「原子力というものに手を染めてしまえば、どうしても放射性物質を作ってしまう、わけです」と京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さん。
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2012年7月19日(金)、小出裕章氏が毎日放送「たね蒔きジャーナル」に出演。
20120719 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章
六ケ所の再処理工場が33京ベクレルの放射性物質を放出する仕組みについて説明しています。
千葉「京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんです。小出さん、今日もどうぞよろしくお願い申し上げます」
小出「よろしくお願いします」
千葉「今日は毎日新聞論説委員の池田昭さんと一緒にお話を伺います」
小出「はい」
池田「あ、よろしくお願いします」
小出「はい。池田さんよろしくお願いします」
池田「どうも」
千葉「(咳払い)。さて小出さん、先週このコーナーでですね。」
小出「はい」
千葉「え…リスナーのかたから頂いた質問で、青森県六ケ所村の再処理工場から環境に出される放射性物質が、めっちゃめちゃ多い、ということで。年間で、33京ベクレルもあるという、お話について、伺ったんですけれども」
小出「はい」
千葉「お…平均的な原子力発電所から環境に出される放射性物質の1年分を、この再処理工場から出される量は1日で抜いてしまうということでしたよね」
小出「そうです」
千葉「まあ、再処理工場はそれぐらい多くの放射性物質を環境に出すというお話で。わたくしめっちゃめっちゃ驚いたものですから、もう少しこのことについて今日は詳しくお伺いしたいと思っております」
小出「はい」
千葉「で、早速なんですが」
小出「はい」
千葉「なんでですね。再処理工場はそんなに放射性物質が出るんですか」
小出「はい。再処理工場という名前を聞くとですね。普通のかたの中には、原子力発電所が生み出す放射能をなにか処理してくれる、消してくれる工場なのかと考えるかたが結構、いらっしゃる、ことに私は気が付きました」
千葉「はい」
小出「しかし、再処理工場というのは、え…もちろん放射能を消したりすることができるわけではありませんで。やることは、プルトニウムという、長崎原爆の材料になった物質を、ただ取り出すということをやる工場、です。それで、ちょっと皆さんにイメージを持っていただきたいのですが。原子力発電所でウランを燃やしていますが、そのウランは、え…直径1センチ高さ1センチ、という、まあちょっと大きめの枝豆の豆のようなですね、ぐらいの大きさの瀬戸物に焼き固めてあります」
千葉「はい」
小出「それを、燃料棒というまあ細長い物干し竿のようなものの中にずらりと並べて詰めてある、のです。で…運転中はその、ウランが燃えて、核分裂生成物いわゆる死の灰ができていくのですが。それと同時にプルトニウムという、長崎原爆の材料も、できていく、というそういう物理的な性質を持って、います。」
千葉「ええ」
小出「で…原子力発電所が長い間運転していると、え…燃料のまあ焼き固めた瀬戸物の中に、核分裂生成物とプルトニウムがどんどん溜まってきますし。燃え残りのウランもまた残っているという状態で、え…いわゆる使用済みの燃料になります。で…通常運転中は、それらすべてが燃料棒という金属の鞘の中に閉じ込められている、ことになっていますので。原子力発電所から出てくる放射能は、基本的にはあまり多くないという状態にした、のです。」
千葉「はい」
小出「え…ただし、再処理という作業の目的は、プルトニウムを取り出すということ、なのです。一体じゃあ、瀬戸物に焼き固めた、う…まあウランの塊の中から、プルトニウムをどうやったら取り出すことができるのかと、いうことを皆さんに想像して欲しいのですが。まず、その…金属の棒の中に入っていたら、全く手をつけることができませんから。金属の棒を、再処理工場で一番初めてちょんぎってしまいます。」
千葉「はい」
小出「つまり、せっかく放射性物質を閉じ込めていた金属の鞘をバラバラにしてしまって、瀬戸物をむき出しにするという作業から、作業が始まるのです。次に、瀬戸物の中には、え…核分裂生成物とプルトニウムと燃え残りのウランが渾然一体となっ…て、まあ1つの瀬戸物の塊を作っているのですが。その中からプルトニウムだけを取り出すと、いうことをしようとしたら、どうしたら良いでしょうか」
千葉「もう、バラバラ…に、しちゃうんですか」
小出「はい(苦笑)。まあバラバラに、まあ例えば瀬戸物を砕くという事もいいかもしれませんけど。砕いたところでいずれにしても、ウランと燃え残…燃え残りのウランと、核分裂生成物とプルトニウムが渾然一体となった、ただただまあバラバラになった瀬戸物になるだけなんですね。ですからどうするかというと。瀬戸物をどろどろに溶かして液体にすると言っているのです」
