石原延啓 ブログ

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展覧会鑑賞&1Q84

2009-10-14 11:07:55 | Weblog


 9/18 久しぶりに展覧会へ。まずミズマアートギャラリーへ友人のイラン人アーティスト、サラ・ドラタバディのインスタレーション。知人に初めて紹介された時、その知性と柔らかい物腰、そして「物凄い」美貌から「嗚呼、イランにもお嬢様がいるんだー」と妙に(?)感心したものだ。
しかしながら反政府的な発言も厭わないイランでも有名な反骨作家であるお父上の血は争えないもので、現在政治的に争乱状態にある母国の民衆の叫びを自由の運動の象徴的な色であるグリーンを使って気合いの入ったインスタレーションをしていた。ミズマさんのところは突発的に普段とは毛色の違う作家を扱うので目が離せないところだ。ところで美人のアーティストが多いと感じるのは気のせいか?

 そのまま初台のオペラシティーギャラリーへ移動。鴻池朋子さんの作品に関してはグループ展やらワークショップの記述やらを断片的に見ていて非常に興味をそそられていたものの、前回のミズマでの展覧会を見逃したりで、なかなかまとめて本物を観る機会に恵まれなかった。今回会期の終わりにやっとこさ足を運べた訳だが結論としては期待以上にインパクトのあるものだった。絵本に携わる仕事をされていたとのことで、作品から物語性を強く感じる。また、日本画の技法も効果的。アニメも良い。但し、私もアニメ制作に興味を持っていたのだが「くる日もくる日もドローイング地獄で参った」とご本人の解説があってドン引き。私にゃ無理だ。当たり前だが素晴らしいものにはそれなりの労力がかかっている。個人的には本についてのドローイングのシリーズが好きだった。そんなに観て歩いている訳ではないのですが、久しぶりに良い展覧会を観たと思う。


 村上春樹の新作「1Q84」を読み終える。文庫が出るまで待つつもりが、仲の良い画商さんに勧められたのと、札幌に日帰り出張があったので空港で購入した。単行本は高い、重い、保管がかさばる。
作家自身があれだけ真摯に調査したオウム事件が咀嚼、消化されてこのようなかたちに表現されたのかと思うと興味深い。
「アンダーグラウンド」の作者後書きでは、カルトに身を委ねることは個人の物語の喪失であるというようなことが書かれていたが、同時にカルトは決してあちら側で起こった特殊な出来事ではなく、こちら側にいる私たちも持ち合わせている性格のものとの記述もあった。特にあちら側とこちら側と明快に分けたストーリーに落とし込んで安心しようとするメディアに対して作者は批判的だったように思う。
今回の作品では「個人の物語」は本来社会全体の流れとかシステムみたいなものから完全に独立しているはずのものだ、というようなことが描かれていたように思う。そしてその個人の物語は常に大きな流れの中に埋没してしまう危機に瀕している。しかしながら主人公のハードボイルドな女の子の芯なるものが純愛だったっていうのは村上春樹らしくなくて驚きだった。いずれにせよ、ここ数年の近作の中では一番面白いと思いました。

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