たすくの空中散歩

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種子法廃止と種苗法改正、実際のところどうなのかまとめ②

2020年12月21日 19時13分31秒 | 一喜一憂
前回

さて、名前が似ていて紛らわしいのですが、種苗法の改正に遡ること数年前、国会でひとつの法案が可決されました。それが、2017年「種子法の廃止」法案です。
その採決が、あっという間にいつのまにか決まってしまっていたらしく、今回の種苗法の改正にまで尾を引く、不信の原因となっているようです。

では、その種子法とは何なのか、というと
ーーー
種子法=正式名称「主要農産物種子法」
昭和27年に、米・麦・大豆の主要作物について、優良な種子の安定的な生産と普及を「国が果たすべき役割」と定めた法律。
自治体ごとの奨励品種の選定の義務化や、その原原種・原種・一般種子の生産と安定供給に各自治体が責任も持つことが定められている。
ーーー
ようは、国民にとって欠かせない主要農産物の種子に関しては、公共の財産として税金を使って守っていこう、というような取り決めの法律です。

で、廃止の理由がこちら

農林水産省HPより「主要農作物種子法を廃止する法律案の概要 背景 法案の概要」

…なのですが、概要は種苗法の改正とは対照的に、わずか1ページ。
正直あまり、「どうしても廃止しなければならない理由」が伝わってこない。
なんとなく、もやのかかったようなはっきりしない感じ。

要約すると、
「品種改良の技術、品質は安定期に入っていて、公的に保護しなくてはならない時期は終えた。
今後は国際的な競争力をつけるために民間のノウハウを取り入れていきたいのだが、種子法があることで、民間に不利になっているから廃止したい。」
というような感じ。

で、同時に進められている「農業競争力強化支援法」の8条4項で、これまでの研究データや素材も民間に提供しなければならない旨が書いてあるそうで、

農業競争力強化支援法 | e-Gov法令検索

とにかく、政府としては、今まで公共事業としてやってきた主要農産物の種子生産を民間に任せたい、と。
そういうとらえ方で合っているのかどうかは定かではないのですが、そうとらえることもできます。

種子の品質維持、安定供給とは、そのまま食の品質維持、安定供給に関わる重要な問題です。
そんな大事な案件を、わずか1ページのいろんな意味で薄い説明文だけで、国民に周知させて議論される時間の余地も与えないままにいつの間にか決めてしまった、とあれば、やはり「なにか後ろめたい本当の目的があるのでは?」と勘繰りたくもなります。
折しも世界では、特定の大企業による、種子の権利の囲い込みによる独占的な販売が進められているという現実があるのです。
公共の利益を追求する国営事業から、株主の利益を追求する海外の民間企業へ日本の種子の主導権が握られたら、と思うとやはり心穏やかではいられません。

というわけで、種苗法の改正に反対している人たちというのは、この種子法の廃止に反対している(いた)人たちで、「種子法の廃止に種苗法の改正を加えることによって、海外の企業の支配に有利な環境が完成する」ことを危惧されているのです。

確かに、裏でコソコソ日本の公共の財産をジャンジャカ売りに出してばかりいる今の政府のことですから、すること成すこと、全部悪だくみに見えてきてしまうのは仕方ないのかもしれません。

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しかしながら、種苗法の改正に関しては、政府の公式説明を読む限り、大変中身のある、説得力のある改正であり、どうもただ単に悪だくみであるようには思えません。

というわけで、種子法の廃止法案採決時のことについて、さらに詳しく調べていくと、どうやら採決の際にもちゃんと反対意見があり、種子法の廃止によって危惧されること、懸念点に対する牽制として、付帯決議(ふたいけつぎ=法的な強制力はないけれど、政府が尊重しなければいけない決まり)が議決されていることがわかりました。
そして、そこでは

・特定企業の独占にならないようにすること
・種子の多様性を確保すること
・引き続き財源を確保するために、財政需要の周知を徹底すること

などの、思わず「なんだ、政治家わかってるじゃない!」と嬉しくなってしまうような内容に加えて

・今後も優良な品質の種子の流通を確保するため、種苗法に基づいて適切な基準を定め、運用すること
・国外に流出することなく適正な価格で国内で生産されるように努めること

という、おそらく種苗法改正への起点となったのではないかと推測される文面が見つかりました。


と、いうことは…
そもそも種苗法の改正とは、種子法の廃止への反対意見から生まれたものである可能性があり、その種苗法の改正に反対するということは、実は種子法の廃止に反対することに反対することになってしまっていて、「日本の種子を守る」という本来の目的に対して自己矛盾してしまっているのではないでしょうか?



もしそうだとするならば、種苗法の改正についての概要説明が、やたらと気合の入った、理論整然とした中身のある内容なのに対して、改正反対派の皆さんの意見がスジの通らない、論点の定まらないものになっていたことなどにも納得がいきます。

結局のところ、実際のところはどうなのか、なんてわかりませんが、とにかく、種子法の廃止に関しては、採決の際には、ちゃんと懸念点に対する牽制が付帯決議というはっきりと残る形で表明されていること、そして、世間での危機感の強まりから、各自治体ごとに、種子法に代わる条例が新たに制定されてきていること(これは反対運動の皆さんのお陰かもしれない)などから、ひとまず、すぐにでもえらいことになるような感じではなさそうです。


<同じ国、同じ時代に生まれて>

どんな政策にも、メリットとデメリットがあります。
普段、ただの消費者でいると気づきにくいことかもしれませんが、
政治とは常にトレードオフです。
何かをするには何かを犠牲にしなくてはならず
あちらを立てればこちらが立たず

政治家の皆さんは、何をやっても文句を言われる立場の中で、それぞれ好き勝手言う国民の膨大な意見を取りまとめて、何かひとつの方針を出さなくてはいけない、という、たとえ大金もらえても誰もやりたくないような無理難題に日々向かい合っているわけです。

そして、反対の意見の人も、賛成の意見の人も、「日本の未来をより良くしたい」という共通の目標を持っていて、歩みゆく未来もまた同じはずです。

一見悪だくみにしか見えないようなTPPや天井知らずの規制緩和や公共事業の民営化も、それを一生懸命進めようとしている人たちには、彼らなりの正義や、責任もあるのです。

だから、そういった一つ一つの政策の「枝葉」に反対するよりも、それらをたどった先の「幹」を突き止めなければならないのではないでしょうか。

彼らを駆り立てる資本主義経済とは何なのか?
実際の人々の暮らしを犠牲にしてまで推し進めなければならない経済成長とは何なのか?
それで一体、我々はあと何年、何百年、国内総生産量を増やし続けなければならないのか?

コロナ渦が、現在の社会の抱える問題を浮き彫りにした今こそ、もっと根本的なことに疑問を投げかけてみる良い機会なのかもしれません。

おかげ様で、この記事を書くにあたっていろいろなことを学ばせていただきました。
山田正彦さんには、お会いしたことがないので、人柄とかはわかりませんが、「タネはどうなる」は今でも私の大好きな本です。
そんな本の最後の言葉で今回の記事を締めくくりたいと思います。

「政治家に任せるのではなく、私たちが主役である」


種子法廃止と種苗法の改正、実際のところどうなのかまとめ・完




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