岩堀修明ブログ

ドクター岩堀の
「私設動物資料室」

強膜と角膜

2019-08-22 | ドクター岩堀の「私設動物資料室」
 脊椎動物の眼球壁は、外方より、「眼球線維膜」、「眼球血管膜」、および「眼球神経膜」より構成される。眼球線維膜を構成しているのは、強膜と角膜である。眼球線維膜の重要な役割は、眼球の保護である。
 胎生期には、眼球線維膜は透明である。発生が進むに従い、強膜になるところは白濁し、 “しろめ”になる。角膜になるところは、発生が進んでも透明なままで残る。透明な角膜は、胎生期の未熟な段階にとどまっている、と考えることもできる。
 強膜は、膠原線維や弾性線維を中心にした「密[線維]性結合組織」が主体となっている。強膜は、眼球をいろいろな障害から守る上で、重要な役割を果たしている。水中に棲息している動物では、眼球が水圧で押しつぶされるのを防ぐために、強膜に骨組織や軟骨組織が含まれていることがある。
 角膜では、光の通りを良くするために、発生の途上で血管が退化してしまう。完成した角膜には、血管がないため、角膜の栄養は、角膜周囲の血管網、「[眼]房水」、涙液などからの拡散によっている。白内障の手術の際には、角膜の周辺部にメスを入れるが、ほとんど出血は起こらない。動物が死亡すると、角膜は混濁する。死後、時間が経過するに従い、混濁の度合いは増強する。角膜が混濁していることが、動物が死亡していることの兆候の1つ、とされることがある。さらに、混濁の度合いが、法医学では、死後時間を推定する目安とされたり、鮮魚店では、魚の鮮度の判定に使われたりすることがある。角膜は、同一動物種内では、移植が可能である。この性質を利用して、角膜障害の治療には、しばしば角膜移植が行われる。角膜移植を支援する機構として、「角膜銀行(アイバンク)」が設けられている。

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究極の眼瞼とは

2019-08-05 | ドクター岩堀の「私設動物資料室」
 眼瞼は、眼球の表面に、涙液の薄い層を作るために発達してきたが、眼腺の障害や眼瞼の運動障害などにより、その機能を果たせなくなることがある。
 さらに眼瞼は、一定の時間間隔をおいて開閉を繰り返す「瞬目運動(まばたき)」を行っている。瞬目運動は、眼腺の分泌物を眼球表面全域に広げるために必要な運動である。ヒトの場合、“まばたき”の際に、実際に眼を閉じている時間は、平均0.3秒であると言われる。時速1200キロの速さで飛んでいる飛行機を操縦している場合を考えると、0.3秒の間、眼を閉じている間に、飛行機は約100メートルも進んでいることになる。すなわち、100メートルもの間、眼を閉じて操縦していることになる。場合によっては、“まばたき”が重大な事故につながる危険性もある。
 眼腺の障害もなく、眼瞼の運動障害も起こらず、できれば瞬目運動もないような眼瞼があれば、それこそは、完璧な眼瞼であると言える。
 この様な完璧な眼瞼を持った動物が、私たちの身近にいるのである。その動物とは、ヘビ類である。ヘビ類は、進化の一時期、地中で生活していた。この時期に、体のいろいろな所が改造された。眼瞼についてみれば、眼瞼を透明にした上で、上下の眼瞼を閉じた状態で、互いに接着させてしまった。つまり眼瞼を、眼球を覆う透明なキャップに、変えてしまったのである。こうなると、眼球は大気に触れることはなくなり、表面が乾燥することはなくなった。このため、眼球表面に涙液を分泌する眼腺は不要になったので、退化してしまった。
 ヘビ類では、眼瞼は閉じたままの状態になっているので、眼瞼の運動障害は起こり得ない。瞬目運動も起こらない。眼腺は退化してしまったので、眼腺の障害も起こり得ない。ヘビ類の眼瞼こそは、まさしく究極の眼瞼といえるのではないだろうか。

(本ブログの、“ヘビは「まばたき」をしない?”、“爬虫類の眼瞼(まぶた)”も参照して下さい。)
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