ふわふわな記憶

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想いは昇華されて...。最初で最後のピースだった渡辺曜の物語。――『ラブライブ!サンシャイン!!』 第11話を振り返る。

2017-01-14 19:20:00 | ラブライブ!サンシャ...

友情ヨーソロー





以前、上記記事で各話の感想を書いたとおり、『ラブライブ!サンシャイン!!』は1クールを使って、メンバーそれぞれの「Aqours」への加入エピソードを描き、その動機と各メンバーの人物像を緻密に描ききることに注力されていた。そこで、今回は彼女たちがなぜ「Aqours」に加入したのかとそこから見えてくる第11話の物語について言及していこうと思います。(←放送当時に第11話の感想を書けていなかったので。)



それぞれの願いを抱いて――「Aqours」結成と加入動機



夢中になれる何かを知らないまま高校生になり、このまま普通で終わってしまうことを恐れていた高海千歌が「諦めちゃダメなんだ その日が絶対来る」というμ’sの言葉に触発され、Aqoursというグループは発足に至りました。


小学校から「千歌ちゃんと一緒に夢中で何かやりたい」という想いを抱き、千歌のスクールアイドルへの本気の想いを知って、参加を決意する渡辺曜。期待されることのプレッシャーから自分の音を見失い、何をやってもうまくいかないという迷路の中に迷い込んでいた自分を変えるため、再び大切なピアノに笑顔で向き合うために、「Aqours」へと加入する桜内梨子。



姉や友達、ずっと誰かに合わせて自分の気持ちに嘘をついてきた黒澤ルビィは国木田花丸に背中を押され、大好きなスクールアイドルへの想いを解き放ち、自分自身の言葉で、自分自身の意志で「Aqours」に入ることを決意します。また、物語の読み手として、傍らで黒澤ルビィの物語を支えることにこそ注力してきた国木田花丸は、今度は自分の物語を始めるために高海千歌から差し出された手を掴みました。


そして、現実に押し潰され、「自分の理想」を諦めようとしていた津島善子も、「堕天使」という突飛な個性を否定することなく「自分の好き」を貫けばいいと、「今までのありのままの自分」でいられる場所として「Aqours」に迎え入れられます。

 
「Aqours」の原型であった3年生たちも、自分たちの想いをぶつけ合い、果南とダイヤと鞠莉の3人が一緒に過ごしたあの宝物だった時間を取り戻すために、空白だった2年間をこれからみんなで埋めていくために、再び「Aqours」への合流を果たすことになりました。



第1話で千歌が決心し、曜と2人から始まった「Aqours」は、こうして程なく、それぞれの想いを抱いた少女たちが集まり、第9話「未熟DREAMER」において、9人で1つというグループの完成形をみたかのように思えました。でも、厳密に言えばそうではなかったというのが第11話「友情ヨーソロー」の物語であったと思います。

 
 

最初で最後のピースだった渡辺曜の物語



「Aqours」のメンバーは程度の差はあっても基本的には「自分の想い」に由来して、「Aqours」への参加を決意しているけれど、曜だけはその根本が少し異なります。「千歌ちゃんと一緒に夢中で何かやりたい」――確かに、これは彼女がずっと小学生の頃から抱いてきたささやかな願いであり、動機としては十分過ぎるもの。


でも、彼女の願いである「一緒に夢中で」という部分は「自分の想い」でありながら、決して1人で完結するものではないのです。そして、何よりも難しいのは、千歌が曜のことをどんなに大切に想っていても、その気持ちに曜が気付かなければ、この願いは達成されないところ。つまるところ、第11話におけるキモはここにあったと言ってもいいのです。



2人で始めたスクールアイドル部。まもなく梨子が加入し、作詞と作曲である千歌と梨子は2人でいる時間が増えることもあったでしょう。2人が距離を縮めていく一方で、逆にだんだんと距離を感じていく曜。第1話において叶ったかのように見えた曜の願いは、悲しいかな、本当の意味ではまだ叶ってはいなかったんですよね。そして、曜の抱えてきたこの不安は梨子の東京行きがトリガーとなって、溢れ出していく。



第11話までの物語において、渡辺曜というキャラクターは衣装作りも、チラシ配りも、料理も出来る、実に器用な女の子として描かれてきました。大きな悩みもトラブルも抱えることなく、Aqoursの活動を支えてきたその姿は、普通の高校生として見るにはやや違和感を覚える人もいたかもしれません。


近くて遠い距離



このそつのなさは梨子の代役に抜擢されてからの練習風景でも表現されていて、何度も同じところでぶつかってしまう千歌に対し、「私が悪いの、同じところで遅れちゃって」「私が早く出すぎて、こめんね千歌ちゃん」と、遅くても早くても自分の責任だと曜は繰り返します。そして、千歌に梨子と練習していた通りのいつもと同じ歩幅で踊るように提案し、自分が「渡辺曜」ではなく「桜内梨子の代役」として踊れば、上手くいってしまうのです。



凄い能力ではあるけれど、でもだからこそ「自分」というものに自信が持てない。千歌に本当に見てもらいたいのは渡辺曜としての「自分」でした。「梨子の代役」として、成立してしまう現状に「これでよかったんだよね」と自分に言い聞かせてみるけれど、アイスさえも気軽に分けられなくなるくらいに悩み、「もしかして私と2人は、嫌だったのかな」という想いを鞠莉に打ち明けるまでに至った。


