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つれづれ

思いつくままに

久賀島(ひさかじま)

2019-10-27 17:46:44 | 

150年前、浦上四番崩れという事件があった。
カトリック信徒への 惨たらしい弾圧事件である。
いつの時代も、戦場だけでなく 集団となれば、あるいは権力をもてば、何をしでかすかわからないのが人間である。
そのことを如実に示す事件であった。

長崎港から西へ100km離れた五島列島にも、崩れの狂気が吹き荒れた。
世にいう「五島崩れ」である。
それは、久賀島から始まった。
大小140あまりの島々が連なる五島列島の、真ん中あたりに浮かぶ島。
1000個分の甲子園球場くらいの面積の、北に狭く口を開けた湾が深く食い込む、馬蹄形の島である。

この湾の奥底の松の浦で、42名もの死者を出す過酷な拷問が繰り返された。
わずか6坪ほどの牢屋に、200余名のキリシタンが押し込められた。
なんと 畳一枚に15人以上が、8か月間 閉じ込められたことになる。
多くは、人の上にせり上げられて足は地に着かず、身動きすらできない状態で、飢えと渇きと蛆虫にさいなまれて死んでいった。
これをのちに、窄殉教(さこじゅんきょう)と呼んでいる。
松の浦には いま、牢屋の窄殉教記念聖堂が建てられている。

迫害を乗り越えた久賀島の人々や子孫たちは、禁教の高札撤去後、貧しい生活の中から、金銭面や労力奉仕の犠牲を払って、念願の「天主堂」を建てた。
島の玄関 田ノ浦港近くにある、明治14年建立の『浜脇教会堂』である。
この教会堂は 老朽化に伴い、昭和6年、真っ白な鉄筋コンクリート造りに建て替えられた。
そして 旧教会堂は、東海岸の 車の通る道すらない わずかな平地の集落、五輪(ごりん)地区へと移された。
それは、五輪地区の信者たちの たっての願いであった。

この木造平屋の小さな「天主堂」は いま、たった2軒の五輪集落に、森の木々に隠れるように、『旧五輪教会堂』として、ひっそりと佇んでいる。
数ある五島の教会堂の中で、この教会堂を、私はいちばん 崇高に感じ入っている。
海上タクシーで訪れた、30年ぶりの再会であった。



 

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大安寺の祈り

2019-10-11 20:24:44 | 

かって南大寺と呼ばれた寺が、東大寺や西大寺などの大寺がひしめく奈良にある。
南都七大寺のひとつ、大安寺である。
寺によると、聖徳太子が平群郡額田部に熊凝精舎(くまごりしょうじゃ)を創建したことに始まる。
やがて百済大寺、高市大寺、大官大寺(おおつかさのおおてら)と名を変え、平城京に移って大安寺となった。
由緒ある官立寺院であり、その役割の一つが、悪病難病封じであった。

JR桜井線の京終(きょうばて)駅から西へ6千歩くらいに位置する大安寺は、高さ70mを越す七重塔2基を擁する大寺であった昔の面影はない。
が、威厳あるたたずまいで、今もひっそりと古を伝えている。
のんびりした、ほっこりする いい雰囲気の境内である。

いま、ふだんは御簾がかけられて見ることのできない本尊十一面観音菩薩立像が公開されている。
この秘仏の前で 家内と二人分の「がん封じ」を祈祷してもらった。
像高1.9mの穏やかな面差しの この秘仏に祈れば、がんの病など近寄るはずがない、そんな安心感に浸れた ひと時であった。



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那須高原の藤城清治美術館

2019-10-01 14:14:39 | 

新居浜に住んでいた頃、季刊の『暮らしの手帳』を欠かさず家内は、登道の明屋書店で買い求めていた。
半世紀も前のことである。
私も興味深く愛読していたので、『暮らしの手帳』に藤城清治のモノクロ影絵が連載されていたのを、うっすら覚えている。
もっとも、藤城清治という名前は、藤城ファンの家内から最近聞き知ったのだが…
那須高原に藤城清治美術館があることを旅雑誌で知って、元気なうちに訪ねてみたいと家内が言い出した。
意を決して、一泊二日の旅に出た。

影絵というのは、バックライトがあって初めて生かされる。
那須高原にあるこの劇場型美術館は、影絵のこの本質を熟知した設計によって、印刷物で見る藤城影絵よりはるかに印象的な作品をみせてくれる。
影絵にちょっぴり抱いていた侮りが、館内をめぐるうち、心が震えんばかりの感動と化していった。

はるばる来た甲斐があった。
藤城氏がこの那須高原に美術館を作りたかった理由も、よく理解できた。
藤城影絵を那須高原で味わえて、幸せであった。

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