のすたる爺や

文明の果てなる地からのメッセージ

楽しい一日だったんです!

2017年07月09日 | 日記・エッセイ・コラム

 老後をこちらの温泉マンションで過ごされていた英語の先生が亡くなり部屋を引き払うことになったので、ソファーや冷蔵庫などを私たち百姓事務所でもらって使うことになり、引き取りに行ってきました。

 ランダムハウス大辞典があったのでもらえるかな?と期待していたのですが、「これは持って帰れるので。」といただけませんでした。その代わり「僕が読んでもわからないから。」と、ペーパーバックの英文小説20冊と竹久夢二の全集20冊を個人的に貰ってきました。

 川端康成の「雪国」の英訳本や、シャーロック・ホームズやアーネスト・ヘミングウェイの「老人と海」の原作本などご機嫌な本がありました。再販制度のないUSAでは店によってそれぞれ価格が違う廉価本のペーパーバックですが、日本の書店で買うと結構高いんです。

 書店のカバーの賭けられた本が半数ほどあり、「これ見よがしに英文小説読んでいると思われないように、気を使われていたんだろうな?」と手に取って英文小説の中身を読んで見ると。

 「彼女の濡れた貝殻をこじ開け、彼は雄鶏の頭を突き立てた。貝が雄鶏を飲み込むと、悲鳴とも喜びともとれる叫び声が彼女の喉をふるわせた。」ニワトリさんが海に潜って貝に挟まれたのかな?ボク真面目だから全然わかんないや。ランダムハウス英和辞典があればきっと隠語の意味が分かったはずなのに。

 書店のカバーをかぶっていたのは皆その手の本で、まさか亡くなってからスケベ本の(ちなみに挿絵なし)コレクションが暴かれるとは思わなかったことでしょうが、武士の情けで黙っていました。外国にも団鬼六のようなSM小説もあるんですね。大変勉強になりそうです。

 もし私の身に何かあった場合「こんな本のコレクションしてたのか?」と、疑われると困るので、書店カバーに今日の日付と「〇〇先生にいただく。」と記載しておきました。

 立派な教育者だったらしいのですが、隠れて英文スケベ小説を読んでいるような姿を家庭で見せなかったためか、お子さんたちとも疎遠になり一人この山奥で暮らしていたようで、父親に反発したお子さんたちは学問とは離れた生き方をしたようです。

 価値がわかんないっていいなぁ!と思ったのは「それも邪魔だから持って行って貰っていいですよ。」と竹久夢二の全集もいただきました。

 私が高校生の頃出た全集で、10冊セットで13000円以上する本でした。高校の古文の先生がボーナスで緑色のセットを買って、借りて読ませてもらった全集です。「夢のふる郷」の巻は掲載されている詩を全てノートに書き写しました。それが二種類20冊。「邪魔だから」ですよ。

 夕方、久しぶりに演劇を見にいてきました。

 東中野にシアターまで持っている演劇集団風の地方公演が私の町にやってきました。実はこの劇団、私の町にアトリエを持っているようで、そんな経緯もあってカルチャーセンター主催の講演で、町民は無料で観劇できました。昨年は「ヘレン・ケラー」をやったのですが、ちょうど仕事と重なって見に行けなかったので、この劇団を見るのは今回が初めてです。

 演目はジャンヌ・ダルク。ちょっと前にミラ・ジョボビッチ主演で「follow me!」のセリフが流行にもなりました。

 大手の新劇の演劇も面白いのですが、個性が強い小劇場の演劇は当たりはずれがあるけれど緊張感があり、少ない予算と人数で作る舞台の工夫がまた興味深いので、気に入った演劇に出会えると千秋楽まで何回か見に行ったものでした。地方公演の場合は一回勝負。これもまた楽しい。

 私が学生の頃は早稲田小劇場から下北沢に演劇の主戦場が変わる頃で、観劇に行く前に作品に関する情報を仕入れて理論武装して出かけたものですが、ロシアに行ったら劇場街では毎日どこかしらの劇場が上演しているので、仕事帰りに気軽に演劇を見て楽しんでいました。

 なんだか、文化的にまだ及んでいないなと感じて、演劇を見る時には予備知識なしでいきなり見て楽しむようにしています。それでも、この田舎に住んでいると観劇などめったにない機会なので、見られるだけでも嬉しくなります。

