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つれづれ

思いつくままに

山上の垂訓

2011-12-26 11:26:50 | Weblog
朝日新聞に、毎朝 載っていた「大震災被災者数」の記事が、12月23日で途絶えた。
年末記事モードに入った、ということであろうか。


この小さな記事が途絶える最後の日に掲載された、これも小さなコラム「ひととき」を読んで、ジンときた。

<3490人。13日の朝刊にあった、東日本大震災の行方不明者の数だ。死者は1万5841人。私は毎日、この数字を確かめて新聞を読む。行方不明者が減り、死者として数えられた日は、名前がわかったことにほっとする。・・・>

同じ思いで「大震災被災者数」を見てられる方がいるんだ と、投稿された広島市の主婦 足立都子さん(73歳)にお会いしたくなった。

12月23日掲載の「大震災被災者数」によれば、行方不明者数3469人。
足立さんが投稿された13日から、21人の方が 死者に数えられたことになる。

足立さんも 欠かさず読んでられた「南三陸日記」や「宮古日記」に書かれている人たち。
足立さんの言葉を借りれば、
『そこには、前向きな生き方や笑顔がある。助かった命。助けられた命。そして助けた命がある。』


「大震災被災者数」を見つけたとき、‘山上の垂訓’が なぜか頭に浮かんでくる。
ぼくは、キリスト教徒ではない。
キリスト教徒でなくても、‘山上の垂訓’を知る人は多いと思う。

   こころの貧しい人たちは、さいわいである。
      天国は彼らのものである。
   悲しんでいる人たちは、さいわいである。
      彼らは慰められるであろう。
   義に飢えかわいている人たちは、さいわいである。
      彼らは飽き足りるようになるであろう。
   平和をつくり出す人たちは、さいわいである。
      彼らは神の子と呼ばれるであろう。
   義のために迫害されてきた人たちは、さいわいである。
      天国は彼らのものである。

勘違いだったら、いけない。
失礼なことを言っているのかも と気にかかるのだが、行方不明者が減ったとき、ぼくは なぜかこの‘山上の垂訓’が頭に浮かぶのだ。


足立さんは、年賀状に薄く紅色で はがき一面に「命」と書かれたそうだ。
ぼくは まだ、どう書いたらいいのか、迷っている。
      
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2011-12-21 13:24:08 | Weblog
冬の雲を見ることって あまりない、と思ってました。
冬空を見上げても、寒くて ゆっくり雲のゆくえを追う気分にはなれませんよね。

ところが、ぼくとおんなじような‘変わりもん’が いっぱいいました。
<冬の雲>で検索したら でるわでるわ、画像がいっぱい。

と いうわけで、冬の雲を撮った ぼくのつまらない画像は抜きにして・・・
とてもとても すてきな詩、八木重吉の「雲」という詩を知ってほしくて、投稿します。


      雲

   くものある日
   くもは、かなしい
   くものない日
   そらは、さびしい

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カレンダーと豆腐

2011-12-19 18:42:14 | Weblog
年末のこの時期になると、来年のカレンダーが気になってきます。
どのカレンダーを どの場所に掛けようか と、クルクル巻くのがうっとうしく感じながら、品定めに 自分の美意識を試しているようなところがあります。

品定めを終え 古いカレンダーと掛け替えながら、向田邦子の随筆『豆腐』の感覚を反芻しています。
そして、定番のように、『豆腐』から知った 吉屋信子の句が浮かんできます。
   手のつかぬ 月日ゆたかや 初暦


間違ってはいけないので、このブログを投稿する前に、『豆腐』を読み返しました。
出だしは、こうです。

<古いカレンダーをはずして、新しいものに掛け替える。
 感慨といえるほどご大層なものではないが、やはりご不浄のタオルを取り替えるのとはわけが違う。
多少しんみりした手つきになって、古いカレンダーをすぐに紙くず籠に叩き込むには忍びなく、めくって眺めたりしている。>

どうして、カレンダーと豆腐が結びつくのか。
その引きだしのうまさに、向田邦子という作家の感覚に 惚れぼれしてしまいます。

向田さんは、日付けの下が四角いメモになっているカレンダーを使っていました。
この四角の一区切りが、幼いころの記憶、豆腐屋の軒先で見た豆腐一丁と結びつくのです。
大きな水槽に浮かぶ豆腐のかたまりに、豆腐屋のおじさんが包丁を入れる。
白い大きな塊りは、一丁ずつの豆腐に切り分けられて、ふわりと水中に浮かびます。
それが、向田さんの中で「一日」なのです。

