のら猫の三文小説

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香奈とコシロ NO.82

2013-05-26 00:08:41 | 香奈とコシロ

香奈は元気で、香奈オフィスもジブトララストも好調だった。



香奈は、コシロと一緒にジブトラストに通い、海外のオフィスからの報告を見て、指示して、支援や出資の相談を受け、来客と会う日々だった。来客の予定がなければコシロと一緒に家に早く帰り、コシロと一緒にお不動さんの絵をみたり、香奈オフィスの報告をみたりとのんびり暮らしていた。歳にも拘わらずたまにスイスのコッソリートからの情報を元に、香奈ファイナンシャルとして取引したりしていた。スイスの運用会社での運用もコシロと一緒に取引していた。スイスの運用会社はまだ香奈だけの会社にしてあった。香奈ファイナンシャルには入れず、香奈の個人的な取引をするためだけの会社としていた。国内株式は、香奈ファイナンシャルとして取引していたにも拘らず、不思議にもこの会社は香奈ファイナンシャルとは別系列の組織としていた。コッソリートが完全に面倒を見てくれていた。
コシロが、コッソリートのメールを見て、香奈に、にゃーと鳴いて、国内株式を買う事もあったし、先物取引もコシロの表情に見ながら取引していた。


瑠璃も香奈オフィスを資源大手と言われるまで大きくしていた。ハゲタカの瑠璃と陰口を聞かれていたが、それでも香奈オフィスの保有する資源利権は多くなり、香奈が運営していた時の相場での荒稼ぎはなくなったのに、むしろ利益はあがっていた。香奈は通常の運営は瑠璃に任せて、ハゲタカ度を調整する程度だった。香奈が直接見ていたジブトラストも順調だったし、香奈はこんな生活が永遠に続くと思っていた。香奈はいつまでも健康で元気だったし、歳の事は忘れていた。コシロも化け猫のように元気な猫だった。香奈はまだ海外総括だったので、海外に出かける事もあった。コシロはそんな時はゆっくり自分で部屋で休んでいた。香奈は出張の予定をコシロに言うのが癖になり、コシロもそれが分かるのか、そんな時は香奈を玄関で見送っていた。



ただコシロには、友達だった青不動さんから、


夢の中で伝えられていた事があった。



コシロは元気だったが、もう60才を超えていた。



青不動さん「コシロ、もうそろそろ香奈とはお別れだよ。もうそんなに生きられないよ。わしの力も限界があるのだよ。」

コシロ
「折角のんびりした日がおくれているのに、残念。でも今まで、楽しかったよ。香奈は海外に行っているけど、最後に会えないの。」

青不動さん
「今日や明日の事ではないよ。暫くは大丈夫だよ。でも心の覚悟をつけておきなさいよ。」

コシロ
「香奈と会った大学へ行ってみたいけど、無理だろうね。」

青不動さん
「奈津実の彼の良平が、今日夕方、奈津実を送りに敷地の端の美術館の前にくる。その車は屋根のついてない車だから、潜り込めば、大丈夫だ。お前が乗れば忘れ物を思い出して大学に戻るようにしてやるよ。その車は出発出来ないように、させるから、翌朝までゆっくりしなさい。朝、奈津実を迎えに来るようにしてやるよ。」

コシロ
「ありがとう、1晩ゆっくりとしてくるよ。」


コシロ、雌猫と一夜を過ごす






コシロは、良平が奈津実を送ってくるのを美術館の前で待ち、こっそり車に乗って、大学に戻った。良平は忘れ物を取りに帰った隙にコシロは抜け出し、香奈と初めて会った大学の夜の構内を見て回った。コシロが香奈をつけ回していた頃から、月日が過ぎてすっかり、様子が変わってしまった。そして懐かしい部室の裏に行った。そこには茶色の猫が段ボールの中で寝ていた。茶色の猫は、何故か、怒りもせずに、じっとしていた。