 仕事帰りに気軽に行く劇場と言うとどうしても新宿役所前のニューアートやTSミュージックホールに目線が行がちですが、平成になってから行ったことがありません。今では「神事」に格上げになっております。

 渋谷のジアンジアンなんてまだあるのだろうか?天井桟敷の舞台を見たことがありますが、ほどなく寺山修司が亡くなった頃でした。

 舞台はいきなり緞帳が開いており、開演のブザーが鳴るって、さてさてどんな登場があるのか?と舞台にくぎ付けになっていると、いきなり背後から出演者が観客席を下りてきてびっくり。

 セリフのやり取りセリフ回しがブレヒト派の影響があるなと感じましたが、そこのコメディーが絡むので面白い演出です。

 舞台アートもそれぞれ形状が違う地方の劇場を回れるようにシンプルで無駄をそぎ落とした作りになっていましたが、演じる側が匠なので、なんてことない白い衝立が様々な姿に見てしまいます。特に小道具の使い方は秀逸でした。基本的には大衆娯楽風の演出ながら要所要所に歴史的メッセージが織り込まれている構成も見事でした。

 俳優9人での舞台でしたが一人が何役もこなし、裏方までやってしまうので、これも小劇場の醍醐味です。

 休憩をはさんで後半はジャンヌ・ダルクが英雄から魔女狩りの宗教裁判へと追い込まれる苦しい場面ですが、難しいことは抜きにして演出を楽しみました。

 2時間少々の舞台でしたが、「もう終わっちゃうの?」と余韻がなかなか消え去らない楽しい時間でした。

 演劇なんてめったに見られない環境にいることもあるのでしょうが、難しいこと抜きに楽しめる目線になれたような気がします。多分ロシアでの演劇鑑賞の日々もあったのでしょうが、「なんだかわからないけれど楽しかった」でいいんだと最近は思います。

 年内にもう一回くらい演劇を見られたらいいなと思いました。東中野のシアターに行ってみようかな?

 明治座に行きたがる婆ちゃんたちを笑えなくなってしまいました。小劇場最高!

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2 コメント

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上海バンスキング (萌ゆる大空)
2017-07-10 22:47:43
会社に入ったばかりの1980年代ですが、叔父に誘われて吉田日出子さんの自由劇場「上海バンスキング」を観にいったことがあります。
叔父の知り合いの絵本作家の先生が吉田日出子の大ファンで、全国のツアーの追っかけをしてたそうで、叔父が京都での公演に誘われたのに付いて行ったんです。
場所は岡崎の京都会館でした。
今思い出すと、マフィアのボス・ラリーさんの「揚子江に浮かぶよ~」という台詞がある人の「東シナ海に沈めたろか」とダブってしまいます。

その時に買ったLPレコードがどっかにあるはずですが、「ウエルカム上海」は今でも時々聞いています。

その後、松坂恵子と風間杜夫の主演で映画化され、レーザーディスクを買ったりしました。
リリー役の志保美悦子の中国訛の日本語と、カンフーでラリーの手下共をなぎ倒すシーンが印象に残ってます。
また見直してみようかな。
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上海帰りのリル (昔ハルビンに行ってた人)
2017-07-10 23:35:53
 風間杜夫、平田満、松坂慶子で「蒲田行進曲」が大ヒットして、その翌年あたりに「上海バンスキング」の映画がヒットでしたね。84年かな?
 松坂慶子と志保美悦子のスリーサイズが全く同じだったなんて話題になって事を記憶してます。

 80年代はまだ中国が神秘の国だった時代ですね。

 「上海バンス」は元々自由劇場の舞台が映画化されたものらしいですが、演劇は見ていません。
 10年ほど前に再演されたという話を聞いたことはあります。

 戦争前の上海。思惑や欲望が交差する怪しい街ですね。あちこちに各国の「疎開」があって、ジャズが流れていて。

 子供の頃「上海帰りのリル」なんて歌がヒットしていました。バーブ佐竹が唄っていました。
 元々は津島県と言う人が唄ってたらしいのですが、この人の出身地の富山の入善駅では駅の到着メロディーにこの歌が使われるようになったそうです。

 今の時代、中国帰りじゃ笑われるのが落ち。
 化けの皮がはがれたからでしょうね。
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