<気ばかり焦ってうまくゆかず、さしたることもなく不本意に一日が終わった日は、角のグズグズになった、こわれた豆腐を考えてしまう。
 小さなことでもいい、ひとつでも心に叶うことがあった日は、スウッと包丁の入った、角の立った白い塊りを、気持ちのどこかで見ている。>

向田さんは 子どもの頃、豆腐が苦手でした。
<色もない、歯ごたえもない、自分の味もない。
 ぐにゃぐにゃしていて、何を考えているのかはっきりしない。
自分の主張というものがない。
用心深そうであるが、年寄り臭くて卑怯な感じもする。
人の世話もやかない代り、余計なことは言わず失点もない。>
この手の人間が 嫌いだったのでしょう。
そういう 男気な向田邦子に、魅力を感じます。

その向田さんも、歳を重ねて こう思うようになります。
<若気の至りで色がないと思っていたが、豆腐には色がある。
形も味も匂いもあるのである。
 崩れそうで崩れない、やわらかな矜持がある。
味噌にも醤油にも、油にも馴染む器量の大きさがあったのである。>


さて ことし一年、ことが多すぎました。
尖った心と心が、悲しい響きをきしませることが、あまりにも多すぎた。
世相に流されまいと 背筋を伸ばせば、後頭部をガツンと梁で打つような、息苦しさです。
その反面、人の心の中に こんな菩薩が住まわっしゃるのかと、人の情けの暖かさに身が震えました。

向田邦子の気づきには 遠く及びませんが、わたしも歳を重ねて 多少考えるところができました。
人間の営みには、ヴィシェヌ神だけでは済まぬ部分がある、シヴァ神ともうまく折り合いをつけていかねばならぬ。
豆腐の器量が必要なとき、ということなのでしょう。

それでも 向田さんは、随筆『豆腐』を、前を美しく思い描く気持ちを失わない句で 締めくくっています。
これも、吉屋信子の句です。
   初暦 知らぬ月日は 美しく
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愛を伝えられない大人たちへ

2011-12-15 10:51:26 | Weblog
「愛を伝えられない大人たちへ」
これは、映画『RAILWAYS』パート2のサブタイトルです。

この映画の主人公、定年まぢかの鉄道運転手 滝島徹(三浦友和)に、‘似たもん’に感じる共感を覚えながら見てました。
この手の男は、どうしてこうも堅パンで、愛情表現がヘタクソなんでしょうね。
ユーミンの歌うエンディングソング「夜明けの雲」の最期まで、座席に座ったままでした。

この映画は、熟年夫婦の物語です。
互いのことを思いながらも 衝突してしまう、長い間夫婦をしてきた人は ほとんどみな、そんな経験者でしょう。
その衝突が 修復できるか否か、そこが問題です。
男も女も、自分が あるいは連れ合いが 定年を迎えるという時期が、こういう衝突の ひとつの大きな山場になるのは、間違いありません。
この映画に、その山場にどう対するか のヒントが、見つかるかもしれません。

ただ ぼくは、ちょっと違う見方をしていました。
この映画のプロデューサーも 脚本家も 監督も、みんな男性です。
この映画は、「愛を伝えられない男」への哀歌ではないか。

富山地方鉄道『稲荷町?』駅構内で、滝島徹と新米運転手、運転手になることが夢だった小田友彦(中尾明慶)とが、積み上げられた古い枕木に腰かけて、初めて本音を語り合うシーン。
滝嶋が、滝嶋を運転手の鑑と尊敬している小田に、こう述懐します。
   ・・・ほんとはカメラマンになりたかった。
   おやじが早く亡くなって、食うていくのに運転手が手ごろだったというに過ぎない。
   けれど いまは、運転手になってよかったと思っている。・・・

高度成長期の日本に勤労者として生きた男なら ほとんどみな、会社人間だったのではないでしょうか。
一生懸命 会社のために働く、そうすることが、愛する家族を支える自分の役目だと。
自分がなりたいと思った職業に就いた男なんて、一握りじゃなかったでしょうか。

この映画で、こういう男を 決して礼賛などしていません。
憐れな男として 映し出しています。
それでも なお、就いた仕事には とことん真剣に向き合ってきた滝島徹を、否定していないと思うのです。
そこに、この映画の救いがあった。
滝島徹を、いとおしく思いました。

三浦友和は、いい役者さんになりましたね。
大好きな女優さん余貴美子が、奥さん役で幸いでした。


ところで トリビアな話ですが、元京阪電車のテレビカー車両が映っていました。
懐かしかった。
あの車両が いまだ現役で働いていることに、ちょっと励まされました。

元京阪電車のテレビカーのように、滝島徹も定年後、運転手としてもうあと数年は現役で働くことがわかって、うれしい映画の終わり方でした。
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京都会館への思い

