のら猫の三文小説

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新しい子猫たち No.115

2014-05-08 00:00:26 | 新しい子猫たち 

冶部一族の危機?





みんな、頭は良いものの、流石の冶部一族も、すっかり人間の器が小粒になっていた。有り余る金を貰い、ナンダカンダと一族の管理会社に出資しても、まだ余っていた。自分達の会社の仕事で走る回る人もいるにはいたが、有り余る金と暇を持て余して、蝶を探して、世界中を旅したり、世界中の滝を見るのが好きな人たちもいた。便利な敷地内で暮らし、生活の面倒もほとんど、高齢者の高額所得者が面倒をみていた。配偶者もみんないい所のお嬢さんやお坊ちゃんで、品行方正だったが、覇気がなかった。


神一の危機感



一族の銀行の頭取に、若くしてなった神一であったが、後継者と云う以前の問題に悩まされていた。行内を掌握するまでは、必死になって、みんなの意見をリードしていた。完全に掌握しすぎて、神か天皇かと言われるようになり、だれも神一の前では緊張して、自由に意見を言わなくなった。



事務的な話や数字だけを説明するだけになった。神一は、そんな数字もしっかり見ていたので、少しでも間違っていると直ぐに訂正させた。みんな段々怖くなって、何も話もしなくなった。



神一の言った言葉が、お告げのようになった。陽一は流石にこれはまずいと思い、役員会で、神一にわざと反対する意見を言って、みんなの議論を引き出していた。役員会は、少しは議論の場になった。陽一は、これで役員会は議論の場になると思い、一族の銀行を去った。



しかし陽一が去った後は、陽一が議論の口火をきらないので、だれも発言せず、又直ぐに神一の独演会のようになった。神一は、陽一の返り咲きを要望したが、人は自分で育てるものと神太朗に言われ、断念した。



神一は、その後も人を育てる必要を感じて、みんなの意見を聞くように努めた。しかし神一は、人間ばなれした天才だったので、役員は大変だった。うっかり間違った事を言えば大変だった。みんな、言葉、特に数字については注意していた。
神一は、歩くコンピューターみたいな人だった。神一は、自由に議論して欲しいと言ってもなかなか議論は弾まなかった。



銀行なので、決断する時は、決断しなくてはならない。神一は、データを出させて、自分で決断した。みんな、神様のお告げを聞くように従った。神一はそれでも優秀な若手をドンドン経営管理室なんぞに集め、新しい幹部候補生として、役員にもプレッシャーをかけた。しばしば権力者が使う手だった。



それが反って、既存組織の萎縮に繋がり、逆効果になり、ますます行内がギスギスした。神一は、減点主義を止め、何かをしなかったのではなく、何をしたかを重んじた。役所みたいなキープヤング路線も止めた。経験のある人には、従来と違って、色々な職場で、経験を生かしてもらい、その情報も上げてもらった。



少しはみんな意見を言うようになった。役員会でも神一は聞く姿勢を強調して、最初に役員たちが話すようにした。それでも情報は、なかなか上がらなかった。情報の精度を確認してから、神一に話さないといけないとみんな思った。





神一「例の国際金融ルートは、本当にあの人が作ったの?」

経営管理室長「実際に運営しているのは、あの人とあの人のチームですし、あの人は前からそんな事も言ってました。」

神一「それは誰でも判る、でも本当にあの人がシステムまで作ったのは、信じられない気がする。そんな決断が出来る人ではない。」

経営管理室長それは私もそう思います。未確認の情報でもいいですか?」

神一「それが情報なんだよ。確定すれば、もはや情報じゃない。なんでもいいから言ってください。」

経営管理室長「元々は、あの人の考えではあるんです。それを取り入れて、整理して、システムにまで完成させたのは、あるボスだと言われています。

神一「それを聞いているんだよ。」

経営管理室長「リトルチャと言われる人らしいです。例の国内の会社が総括して、かなりの海外の拠点を持っています。そして為替専門会社、投資ファンドなどを持ち、協力銀行も増やしています、例の銀行の本支店網やネット銀行が、そのルートをうまく使っていると推定されます。未確認ですけど、もう一つの大きな銀行では、かなり上のレペルでは、密かにそう言っているらしいです。もう一つの大きな銀行が、あのルートを利用していこうと云う計画もあるらしいです。最近ハイレペルの役員が、そのボスは、人じゃなしに猫だと漏らしていると云う情報もあります。猫見るとドキっとすると言っているらしいです。」

神一「そこまで知っていて、なぜ、僕に報告しないの?」

経営管理室長「そんな未確認情報を頭取に報告する事は出来ません。あそこは、実質的には、正人さんが最高責任者ですし、神之助さんが助けているかもしれません。もっと確認してからと思いまして。」

神一「リトルチャと言ってくれれば、判るんだよ。正人さんは、そんな事を考える人じゃないし、神之助さんは、僕の伯父さんだよ。元々ジブネットワークを持っているから、ジブ内では、大きなお金は動かしているんだよ、至急に大きな資金の送金が必要となり、迷惑そうにやって貰った事もあるんだよ。ジブなら簡単に動かせるよ。でも後で複雑な処理が必要になった。ジブ以外では、こんな事はしないよ。今回は特別だよと何度も言われたよ。



しかしあのルートは、それをビジネスとしてやっている。だからこそ、注目しているんだよ。みんな理屈では判っているけど、なかなか出来ない。それが重要なんだよ。もっと情報は直ぐにあげてください。未確認といってもいいからね。」

経営管理室長「判りました。」