岩堀修明ブログ

ドクター岩堀の
「私設動物資料室」

頭頂眼

2019-12-16 | ドクター岩堀の「私設動物資料室」

 頭頂眼は、[外]側眼(左右の眼)と同様に、脳の一部が突出してできたものである。頭頂眼は、間脳の背側部が、背方に突出して形成された。
 頭頂眼の歴史は古く、[外]側眼とほぼ同じ時期に形成されたものと考えられている。最古の甲皮類の化石には、頭骨の背側正中部に、頭頂眼が入っていたと思われる「頭頂孔」が認められる。頭頂孔はデボン紀の原始魚類にも認められ、特に総鰭類には大きな頭頂孔が見られる。初期の陸棲動物にも、頭頂孔は認められ、原始両棲類や、哺乳類様爬虫類を含む初期爬虫類は、ほとんどすべてが頭頂眼を持っていた。
 デボン紀の化石には、左右に配列した頭頂孔が認められることから、最も原始的な段階では、頭頂眼は、有対で左右に配列していたものと考えられている。間脳の背側部は左右幅が狭いので、頭頂眼が発達して大きくなるに従い、左右には並びきれなくなって、前後に配列するようになった。前後に配列した頭頂眼のうち、体表に近い位置を占める方のものは、視覚器としての形態を維持しているが、体表から遠い方のものは、次第に視覚器としての形態を失い松果体となった。
 進化の過程で、頭頂眼には退化の傾向が認められ、多くの動物で、三畳紀までに、頭頂眼は消滅してしまった。魚類は早い時期に頭頂眼を失っており、現生の両棲類、ほとんどの爬虫類、すべての鳥類や哺乳類でも、頭頂眼は欠如している。現生動物では、ヤツメウナギ、およびムカシトカゲとある種のトカゲだけが頭頂眼を持っている。これらの動物の頭頂眼には、角膜、水晶体、網膜などができていて、光受容器としての形態を備えている。頭頂眼からの情報は、「頭頂神経」により間脳に伝えられている。頭頂眼が衰退したのとは対照的に、頭頂眼のもう一方の片割れである松果体は、多くの動物で残存している。
 頭頂眼の主要な目的は、上から襲ってくる敵を感知することであった、と考えられている。進化が進んで動物の動きが活発になるに従い、垂直方向からの視覚の必要性は、少なくなった。その結果、頭頂眼は次第に存在意義を失って消滅した、と云われる。
 しかし、もう少し違った見方がありうるのではないだろうか。頭頂眼の盛衰は、頭頂眼の片割れである松果体の存在を念頭に置いた上で、考えるべきである。哺乳類では、網膜で受容された光の情報の一部は、視神経 → 視床下部 → 脊髄 → 上頚神経節を経て松果体に伝えられている。松果体に伝えられる光の情報は、昼と夜の光量の差に関するものである。松果体は、視神経を介してもたらされる情報により、昼と夜でホルモンの分泌を変えている。昼間はセロトニンが多く分泌され、夜間はメラトニンが多くなる。ホルモンの分泌を変えることにより、外界の昼と夜のサイクルに体内機能を同調させ、一日のリズムを形成している。網膜からの情報の一部が、松果体に伝えられる回路ができたことにより、松果体が頭頂眼のはたらきの一部を代行している可能性がある。
 多くの動物では、頭頂眼を作るより、視神経から松果体に至る情報伝達回路を形成して、松果体を残す方が有利だったのではないだろうか。この結果、松果体は生き残り、頭頂眼は衰退の道をたどったのであろう。さらにもう一段階飛躍して、松果体にもたらされる視神経からの情報の内容より考えると、頭頂眼が得ていた外界についての情報は、上から襲ってくる敵の有無ではなく、昼と夜の光量の差だったのではないだろうか。

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