のら猫の三文小説

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新しい子猫たち No.55

2014-03-09 00:00:26 | 新しい子猫たち 
加代子の異変



聡美も神元も切人も見た。話はジブトラスト中に駆け巡った。取引は、以前よりも格段にパワーアップしていた。一人の人間が出来る範囲を遥かに超えた、機関銃のような取引も部隊が同時に撃つように激しく復活していた。



しかも取引単位量も増えていた。それが、取引頻度も段々と上がり、取引単位も増えてきた。アメリカの先物相場は、加代子たちの注文で上や下に揺れ動いた。先物につれて現実の株式もそれに釣られ、上や下へ振り回された。



加代子は驚く事に株式でも機関銃のように他方面で注文を出していた。揺れ動くアメリカマーケットではあるが、それを通り越して、ジェットコースターのような相場になった。2倍にも上がったと思ったら、半値に下がる事まであった。



加代子のアメリカの会社も加代子の霊力に感応していき、しかも複雑な子会社システムになっていたので、手口も複雑で、アメリカの相場は加代子たちに乗っとられたようになっていた。



加代子たちが売れば、どんどんと売りは続いて、大きく下がり、買えば色々と買いが集中的に続いて、大きく跳ね上がった。加代子の神がかりの話を聞いていたリトルチャは、流石に投機猫だったので、この動きを解析した、リトルチャには、手口がそれなりに判り、独自の判断を加えて、配下を使い、その流れを加速していった。切人も同様に解析して、少し安全な局面になった時に参加して、便乗して少し儲けた。毎日何かを仕掛けているような相場になった。



アメリカの金は、恐ろしい速さで、信じられない金額が、毎日のように加代子たちに流れ込み、リトルチャたちのグループも少し流れに乗って吸い取った。切人も少し便乗した。



株を買ったら、突然に倍になったり、あれよあれよと云う間に、半値になったりした。半年以上、こんな状態が続いた、加代子のグループは、大量の一気の売買を先物では一日の内に繰り返し、現物でも業種や業態を変えて、一気の売買を繰り返していた。相場は引っかきまわされた。



その内に加代子のお腹が大きくなり、妊娠休暇に入った。加代子の産み月は判っていたリトルチャと切人は、加代子の妊娠休暇に入りそうな前に、一斉に手じまっていった。売れる株はすべて処分した。もう投機の時期は去ったと判断した。



今回の加代子のパワーは特別だった。リトルチャも切人も、加代子のパワーには驚いていた。小天才たちではとても太刀打ちできない。人間と神とを比較するようなものだと知っていた二人、いや一人と一匹だった。


ぱったりと加代子の大量の売買が消えた。今まで加代子が突然儲け出した後は、ガクッと減る利益をカバーしようと取引の小天才たちが頑張るのが、通常だった。



その取引の小天才たちも人間だった。今回は格段にパワーアップした加代子に振り回され、疲れて果ててしまっていた。何しろ少しの油断も大きな損失を招くのだ、価格は、絶えず恐ろしく動いていた。みんなピリピリした状態で半年を過ごしていた。緊張感が解けず、ほとんど寝付けない状態になった人もいた。



今までは気楽に取引して、怖さも感じなかったが、相場の怖さも初めて実感した小天才もいた。今度は、みんなで暫く取引を休んだ。リトルチャたちもアメリカマーケットから離れた。切人もアメリカマーケットでは暫く様子を見るように言って、アメリカでの取引も休んでいた。



ジブトラスト以外の人は、そんな事は知らなかった。みんな、おどおどと細かく取引して、今度は値動きがほとんどないマーケットになった。突然起こるかもしれない大変動にビクついた。突然と売買量がガタッと落ち、取引している人は退屈して居眠りして、起きたら、まだ同じ値段だったと云うような事になった。


加代子の会社のディラーはみんな疲れ果てて、休暇を取ったり、体調を崩して、入院する人もいた。アメリカの相場は火の消えたようになった。加代子のアメリカの会社の花形ディラーの小天才たちも取引を止めて、休息を取り、のんびりしていた。ナンダカンダと加代子の会社は、保有不動産が増えていて、もう不動産会社のようでもあった。




加代子の会社は、今回の大儲けを最後に、取引をすべて止めて、不動産会社としてのんびりする事に決めたと云うニュースも出た。加代子の会社の保有株も、極端に減っていた。



加代子たちは、保有していた株も売買を繰り返しながらも、最後には保有株を極端に減らしていた。アメリカの株式相場には、もう魅力もないと云う、加代子の会社のディラーが語っているシーンと人がいないガラーンとしたカヨコトラストとファイナンシャルのディリィングルームのシーンとが、アメリカの経済ネットワークの番組で放映された。


そんな時に、中国が台頭して、ついにアメリカを超える経済大国になったとの報道も出た、落ちるアメリカそして上昇する中国と云う解説も出た。株価はどんどんと下がっていった。それに神代の孫会社はやたらと先物を売っていた。それも弱気に火をつけた。