完璧な人間なんていません。誰の胸にも願いがあって、想いがあって、それが叶わなければ悲しい。ずっと隣にいた大好きな友達が自分よりも他の誰かを見ている。そのことに心が揺れる。


そんな感情は思春期の女の子にとっては、きっとごくごく当たり前の感情で、渡辺曜はそんな「普通の女の子」らしさを持つ等身大の高校2年生でした。




 
梨子ちゃんには「千歌ちゃんのそばには梨子ちゃんが一番合ってると思う」と自分の想いを吐露し、そして、千歌ちゃんも梨子ちゃんに「スクールアイドルは絶対曜ちゃんとやり遂げる」と密かに語っていた。



そういう事情を踏まえると、ようちかは本当に仲の良い幼なじみでありながら、幼いころからやりたいことが重ならず、だからこそお互いへの遠慮があって、お互いの本音の部分に割って入ることが憚られて、でも誰よりも近くにいた大切な存在だからこそ、お互いのことを心から想い合ってる、そんな関係性なのでしょう。

だからこそ、梨子ちゃんが彼女たちの本音を繋ぐ役を担ったわけで、第11話はようちか回というよりは結局のところ2年生組の絆を深める回という位置づけに持ってきているのが上手いなぁと思った次第。そして、曜ちゃんのあの涙と笑顔をみれば、それが今の2年生の3人にとって最高の関係であるのだろうと確信できるから、だからあの回は個人的に好きなんだろうなぁ。




以前、こういう感想を書いたけれど、千歌がやりたかったことを、この2人が語っていることには大きな意味がありますよね。「友情ヨーソロー」というサブタイトルが示すもう一つのポイントは、曜と梨子の関係が本当の意味で通じ合うに至るこの瞬間に集約されている。千歌の本当の想いを梨子が曜に諭すというのはやはりよかったと思います。




そして、最後に曜を救うのは他の誰でもない高海千歌自身から紡がれる言葉という2段構えなのがまた素晴らしかったなと。



「曜ちゃんと私の2人で」



悩める曜を本当の意味で解放出来るのは千歌しかいないんです。「曜ちゃんと私の2人で」――曜にとって、この言葉はどれだけの力があったでしょう。一番大切な人から今一番言ってもらいたいことを聞かされた曜。この瞬間こそが、ようやく本当の意味で彼女の願いが叶った瞬間だったのだろうと思うと目頭が熱くなるのは無理もない話。



加えて、ここで千歌は自前のリストバンドをつけており、梨子からもらったシュシュをつけていないんです。「想いよひとつになれ」のPVでも印象的に描かれるあのシュシュはどこにいても「9人で1つ」を象徴するシュシュ。それをなぜ、つけていないのか。


それは、今このシーンで強調したいことが「曜ちゃんと私の2人で」であり、曜が小学生の頃からずっと願ってきた「千歌ちゃんと一緒に夢中で何かやりたい」という想いへの答えがここにあるからでしょう。



9人で1つ



桜内梨子と通じ合い、高海千歌の想いを彼女自身から受け、曜の「千歌ちゃんと一緒に夢中で何かやりたい」という願いはついに叶ったのです。


そして、その曜の願いは今度は「9人で1つ」という想いに昇華されていく。ゆえに、その願いが叶った曜はシュシュをつけて千歌の元へと走り出します。曜がシュシュをつける演出の意味はきっとここにあるんです。


そして、その願いは千歌の想いでもある「みんなで手を取り合っていくこと」につながっている。想いはひとつになったのです。高海千歌が誘う「Aqours」を構成する9つのピースの最初のピースであったように思えた曜が、実は最後のピースとして「Aqours」に本当の意味での合流を果たすというのが美しい。あぁ、だから僕は11話が一番好きなんだろうなぁ...と改めて思った話でした。


4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (えつ)
2017-01-15 11:17:51
シュシュの演出にこういう意味を持たせているのか。すごい納得した
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Unknown (Unknown)
2017-01-15 12:11:39
9人が揃ったタイミングだからこそ再び曜ちゃんの願いについてもう一度疑問を投げる構図なのは良い着眼点。青春、一瞬の輝きをテーマにする作品らしい人間ドラマの美しさを感じる回だった
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Unknown (Unknown)
2017-01-15 16:32:42
ようちかには末長くお幸せになってもらいたい。切実に
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Unknown (カリスマ声優白書)
2021-02-24 17:24:15
四半世紀にわたる夢。広島東洋カープが25年ぶり7回目のセ・リーグ優勝。その余韻が浸る中での今回の放送。梨子抜きで、8人で予備予選に臨むメンバー。2年生・渡辺曜は梨子の穴を埋めようと必死に説得を申し出ます。それを受け入れ、猛特訓に励みます。一方優勝候補の大本命でもあるSaint Snow(セイント・スノー)は、北海道予選を順当に勝ち上がりました。その知らせにますます気合いが入るAqours。これはあくまで練習試合。小手調べにすぎません。次は全員で!と約束を誓い、梨子はピアノコンクールへ出発!どちらも負けられません。歌は「想いよひとつになれ」離れていても心は1つ。それは他のアイドルアニメも同じです。更なる高みを目指して。Aqoursは予備予選突破なるか?!「ようちか」の2人はすばらしい仲です。
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