【岡潔の思想】129「岡潔先生と語る 」(2)- 西洋文明の限界
「わかる」とは
(司会)なかなか問題が難しいようですけれども、家庭の問題とか、子供を育てるのに家の子は四才位だけれども、こんな時どんなことに注意したらよいかとか、いろいろあると思うんですけれども、そういう身近な問題からでもいいと思いますし、また先生のご著書からいろんなことを聞いて頂いてもけっこうかと思いますので、極く気楽にやって頂きたいと思います。どうでしょうか。
(男性)「わかる」っていうことですけど・・・
(岡)はあ?
(男性)わかるということ。
(岡)ええ、わかるという・・・
(男性)わかるということですが、今何人かの方が質問されましたが・・・
(岡)ええ。あの、僕、今ちょっと耳遠いんです。出来るだけ大きな声で云って下さい。
(男性)ああそうですか。先生のお話を聞いてわかるとか、つまりわかると云うことですが・・・
(岡)ええ、わかるということ、わかってるということはなかなかわからんのです。しかし、わかってないということはよくわかるんです。新しい教育を受けた大学生の作文を読んでみると、ちっともわかっていないなあと思うんです。
いろいろ本も読んでるらしいですが、本を読んだり字引を引いたりよくしてるらしいですが、ちっともわかってない。ちっともわかってないということがわかるんです。ちっともわかってないなあと思わないのがわかるということで、わかってても自分にもわからんのです。
ただ、わかってる時は、自信を持って云いすすみ書きすすむことが出来るでしょうけども、わかってないのにそれをやると、自分でも何だか頼りないだろうとは思います。出来上がった作文を読んでみると、何を書いてあるのかまるでわからない。滓のような作文になるんです。
(男性)ありがとうございました。
(岡)大体、統一するものが働いてないから、一遍の文章にならないんですね。
(男性)実は「わかる」ということについてご質問致しましたのは、いま何人かの方が質問をされましたが、僕は率直に云って、わかってないなあという感じ ― 自分自身もそうですが ― 質問された方はみんな、何もわかってないなあという感じを受けました。と云うことは、私もわかってないっていうことだけわかった。
(岡)ええ。
(男性)大変難しいというか、わからんということは先にわかるけれども、そこのところがみんな、先生のご著書をよく読まれていても、わかっていないなあという感じを率直に受けたので、わかるっていうことは難しいんだなあっていうことで、わかるとはどういうことかと思ってご質問した訳です。
(岡)心は合一する働きを持ってる。だから自分がそのものになることが出来る。自分がそのものになることによって、そのものを知るのが本当にわかることです。それ以外にないんです。
※典比古
ここは最後の発言がミソ。岡潔集『第五巻』の「講演集」のなかの「こころと国語」と題されたなかで、このように述べております。
「わかるというのは、ある働きです。初めに申したとおり、心の働きです。深さはさまざまであります。」
そこで要点だけを箇条書きにしますと、まず
1形式的にわかる これはほとんど鸚鵡の口真似
2意味がわかる これが知的にわかる(理解する)ということ
3意義がわかる 知性・知力が鏡が影を写せるごとく写せる
ただここでに止まらないのが、岡さんが岡さんたる所以ですが、
「もう一つ、知的にだけわかったのでは大いに困ることがある」ということを述べ、「秋の日射しがわかる、その趣がわかる、その深々とした趣がわからなければならない、このほうには、深さにきりがないのです。これは情的にわかることですね。知的にわかるのを<理解する>というのなら、情的にわかるのは、<情解する>とでもいえばよいわけです。」と。
まったくここを読みますと、その情的な深さにはきりがないとつくづく思うのです!
🔶昨日は二宮にございます吾妻山に。午前4時半に家を出発、駅前の駐車場に5時40分到着。そこからゆっくり、30分ほどで山頂に。その眺めに癒されました。
コスモスが満開でした!
気功「動禅呼吸法」の撮影に集まった方々。ワタクシも参加しました。
次回は【岡潔の思想】130「岡潔先生と語る 」(2)- 西洋文明の限界
「今の若い人は自己中心」1を記事にいたします。