かあやん
私は母をそう呼んでいた
そのことばは私と母が
心と体でつながる力を持っていた
だが、学校では母をかあやんと呼ぶものは誰もなかったのだ
人並はさげすむように私を笑った
かあやんと呼ぶたびに私は
喉が枯れるほど恥ずかしさを覚えた
そして私は
みなと同じように おかあさんと呼ぶようになった
おかあさんと呼ぶたびに
私は自分の中の嘘に傷ついた
嘘をつき通す自分の心に砂漠を感じた
学校 . . . 本文を読む
大人に囲まれて甘えるだけでよかった私が
小学校の教室の中に
一人で投げ込まれてしまった
不安が付きまとい
人並だけが私を安心させてくれる
私が安心していられるのは人と同じことをしているときだった
それが人並の策略とも知らずに
人と同じことをすることが
しあわせなのだと思うようになっていったのだ
無垢な心が陥る
最初の落とし穴だった
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小学校は
わたしが始めて体験する場所だった
ただそこにいれば抱きかかえられ、居場所を与えられる
オトナに囲まれた家庭ではなかったのだ
保育園も幼稚園もない山村で
わたしは始めて他人を意識する場所に
収容された
人並みはそこに現れて
わたしにその姿を見せたのだ
その見えない姿を
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お馬の親子は仲良しこよし
いつでも一緒にポックリポックリ歩く
私は皆と同じように
母と手をつないでお遊戯の輪の中にいた
あの時どうして皆はあんなに無邪気だったのだろうか
私はどうしても
お遊戯の最後に母と顔を見合わせる動作が
恥ずかしくて出来なかったのだ
教室の皆が 私だけを残して
どこかに行ってしまうのではないかと思われた
私は一人置いていかれることに
恐れと不安と悲しみを覚えた
同時 . . . 本文を読む
ピンクの花びらが私の目の前を通り過ぎた
ランドセルの重さで
花びらのやってきた空を見上げることが出来なかった
人並みが笑いかけた
横も後ろも皆、私と同じように
母に抱かれるように立っていた
甘えられない相手
私は幼い同級生達にそんな思いを抱いて
怯えた仕草で記念写真におさまった
今もその写真が一枚
時間を止めている
その代償のように自身が朽ち初めているというのに
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お祭りのような賑わい
お兄さん達が駆け回るグランド
空にひるがえる万国旗秋の運動会
聞いたこともない華やかな音楽とピストル、人の壁
母に連れられて私は始めてその中に立った
しがみついたそのぬくもりの中で
私は自分と同じたくさんの子供達を見ていた
みな来春、同じ小学生なる
横並びになった子供らが駆け出した
母の横で泣きそうになっている私の背を
人並みはそっと前に押し出した
私は押されるままに . . . 本文を読む
あの雨の日に
人並はなにくわぬ顔で
私にことばを届けてきたのだ
小学校
母のぬくもりのある
軒下の柔らかな土の上から
雨だれのカーテンの向こうの
灰色の景色に
見たこともないそのことばがにじみ始めた
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人並みが私を捕まえたのは
まだ小学校もにも上がらない
雨ふる軒下の柔らかな乾いた土の上だった
あり地獄のクレーターが
いくつも出来ていた
生まれたままの柔らかな
痛々しい心の肌で
私はそのクレーターに指を入れたのだ
寒村の
私以外に同じ歳の子を知らぬ
初心な背中に雨だれが落ちかかった
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私が私のままで生きられたら
どんなに素晴らしいだろう
分かりすぎるほど分かっているのに
羽化したばかりの
初々しく痛々しい柔らかな肌に
人並みが容赦なく襲いかかって
私を殻に閉じ込めるのだ
子供のように
無防備な私は
何度もそのたびに心の血を流す
人並みが笑っている
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