくほどに、銀杏が黄葉している印象が強まる。銀杏黄葉に染まる作者である。(高橋正子)
★青空が私を包み冬立てり/堀佐夜子
「青空が私を包み」という口語に続き、下五の「冬立てり」が文語なのだが、これもひとつの破調とし、その働きを理解したい。言葉のいい働きを見逃してはならないのだ。「青空が私を包み」という優しい口語ではじまって、「冬立てり」という文語で強い主情を表わした。「青空が私を包み」という優しい気持、「冬立てり」という強い主情。口語に続く文語は、作者の気持がそうさせたので、何の不自然も無い。私の好きな句。(高橋信之)
★百段を登りて立冬の空へ寄る/古田けいじ
百段ほどもある石段を登ると、立冬の空へ自分がより近くなったということ。きっちりと、一歩一歩を踏み、冬が来た空へ近寄るのはうれしいことではないか。(高橋正子)
★ゆく秋の空が遠のく奥武蔵/尾 弦
奥武蔵が効いた。去りゆく秋の空を見上げると、奥武蔵の山々を下に置いて、空はますます高く、遠くなっていく。「遠のく」にゆく秋の空のさびしさが詠まれている。(高橋正子)
【入選Ⅰ/15句】
★花すすき風離れては光るなり/高瀬哲朗
風に倒れるように陰へ入るとき、陽に迎えられるごと起き上がって耀くとき。花すすきの自在な姿が、美しく浮かびます。(かわなますみ)
★冬うらら出船入船見て楽し/あみもとひろこ
よく晴れた日に、広い広い空と海を眺めたり出船入船を見たいです。(松本和代)
★捥いできて供える柿の日の温み/藤田洋子
日の温み」から、十分に色づいた艶やかな柿が見えてきます。また同時に、作者の心の暖かみも感じられます。(島津康弘)
★さくさくと紅葉踏みしめ子ら歩く/高橋秀之
目には、とりどりの美しい色、耳にはさくさくと楽しい音。地面に散り敷く紅葉を子らと踏み歩く楽しさが伝わってきます。(臼井愛代)
★水楢の太き影なる星月夜/小西 宏
数多の星が輝く空だからこそ、はっきりと浮かび上がる水楢の影。夜の大木の寝息が聞こえてきそうな、神秘的な句です。(安藤かじか)
★一人来て独り楽しむ菊花展/澁谷洋介
一人から独りへの表現の変化が、作者が菊と向き合ってしっかりと鑑賞され、秋のひとときを堪能された様子を伝えていると思います。(臼井愛代)
★姉に逢う水引の花テーブルに/松本和代
テーブルに飾られるものが水引の花という素朴な野の花であることが、親しい方を迎える時の、気取らない素直なうれしさを表わしているようです。(臼井愛代)
★秋の日のかけらが照らす山葵取り/安藤かじか
「秋の日のかけら」といううつくしい表現に、作者の、行く秋を惜しむ気持ちが込められているようです。(臼井愛代)
★どの木かと大きな落葉呼び止める/平田 弘
大きな落葉、傷のない落葉、色が目をひく落葉を見たとき、ふとどの木かと気になり、見上げるものです。それを「呼び止める」と表現されたことで、季節との対話、物語がここからはじまるような気持ちになります。(藤田荘二)
★海光る甍も光る冬隣/多田有花
上五に続き、中七で畳掛け、晩秋の好天気の景をうまく表現している。(宮本和美)
★小菊活けたちまちそこに静けさを/藤田裕子
小菊を活けるとそこに違った静かな空間が生まれる。ナイーブで日本女性らしい人柄がしのばれます。余韻が残る好きな句です。(竹内よよぎ)
★霜降の朝ほの白く澄みゆけり/笠間淳子
霜降の朝の、引き締まって凛とした空気感が伝わってきます。(臼井愛代)
★空にまだ明るさ残る花芒/おおにしひろし
日に日に暮れるのが早くなるこの時期の、暮れるのを惜しむかのような夕刻の空の明るさを背景に、花芒がやわらかな光を載せている優しい情景を思います。(臼井愛代)
★歌舞伎跳ねさらに大きく秋の川/かわなますみ
歌舞伎を楽しんだ高揚感や満足感を思いました。滔々と流れる静かな秋の川に、作者は、絶えることなく受け継がれる伝統のイメージを重ねられたりもしたのかもしれません。(臼井愛代)
★中心に炬燵を据えし日の夕餉/小川美和
気候は寒くなっていきますが、それを上回る家族団欒の暖かさが感じられます。(高橋秀之)
【入選Ⅱ/24句】
★真っ赤なる夕日すとんと冬に入る/池田多津子
冬の大きくて真っ赤な夕日があっと言う間にすとんと沈む様が好きです。(平田 弘)
★余呉よりの風来たりけり暮れの秋/まえかわをとじ
余呉は作者の故郷なのであろうか、とにかく何か思い入れのある地なのであろう。景を詠んでその背景に作者の抒情的なものを感ずる私の好きな句。「暮れの秋」がぴったりだと思いました。(尾崎 弦)
★冬陽ほこほこ蝶が地面を飛んでいて/吉田 晃
小春である。冬陽があり、蝶がいる。「ほこほこ」と長閑である。しかし作者は、冬日がかろうじて蝶を地面近くに支えている、という冬の現実をも見つめているのだろうか。(小西 宏)
★ざわざわと子ら朝顔の実を集め/飯島治蝶
今年咲いた朝顔が終わり又、来年も美しい花を咲かそうと種を取り集めている賑やかな子供達の様子が見えてきます。(小河原宏子)
★島々をかけて茜の鰯雲/島津康弘
入日とともに茜色に映える空一面に鰯雲が広がり、紺青の海には小島が点在して--。雄大で美しい光景が目に浮かぶようです。(河野啓一)
点々と見える小島、空は連なる鰯雲、なんと,すべてが茜で燃えて居るような景が見えてきました。(祝 恵子)
★秋の宵遠くに聞こゆ祭り笛/吉川豊子
秋の短い夕日が沈み、黄昏の中を遠くから祭囃子の笛の音が聞こえて来る・・。秋の宵はどこか寂寥感が漂いますが、遠くから聞こえてくる祭り笛は現実の音と作者の遠い日の追憶の心象風景とが重なって感じられ、叙情と郷愁を覚えます。(かつらたろう)
★立冬の清き水にて茶を点てる/井上治代
★白樺に冬の日柔らか赤城山/柳 あき
★冬めくにヨガして体暖めし/松本千恵子
★細き目の大仏爽か晶子の碑/おくだみのる(信之添削)
★大和路の秋や柳生の朴葉すし/河野啓一
★経師屋の塀に秋ぐみ紅く熟れ/大山 凉
★目つむりて桜紅葉の中にいる/宮本和美
★どんこ舟水面を照らす白秋忌/國武光雄
★予防接種うけて星無き月仰ぐ/祝 恵子
★枯葦の風に吹かれて丈揃う/篠木 睦
★冬立つや木立の影の薄々と/大給圭泉
★露わなる原爆ドーム秋天に/岩本康子
★病院へいつもの銀杏の散る朝に/藤田荘二
★石畳の先に祠や冬灯す/湯澤まさえ
★消防の鐘行き過ぎる冬近し/丸山草子
★校門の桜紅葉に閉ざしけり/かつらたろう
★炊き立ての飯に実紫蘇の醤油漬け/宮島千生
★野菊咲きとんぼを軽く休ませし/小河原宏子