買い手のいないマーケットになっていた。株価はまだまだ下がるとみんなが思い、好材料にも反応がにぶく、更にズルズル下がっていった。いくらなんでも安すぎると云う意見が充満していた。しかし買えばズルズル下がる相場なので、買う度胸のある奴も少なく、まだズルズルと下がっていった。



あまり下がったので、休んでいた筈の切人まで安すぎると思ったが、上がる見込みもないと思いながら、前から株式よりも会社として魅力があった会社の株だけを、自分達の財産管理会社であるマリアホープで、少しずつ買っていた。



そんな人が国内や海外でも、少しだが出てきた。チャタロウもそうだった。魅力ある企業が安値で並んでおり、チャタロウチームの調査に従い、リトルキャット運用会社として、猫事業に必要な協力を得られそうな会社の株を少しずつ買っていた。



チャタロウたちは、今回の九州事業でのハイテク製品は、今までのジブの弱い、アジアとアメリカにターゲットをおいていた。ジブトラストの関係会社や一族の会社との競合を避けていた。勿論国内組にも、少しは日本での販路開拓のための会社に投資したり、国内でもチャタロウのチームにも接触してもらっていたが、やっぱりアジアとアメリカがメインと思い、アジアとアメリカへの輸送ルートを持つ貿易関係の会社に投資してもらっていた。



ジブトレーディングや快適交易そして商会は、ハイテク素材関係にはそんなに関与していなかった。九州事業でのハイテク製品は、ロボット工学や未来エネルギーとは違い、素材関係の製品が多かった。専門の輸送システムも必要だった。円高とか円安とかも、システムとして売り込むし、そんな程度で売れなくなる製品でもないと云う自信もあった。



チャタロウチームからは、アジアとアメリカにも調査と交渉のために調査派遣団も出していた。チャタロウチームもそれらの会社に、九州事業で出来る製品の販売や流通などについて協力を呼びかけていた。出資してくれたら、協力すると言ってきた会社もあった。



リトルチャは、自分たちのアメリカの運用子会社名義で買うように勧めた。自分達の運用子会社の利益を減らせる効果があると思った。リトルチャは、結局含み損になるから、節税対策や決算対策になると考えていた。


プーチンは取引なんかは無関心だったが、チャタロウのチームから、今は直接九州事業とは関係ないけれども、規模は小さいし、株価は格安だし、これから伸びる会社ですよと報告があった、ある研究ベンチャー企業の説明文に、ふと気付いた。



プーチンが何気なく読むと、資源開発で面白い研究をしている企業だった。あのレアメタルの解析に没頭していたラッセルは、この会社の技術が役立つと思った。そしてチャタロウに言った。この会社は面白いよ。明日の猫軍団に何か貢献が期待できる企業かもしれないよと言った。チャタロウは安かった事もあり、この企業を含めて買う事にした。


リトルチャは、今回の加代子の爆発に便乗してやたらと儲けていた。このままではやたらと税金も高いし、どんなに経理操作しても、正人と決めたルールでの決算で、大きな利益が出ると考えていた。税金対策は勿論、ジブの決算ルールでは、含み損は利益から差し引かれる事になっていた。



つまり儲けた利益の半分が、配当として親会社のリトルキャット運用会社に掠め取られた。今買うのは、明らかな含み損になるので、どんどん買えとチャタロウに言った。チャタロウはドーンと買うよりは、少しずつ買うつもりだったが、リトルチャはそんな株数では効果がない、もっと買えと言われ、別に売買益を出すための投資じゃないからとも言われた。チャタロウは、仕方なしに、かなりの株数をリトルチャに言った。決算期末も近づいていた。税金対策も決算対策もあった。リトルチャは、今は含み損が出た方が色々と都合が良かった。



リトルチャは、チャタロウの依頼よりどーんと株数を増やして、どーんと一気に成買で買った。流石に買かれた株は、一時的に跳ね上がって、数少ない値上がり株として有名になった。それは続かず、やがて急落した。しかし、チャタロウたちのチームはそれを利用して、対象となった会社に更に協力を呼びかけた。九州事業で作る予定の製品を紹介した。何社かはその気になった。



あの研究ベンチャーは、今回は九州事業の製品とは関係なかったが、逆に向こうから、我々もリトルキャット関連企業の一角になり、資源開発研究に協力したいと言ってきた。会社の運営や研究には金が要った。チャタロウチームは、チャタロウに報告した。チャタロウはプーチンに聞き、割り当て増資も受ける事にした。



リトルチャはそれも自分の子会社で行い、セコセコするなと励まして、決まった額以上にドーンと増資した。それも決算対策に生かせた。このベンチャー企業は、猫たちがあっと云う間に、過半数を大きく超える株式を保有して、完全にリトルキャット運用子会社の一員となって、研究してもらう事にした。



それでもリトルチャの儲けからすると、大した投資でもなかった。まだまだ小さいべンチャーだった、チャタロウは、一種の先物買いの積もりだったし、リトルチャは単なる決算対策だった。プーチンに頼んで、資源研究所の夢野にも話をしてもらい、資源開発の手助けをしてもらう事にした。夢野は徹にも話をして、徹も関心を持ったようだった。来日してもらい、資源研究所と会議をする事になった。