銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

食欲とセンチメンタリズム

2009年08月31日 | のほほん同志Aの日常
旅の日記ほど、読みかえすのが恥ずかしいものはありません。

思わず赤面ものの、センチメンタリズムに溺れた、とぎれとぎれの書きなぐり。
その横に、こちらは几帳面に、3食きっちり記している「今日食べたもの」。

食べること、そして時おり物思いにふけること。
これが私の旅の2大要素のようです。

ですから旅先で何を食べるかは毎回、真剣勝負。
びっくりするほど美味しくて、連日通いつめた店もいくつかあるなかで、
忘れられない店として真っ先に思い出すのはイタリア、ミラノの場末のレストランです。
ミラノ名物、仔牛のカツレツを目当てに入ったこの店、料理は大ハズレでした。

ではなぜ、一番印象に残っているかというと…

――出会ってしまったからです。あの人に!

期待はずれの食事に、しょぼくれた気分でレジへ向かうと、カードはダメとのこと。
仕方がないので、店の隣の銀行へ向かいました。

両替を終え、回転ドアから出ようとしたとき、
ちょうど向こうから入ってきたその人とぶつかりそうになったのです。

最初、クタッと肌になじんだ黄色いポロシャツと、茶色いサングラス姿のその男性が、
あの大俳優だとはまったく気づきませんでした。

けれども彼が入ってきたとたん、
銀行内にも充満するイタリア特有のゆるい空気が、ピシッと緊張するのが分かりました。
支店長クラスのでっぷり太った行員さんが、恭しく彼を奥の部屋へと案内し…。
ただ者ならぬ雰囲気に、思わずポケーッとその後ろ姿を見送っていると、
カウンターの銀行員がつぶやくのが聞こえたのです。

「アル・パチーノ…」

えっ
今、なんて言った?

「リアリー?! アル・パチーノ?!」

そう聞くと若い行員の彼、そうか、極東のあんたも知ってるか、とばかりに
うんうんと嬉しげにうなずくではありませんか。

思わず舞い上がりそうになる気持ちに
覆いかぶさるようにやってくる後悔の念。 

感激。しあわせ。…けど、残念。
あんなに接近したのに、一瞬、目もあったのに、
惜しかった、握手したかった、喋りたかった…!!

「ゴッドファーザー、全部見ました。パート2が一番良かったです!」 

もっと話しこめるなら、
「でもパート3で、神に懺悔するシーンは納得いきません」 そう言いたかった。

まぁ、アル・パチーノにしてみれば、銀行の軒先でいきなり拙い英語で言われなくたって、
もう聞きあきた「ゴッドファーザー評」なんでしょうが。

その日は一日中、興奮状態。
なのに、感動を伝える相手がいないという
一人旅のつまらなさを味わいました。

そう、こんなときこそ、旅日記の出番です。

ミラノ、仔牛のカツレツ ×
の文字の横に、
情感たっぷりにつづられたアル・パチーノへの思い。

やはり赤面ものでした。


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