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つれづれ

思いつくままに

思い出

2024-05-21 12:58:11 | 

「思い出は一人で抱くものではなく誰かとわかちあうもの。」
きのう('24年5月20日)の朝日新聞『折々のことば』に、こう記されていた(シドニー・スミスの絵本『ねえ、おぼえてる?』から)。

ほんとうに そうだと、思う。
ひとりでは、思い出は作れない。
あのとき ああだったね と 語り合う人がいなければ、「出来事」は「思い出」にならない。
たとえ「いやな出来事」でも、話して「そうそう そうだったね」と返してくれる人がいれば、「思い出」になる。
「そうそう そうだったね」と返してくれる人がいなければ、その「出来事」は 単なる出来事に過ぎず、流されて いつのまにか消えてしまう。

去年の10月、幼友達とふたりで 安乗岬を訪ねた。
このブログに 先に『安乗岬灯台』という表題で投稿したら すぐに彼からコメントが送られてきて、何回かのやり取りの末 じゃぁ安乗岬へいっしょに行こうや ということになった。
小学校・中学校のころ ふたりで何度か行ったことのある安乗岬へ、65年ぶりに訪ねたのだ。

あいにくの雨模様で 岬をおとずれる人は少なく、白く四角い安乗埼灯台は ふたりで独占できる状態だった。
雨脚が激しくなり、安乗岬園地休憩舎で 一休みした。
客のまばらな店内、灯台を正面に眺められるスタンド座席に ふたり並んで坐る。
大きな窓ガラスに雨がうちつけているものの、見通しは悪くない。
ここの名物の 土産用の「きんこ芋」をつまみにして、ドリンク一杯で小一時間ほど 語り合った。

その幼馴染の、突然の訃報。
小学校のころ、中学校のころ、ふたりで見た、白く四角い灯台。
ついこの間、ふたりの目の同じ方向に佇んでいた、白く四角い灯台。
もう ふたりで、あの灯台を話題に 語り合うことはない。
ふたりの思い出は、消えた。

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『生きとし生けるもの』

2024-05-12 17:05:19 | 

連休の最終日の夜、久々に 骨のあるテレビドラマを観た。
テレビ東京開局60周年特別企画ドラマスペシャル、『生きとし生けるもの』である。

「医者と患者 男二人のロードムービー」、北川悦吏子の脚本、妻夫木聡と渡辺謙の主演 となれば、見逃すわけにはいかない。
この思いに違わず ロードムービーとして見ごたえのあるドラマに仕上がっているばかりでなく、北川悦吏子の「死生観」に自分の老いを重ねて 様々な感情が触発された。

余命宣告を受けた「患者」の「おっさん」こと成瀬(渡辺謙)は、窓はあるが締め切った病室の白い天井ばかり見て 余命の日々を送っている。
彼は、「とっちゃん坊や先生」こと陸(妻夫木)から「死ぬまでにしたい10のこと」を書くように メモ用紙を渡されている、が 何も書けない。
「坊や先生」は たぐいまれな才能を持った外科医だったが、あることをきっかけにメスを握れなくなり 精神的に追い詰められ、外科を追われて内科医となっていた。
この白紙のメモを見て残念がる「坊や先生」に「おっさん」は、空気が淀んでいる病室に気づいて「風に吹かれたい」と言い出した。
ここから、バイクとキャンピングカーを乗り継いだ「医者と患者のロードムービー」が始まる。
二人とも、死ぬ覚悟の 旅が始まる。

どっぷり夜の闇に包まれた、バスのようなキャンプハウスの中の男、ふたり。
「坊や先生」が カバンから二本のアンプルを取り出して、「おっさん」の前のテーブルの上に置く。
一本は すぐに楽になる薬 つまり死に至る薬、もう一本は しばし楽になる薬 つまり強力な鎮痛剤、と「坊や先生」。
たぶんカモフラージュであろう「塩化カリウム」のラベルを貼った 安楽死へのアンプル注射液 これを「おっさん」は、「怖いような 憧れるような、生きるか死ぬかを選べる魔法薬」と呼んだ。

ドラマの中盤で明かされるが、このアンプルは 「坊や先生」と「おっさん」のお守りなのだ。

「生きる権利もあるなら 死ぬ権利もあるだろう。いや 生きるのは、義務か」と「おっさん」。
「おっさん」は 続ける。
「病棟の奥の部屋、自分で飯も食えず、全身 管だらけ、胃ろうで流し込んで起き上がることもできず、おしめ当てて、そこまでして 生きたいか、あれは 本人の意思なのか」
おもむろに 口を開く「坊や先生」。
「いえ そうとも・・・ 医者は 命を助けたい生き物です。でも 僕は虐待ですらと思ってます。・・・ 成瀬さんの生まれたころより 医学の進歩によって、格段に平均寿命は延びました。でも それってほんとに 人々を幸せにしたでしょうか。」 

このあと、このドラマ最大の感動シーン、山の向こうのかなたから 昇る朝日、それを眺める二人の男の 輝く顔と顔。

北川悦吏子のドラマには、どうしてこうも、松任谷由実の歌が流れるのだろう。
このドラマにも、『恋の一時間は孤独の千年』を「坊や先生」が 口ずさむシーンがあった。


この齢になると 自分も あんな「魔法の薬」をお守りとして欲しくなる、悪いことだろうか。
先端医療は 若い人には、間違いなく必要だろう。
だけど、緩和ケア医療も 年寄りには、絶対に必要なのだ。

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