千葉「はい」
小出「皆さん家庭の茶碗とかですね、お皿とか箸置き、それをどろどろに溶かすということが、想像できるでしょうか」
千葉「いやあ……、あんまり想像できませんよね」
小出「ですよねえ。え…要するに大変まあ、困難なことをやろうとしているわけで。濃度の濃い硝酸を温度をかけて温めて、え…その中で瀬戸物をどろどろに溶かしてしまうという、のです。んで、その上で、薬品を加えていって、燃え残りのウランと核分裂生成物とプルトニウムをケミカル、まあ化学的な精査…操作をして分けるというのが再処理という作業、なのです。で、原子力発電所ではせっかく瀬戸物の中に閉じ込めていた、あるいは燃料棒の中に閉じ込めていたという放射能を、全部バラバラにして剥き出しにして液体にして分離するというのが、再処理という作業なのです。もう途方も無い危険な作業ですし、放射能が外に出てきてしまうということはもうどうしようもないことなのです。」
千葉「んー、せっかく閉じ込めていた、その放射性物質、放射能を、そうやってバラバラにすることによって」
小出「はい」
千葉「外に出しちゃうということなんですか」
小出「そうです」
千葉「え……でも、そんなにたくさん、環境に出てしまうということを国は認めてるんですか」
小出「もちろん、です。え…元々この再処理という作業は、はじめに聞いていただきましたように、長崎原爆を作る材料だったプルトニウム、をどうしても取り出さなければいけないという軍事的な要請で始められたの、です」
千葉「ほう」
小出「んで…軍事的な要請というのは、安全性も経済性も無視できると、いう、条件がありますので、ようやくにして成り立った技術なの、です。え…ただ日本というこの国は、え…取り出したプルトニウムを原爆にするのではなくて。また、ね…原子力発電所の燃料に使うんだと、いうことを、言って再処理ということをやろうとした、のです。え…でも軍事的な目的でやろうと、商業的な目的でやろうと、やることは同じなわけですから、膨大な放射性物質が環境に出てくるということは避けられ、ないことになった、のです」
千葉「え、でも小出さん」
小出「はい」
千葉「33京ベクレルなんてものすごい量の、まあ放射性物質が出てくるわけですから」
小出「はい。それはあの、クリプトン85というたった1種類の放射性物質でそれだけ、です。その他にもトリチウムであるとか、炭素14であるとか、もう様々な放射性物質を、環境に出すことになります」
千葉「はい。これは、出すのを防ぐ技術ってのは今、無いんですか?」
小出「え…クリプトン85というのは、希ガスと私達が呼んでいる放射性物質でして、完全なガス体で、どんなことをやっても他のかご…物質と化合しないし、フィルターというものにもくっつかないという、そういう特殊な性質をもって、います。え…そのため再処理工場側は、クリプトン85に関しては、一切補足しないで全量を放出すると、言っています。」
千葉「うーん」
小出「ただし、やり方はあるのです。例えばえ…クリプトン85というその…気体…、まあガスなのですけれども、マイナス153度まで冷やすことが出来れば、液体に出来ます」
千葉「はい」
小出「液体に出来ればもちろん閉じ込めることが出来る、わけですから、え…お金をかけて、やろう、やる気になればできるのです。ただし、そんなことはしないという、ように再処理工場が言っています」
池田「うー…」
千葉「お金かかるからですか」
小出「お金がかかるからです。え…すでに国の方は、クリプトン85を閉じ込める技術を開発するために、確か160億円だったと思いますが、研究開発資金を投入しました。そして出来るということは分かった、のですが。実際にやろうと思うとお金がかかるし、仮に閉じ込めたとしてもそれをずうっとお守りをするのも大変なので、もう初めから放出してしまうということにしました」
池田「あの小出さん。」
小出「はい」
池田「先日来ですね、」
小出「はい」
池田「あの…福島原発、からですね」
小出「はい」
池田「あの…たとえその使用済燃料棒ではないとはいえですね。あの、燃料棒の取り出しの映像が映ってますよね。」
小出「はい」
池田「あれ見ても、多くの人達が見たと思うんですがかなりゾッとする話なんですが」
小出「そうですね」
池田「それをどろどろにしちゃうということになるとですね」
小出「はい」
池田「これはかなり愚かな、行為の繰り返しと」
小出「はい。わ、わ、私は…やるべきでないと思います」
池田「うーん…」
千葉「ん……」
池田「ですよね…」
小出「はい」
池田「あれでもぞっとするような映像を見せつけられてるような気がするんですね」
小出「そうですね。まあ原子力というものに手を染めてしまえば、どうしても放射性物質を作ってしまう、わけです」
池田「そうですね」
小出「はい。大変な困難な問題をこれからずうっと抱えていくことになります」
千葉「分かりました。小出さんどうもありがとうございました」
小出「はい。ありがとうございました」