コシロ「君が今ここに住んでいるのか、大昔ここに住んでいたので、一晩だけ、ここに休ましてもらうよ。」

茶色の猫
「大昔というといつの頃なの。」

コシロ
「60年ぐらい前かな。ここはあまり変わらないね。」

茶色の猫
「冗談の多いおじさんなのね。猫はそんなに生きられないのよ。」




茶色の猫は雌猫だった。コシロは、天才肌の孤高の猫だった。若い時の香奈を見て、秘めた想いを胸に隠し、長い間香奈と一緒に暮らしてきた。コシロは、猫が嫌いだったが、茶色の猫は真摯な、そして純粋な心を持つ雌猫だった。語り合っているうちに、初めて猫と関係を持った。コシロは、無意識に生きた証を残した残したかったかもしれない。翌朝まだ寝ている茶色の猫に無言で別れを告げ、激しい疲労を覚えながら、屋根のない赤い車に足を早めた。



良平は、忘れ物を取りに、大学に帰ったが、忘れ物を取って戻ってきると車の鍵が見つからなかった。ポケットの中に入れた筈なのに、判らなかった。修理会社に連絡しようとも思ったが、とりあえず明日の朝にしようと思い、カバーを掛け、タクシーで家に帰った。降り際にお金を払おうとして財布の中に車のキーがあった。大切なスポーツカーだったが、何故だか酷く疲れ、明日の朝は早く、奈津実を迎えに行く約束をしてしまっていた事に気付き、そのまま寝た。翌朝早く、家から又大学に行って、敷地の美術館に行った。道もすいていたので、早くついた。まだ時間には早く、少し散歩していると奈津実が来て、もう一度大学に行った。



香奈の家では大変だった。


香奈が大事にしていたコシロの姿が消えていた。

瑠璃「コシロがいないのよ。お母さんが出張の時にいなくなっているのよ。お母さんが、帰ってきたら、大騒ぎだよ。いついなくなったのだろう。もう歳なのに。

正人
「帰ってくる時に出かけるのを見たよ。姉さんも見たでしょう。」

奈津実
「美術館の前まで良平さんに送ってもらったけど、見かけなかったよ。」

正人
「良平さんとキスでもしていたから、判らなかったのでしょう。どちらにしても遠くには行っていないよ。不用心だけど、庭に面しているコシロの部屋の窓を少し開けておこうよ。」


そうしよう、泥棒なんてこないよ。コシロを閉め出して、風邪でも引かすと香奈がうるさいよ。

瑠璃
「お母さんには内緒だよ。お母さんは、2日したら帰ってくるから、それまでに帰って欲しいもんだね。」

正人
「明日みんなで探そうか。」

奈津実
「明日は、私早く大学に行くの。卒業論文の整理をしておきたいの。良平さんが迎えにくるのよ。」

瑠璃

「それは勝手にしなさい。こんな時にそんな事いって大変なのよ。コシロは私よりお母さんとの付き合いは長いのよ。60年以上も生きている猫なのよ。ギネス級の長生きの猫なの。取りあえず明日まで様子を見ましょう。」



そんな時、ジブトラストの管理セクションの常務で部長の斉藤から電話がかかってきた。


斉藤会長は元気ですよ。ジブドイツの連中が今日はベルリンに案内して、良いブランディの出すレストランに案内してから、ホテルに送ると言ってました。翌日は空港まで送るので、もう電話出来ないから、コシロに言っておくようにとの会長からの伝言です。

瑠璃
「コシロがいなくなったのよ。」

斉藤
「それは大変です。管理の連中で捜索隊を編成しましょう。みんなを呼び戻しましょう。」

瑠璃
「一応、明日の朝まで様子を見ましょう。お母さんには内緒にしてね。恵おばさんにも言ってないの。」

斉藤
明日の朝、お電話しますね。捜索隊を作らないといけません。警備会社からも応援の人を出してもらいますよ。ヘリコプターも準備させるか考えます。


翌朝、朝ご飯の前には、コシロはいなかったが、おそるおそる見に行った智恵子が、コシロが絵の裏で、深い眠りに入っているコシロを見つけた。死んでいるようにぐっすり寝ていた。

智恵子「コシロが寝ています。でも動きませんよ。」

徹彦
でもお腹が少し揺れているよ。ぐっすり休んでいるんだよ。

瑠璃
「コシロの部屋とお母さんの部屋の窓を閉めておいてね。もう大変だよ、コシロがいなくなると。内緒だよ、コシロがいなくなったのは。斉藤さんにも口止めしておくわ。

徹彦
「そうしよう。智恵子も黙っているんだよ。」

智恵子
「そうします。」





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