Tobacco Control Reference

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タバコ産業に意見を提出

2006-05-12 13:56:06 | 公益通報者保護法に基づく公益通報
公衆衛生ネットワーク2003年3月27日のニュースより

Date: Thu, 27 Mar 2003 19:30:56 +0900
From: "切明義孝"
Subject: タバコ産業(BAT)に意見を提出しました。


世界第2位のタバコ会社ブリティッシュ・アメリカン・タバコから社長名で「ダイアログ・セッション(対話セッション)」の案内があり、タバコ問題について、BATジャパンに対し、忌憚の無いご意見を聞かせてほしいとのご要望がございましたので本日のセッションに参加し、小生の忌憚の無い意見を提出しました。

BMJ誌2002年12月14日号の記事によると“受動喫煙の害を隠すプロジェクト”の黒幕がBAT社のProctorさんであったため、正直なところ、セッションに参加すべきかどうか迷ったのですが、“タバコ産業”に意見する絶好の機会でもあるため、BMJ誌のコピーを持って参加いたしました。

ダイアログ・セッションは利害関係者の意見を聴いて理解に努めることを目的としているそうでして、話し合いの日程は以下のとおりで、多彩なバックグラウンドの方々が参加するようです。

3月18日自民党
3月25日業界団体、企業
3月26日BATジャパン社員
3月27日(午前)非営利団体、公衆衛生団体、教育関連機関、国際機関
3月27日(午後1st)財務省、(午後2nd)東京都港区

私が参加した3月27日の午前のセッションの参加者は、下記の9名でした。
 禁煙教育をすすめる会(中野暢子さん)
 公衆衛生ネットワーク(切明義孝)
 全国高等学校PTA連合会
 青少年喫煙等健康問題研究会
 全国禁煙・分煙推進協議会(宮崎恭一さん)
 全国消費者団体連絡会
 たばこと健康問題NGO協議会
 タバコ問題首都圏協議会(渡辺文学さん)
 日本消費者連盟

会場のホテルニューオータニでは、10時から12時過ぎまで活発な意見交換が行われ、私はBMJのコピーを片手に、「医師(御用学者)に資金を供与して誤った医学情報を流すことは企業の信用を傷つけ、社会的にもタバコ産業の存在が容認されなくなる」という率直な意見を述べてきました。

渡辺文学さんからも同様の御用学者を批判する意見が出されまして、BMJの記事を何度も話題にしたのですが、我々の予想に反し、BAT社はこの問題を否定しませんでした。この他にも様々な問題が提出されましたが、ステークホルダーの意見に対するBATの回答は次回のセッションで報告されるそうです。

今回のセッションで出された全ての意見を紹介することは難しいので、私 切明義孝が提出してきた意見書(ご参考、一部抜粋)をご紹介いたします。

平成15年3月27日

BAT様

公衆衛生ネットワーク 切明義孝
   
公衆衛生ネットワークではあらゆる利害から独立した立場、中立な立場で意見を交換すること、そしてエビデンスがある正確な情報を提供することをモットーに運営しようと努めてきました。しかし、タバコ問題に関しては例外でした。中立な立場を取れる状況ではなかったのです。

2000年、当時、厚生省は「健康日本21」という報告書を作成しようとしていました。しかし、タバコ産業による様々な圧力が厚生省に加えられ、「健康日本21」のたばこ対策が大きく後退すると、これを契機に、地方自治体のタバコ対策にも様々な圧力が加えられるようになりました。そして日本のタバコ対策は、国レベルにとどまらず、地方レベルでも大きな後退を余儀なくされようとしていました。タバコ産業の重役、そして、タバコ産業から資金をもらった医師は政策決定の場でしきりに、「タバコの依存性は弱い」、あるいは「受動喫煙の害は否定された」、「タバコと癌の関連は明らかではない」などとタバコの害を曖昧にする医学情報を流し続けており、政府のタバコ対策は根幹から揺らいでいました。

このため、もはや我々はタバコに関して中立な立場をとることが出来なくなりました。皆さん、もし、あなたがたが善と悪、あるいは神々と悪魔の戦いに巻き込まれた場合、あなたがたは中立な立場をとることが可能でしょうか?その答えがNOであることは明らかです。それと同じ状況なのです。

私は公衆衛生ネットワークを運営する上で、中立な立場を取ることの重要性を十分に認識しています。しかし、中立的な立場をとる事が出来ないのです。日本ではタバコ産業から資金をもらった医師が、意図的にタバコの害を否定する情報を流しているという現実があるからです。分かりやすくいえば、日本の医師は誤った情報を流す悪と、正しい情報を伝えようとする善の2極対立した構造が明らかなのです。ですから、我々が医学的にとり得る立場は明確であり、中立の立場を取ることはありえないのです。

当時の状況は2001年6月に私が作成した肺癌緊急事態宣言に述べられています。この宣言文は国内各地の新聞に掲載されました。その中で日本の現状を紹介しました。一部を紹介しますと、
「日本では1950年から1997年の約47年間に肺癌が急増しており、この間、35~54歳での男性の肺癌死亡率は6.5倍 女性は4.8倍、55~74歳での 男性の肺癌死亡率は10.5倍 女性は7.5倍 になりました。これは無視することが出来ない数字です。」

このような状況の中で、日本タバコ産業が医師に資金を供与し、タバコの害を隠そうとしていることが明らかにされました。その金額は年間3億5千万円にも上ることが判明しています。このような現実があるため、日本では公衆衛生関係者の多くがタバコ病裁判の原告側を支援しています。しかしこれは当然でしょう。

そして、また新たな事実が明らかになりました。2002年12月14日に発行されたBMJには、タバコ産業(BATを含む)に雇われた2名の日本人医師が受動喫煙の害を隠すプロジェクトに加担していたという記事が掲載されました。この件について多くの方々が著者の1人Lisa A Beroさんとコンタクトをとり、事実確認を行いました。

このような事件が発生すれば対応せざるを得ません。早速、渡辺文学さんが抗議を行いました。その他にも複数の公衆衛生関係者が抗議を行ったようです。私は抗議を望んでいません。しかし、多数の者が抗議せざるを得ない状況に追い込まれているのです。

最後になりましたが、タバコ対策は私たちの世代の最も重要な公衆衛生課題です。子供達の未来はタバコの害による危機に瀕しています。タバコと様々な疾患との因果関係は既に明らかにされています。我々は健康を得る権利があります。我々は子供たちを守る権利と義務があります。そこで、我々はタバコに関する誤った情報から人々を守り、タバコに関する正しい情報を人々に伝えようとしているのです。

ありがとうございました。