田中芳樹『蘭陵王』(文春文庫)を読む。
以前にハードカバーで読んでいたものが文庫化されたので購入。
カバーイラストは仮面をつけた蘭陵王であってほしかった…
中国は南北朝の時代。
西の北周、北の北斉、南の陳の三国がしのぎを削っていました。
蘭陵王・高長恭は北斉の皇族で美貌の名将として知られた人物。
あまりの美貌ゆえに仮面をつけて戦場に臨んだといわれています。
暴君が支配する朝廷で粛清の危機に見舞われながらも、
次々と武功をあげる蘭陵王。
あまりにも有能であるがゆえに悲劇的な最期を迎えるのですが、
自壊へと向かう北斉にあって文字通り孤軍奮闘する蘭陵王の姿が
爽やか過ぎて痛々しくなるくらいです。
いっそのこと蘭陵王が帝位を奪えばいいのに…と思いますが、
北斉の皇位継承は皇帝殺害のオンパレードのような状態。
皇帝を殺して帝位に就くと疑心暗鬼にかられて皇族や重臣を粛正する。
その繰り返しで北斉は有為の人材を次々と消し去っていきます。
余りにも鬱々とした展開になるのを避けるためか、
ファンタジーっぽいヒロインとして徐月琴を登場させています。
仙女の修業を積んで浮世離れした言動の少女。
田中作品にありがちな設定です。
余計なキャラクターを入れてしまった印象は否めませんが。
まあ、全体として面白く読むことはできました。
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