銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

山伏の寺の怖い話

2016年03月22日 | のほほん同志Aの日常

つい数日前まで、財布のなかにはけっこうなお札が入っていたはずなのに、
食べて、飲んで、おなかが減ったらまた食べて飲んで、をくりかえしていたら、
とうとうすっからかんになってしまいました。

そのときに思い出したのが、先週、三木へのツアーで訪ねたこのお寺。

伽耶院(がやいん)、といいます。

毎年10月10日には、西日本一円から
二百名近い山伏が集うという修験道の寺。





門をくぐってすぐの立て看板には、「入山料、おひとりにつき草引き十本」の文字。

この日は特別にお願いして本陣のなかに招き入れていただき、
ご住職よりじきじきにお話を伺いました。


「この寺は山伏の寺ということになってますが、山伏という職業があるわけやありません。
 皆さん、ふだんはご商売してたり、会社勤めしてたり、学校の先生やったりしてはる人たちです」


外はぽかぽか陽気なのに、本堂のなかはひんやり薄暗く、そこに響くご住職の声。


「修験道では年に何度か、大峯詣りいうのをします。
 奈良の吉野から20㎞ほど先の大峯山まで、背骨のように走る山脈を数日かけて歩くんです。

 一日二日なら、誰でも歩ける。
 でも三日四日すると、足が動かんようになります。
 
 なんのために、そんなしんどいことするかいうたら、
 自然の真ん中に身を置くことで、ふだんの生活と違う、異次元を感じるため、いうことになりますかなぁ。

 起床は3時、出発は4時。
 昼めしに持って歩ける弁当も決まってまして、
 にぎりめし二つと塩こぶひとかけら、梅干しひとつ、これだけです。

 朝の4時に歩きはじめますから、8時にはもう腹が空きます。
 そこでまず、握り飯をひとつだけ食べていい。
 また歩いて、今度は昼ごろ、もうひとつの握り飯を食べるんですが、
 そこでぜんぶ食べてしもうてはいけません。
 必ず、半分、残しておく。

 というのも、その日の小屋に入る手前に、必ず、足がかからんほどに急な坂なり崖がある。
 見ただけで、足がひるむ。
 そこへ向かう前に、必ず腹のなかに何か入れんと体が動きません。
 そのときのために半分のこしておくんです。

 なかには腹がもたんと、ほとんど食べてしもてる山伏もいる。
 それでも必ず、米の数粒は残してあります。
 それが、自分はまだ食べ物を持っている、という支えになる。

 米のわずか数粒に、塩こぶのかけら。
 そして梅干しの種。
 もういっぺんしゃぶったら、ちっとは味がするかもわからん。
 そんなもんでも、まだ食べ物があるという気持ちの支えになるんですなぁ。

 そんなとき、山伏どうしで話しますのんや。
 こんな話、家に帰って嫁にゆうたところで、とうてい信じてもらえへんやろなあて。

 山での米数粒、あれを食べ物というんなら、
 家でふだん食べてるもの、あれはいったい何なんやと。

 家では、きのう炊いた飯? そんなん犬にくれてやれ、てなもんですやろ。
 なに、犬も食わへん? そんなら捨てたらええやないか、とこうなる。

 
 歩きどおしやから、もちろん、のども乾く。
 そんなときは、山のなかの、落ち葉の間にわずかに溜まった水を飲む。
 ボウフラもわいてます。
 それでもこうやって掬うて、手のなかのボウフラに、悪いなぁ、ごめんなぁ、言いながらそれを飲む。
 その水で、生き返るんです。

 これが水なら、あのふだん飲んでる水は何なんやいうことです。

 水道の蛇口ひねったら、ジャージャー水が出る。
 水が出えへんかったら、水道局に電話して文句いう。
 ほしたら、水道局の人はすんません言うて謝りますやろ。
 あの水は、いったい何なんやと…」


皆さんがどう感じられたかは分かりません。
でも、私はなんだか怖かった。

大峯詣りの厳しさが、ではありません。

ご住職のおっしゃるように、それが水で、それが食べ物なら、
ここ数日、気前よくお札と引き換えに、
私が飲み食いしていたものは、いったい何だったのでしょう。

だいたい、何を飲んで何を食べたのかすら、あまり覚えていないのです。





※銀ステバザーのお知らせ

3/25(金)~27(日) 10:00~17:00

会場:銀のステッキ内

みなさまのご来店をお待ちしております。

詳細は、こちら、、、


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