2011-12-14 09:32:07 | Weblog
京都でいちばん好きなスポットは?と問われれば、躊躇なく わたしは「岡崎公園周辺」と答える。
その理由はあり過ぎるが、わたしの場合は 一言でいうなら「若き日の思いでの地」ということになる。
多くの京都を愛する人々にとって、この地域は かけがえのない場所だと思う。


数少ない 幼いころの記憶に、いまは美術館別館となっている建物の玄関前広場がある。

京都会館中庭の奥に追いやられているが、記憶では 広々とした空間に建造物‘美術館別館’だけが点在していた。
当時は、‘岡崎公会堂’と呼ばれていたらしい。
この建物の前の広場には、背と鼻の高い 独特の匂いのする外国の兵隊さんがたくさんいて、どこか違う国のようであった。
‘岡崎公会堂’を含む広大な岡崎公園周辺は、GHQに接収されていたのだ と、後に知った。

その玄関の階段に、GIときれいな日本女性が坐ってキッスをしていた。
強烈な印象の記憶である。

不快という感情とも違う。
建造物‘美術館別館’に対する冒涜、そんな訳の解らない怒りのような感情であった。
子ども心に 建造物‘美術館別館’は、だいじなだいじな 犯すべからざるシンボルだったのかも知れない。

あれはまだ、小学生の頃だったと思う。
その‘美術館別館’が、妙ちくりんな建造物で隠れてしまった。
広々とした空間も、どこかへ消えた。
妙ちくりんな建造物『京都会館』は、あのとき 私にとっては間違いなく、邪魔もんだった。

高校生の終わりころ、将来の夢は建築家だった。
京都会館が、あこがれの丹下健三の先生のような建築家の設計だと知って、わたしの中で京都会館が輝きだした。
いい加減なものである。
二条通りから東に向かってよくよく見ると、京都会館は 事実、疏水によく似合っている。
まるまるコンクリート肌の懐深い庇が、東山を背景に アンバランスに美しいのだ。
これを設計した前川國男という建築家は すごい人だ と、建築のなにかも判らぬままに、京都会館のファンになってしまった。

教養部時代は、京都会館の平安神宮道を隔てた東側にあった屋外バレーコートで過ごす時間が長かった。
この‘ホームコート’からの角度の京都会館も、なかなかの眺めである。

マントヴァーニー、ヘルムートツァハリアス、ビリー・ヴォーン楽団・・・
二条通りに面した会館事務所の前に並んで、なけなしの小遣いをはたいて これら演奏会のチケットを買った。
市民落語会、労演、それらの催しがはねたあと、夕ぐれの東山を背に 疏水を渡る時の、一抹のわびしさ・・・

岡崎公園周辺の風景として、わたしの中で京都会館は もう、切り離しては考えられない存在となっていた。


京都会館が建て替えられるかも・・・といううわさは、だいぶ前から耳にしていた。
ロームが 50年分の命名権を52億5千万円で買い取った、とも聞いた。
ロームの佐藤研一郎氏は クラシックやオペラに造詣が深いということだから、建て替えにも 彼の趣意が大きく反映されるのでは と、要らぬ心配もした。
京都会館の健全な運営のためには、本来なら喜ばしいことなのだが・・・
ただ、スクラップアンドビルドだけは避けてもらいたい、と思っていた。

ことし6月に決まった「京都会館再整備基本計画」を、息子がネットでコピーしてくれたので、本気で読んでみた。
53ページの本文と6ページの資料から成る基本計画書は、真摯な内容であった。
ちょっと びっくりするくらい、真摯である。

論点はさまざまだが、建物価値継承とホール機能向上の折り合いが、最大の課題だったろう。
わたしのちっぽけな心配など、杞憂だったようだ。
望むらくは、オペラは諦めて、建物の高さを たとえ3メータでも低くしてほしい。
借景の東山は、岡崎公園周辺の宝物なのだから。


明治政府が東京に移り、天皇がいなくなった京都のさびしさは、想像がつく。
京都を愛する先人たちは、疏水をつくり 発電所を建設し 市電を走らせ 平安神宮を造営して、塞いだ気力を奮い立たせた。
日本最初の内国勧業博覧会が開かれたのは、京都の西本願寺であった。
明治28年 ここ岡崎の地で、第四回内国勧業博覧会が開催され、その目玉企画が平安神宮造営であった。

近代京都のシンボルである岡崎公園周辺の地は、京都人の誇りである。
その岡崎の地の象徴となる京都会館へ寄せる期待は、京都人なら等しく抱く思いであろう。

新しく生まれ変わる京都会館が、この岡崎の地にふさわしい建造物であることを、心から願う。
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