岩堀修明ブログ

ドクター岩堀の
「私設動物資料室」

壁板(輝板、tapetum)

2019-10-31 | ドクター岩堀の「私設動物資料室」

 暗闇で光が当たると、ネコの眼は黄色く光って見える。ネコの眼球には、光を反射する構造物があるからである。眼球の中にあって、光を反射する構造物を壁板(tapetum)という。壁板は、脊椎動物や節足動物に広く分布している。
 眼球の中に入った光のすべてが、視細胞に受容されるわけではない。一部の光は、視細胞に受容されないで網膜を通過してしまう。網膜を通過した光は、色素上皮や眼球血管膜などに吸収される。受容されなかった光を網膜に戻し、もう一度視細胞に受容される機会を与えてやれば、光をもっと効率よく利用できることになる。網膜を通過した光を反射して、効率よく使うために発達してきたものが壁板である。壁板があれば、光の弱いところでも物を見ることができるようになる。壁板は、夜間に活動したり、深海や濁った水などに棲息したりしている動物など、光の乏しい環境に棲息している動物の眼に見られる。
 壁板は、構造や反射物質に基づいて、次の様に分けられる。
①構造による分類
 ❶網膜性壁板:色素上皮が厚くなり、光を反射する結晶または脂肪滴を含んでいるもので、硬骨魚類、ワニ、オポッサムなどに見られる。
 ❷細胞性壁板:色素上皮の外方に、反射性物質を含んだ多角形の内皮細胞が数層に配列したもので、代表的なものは、ネコの眼に存在している。
 ❸線維性壁板:色素上皮の外方に分布している線維により形成される壁板であり、いろいろな動物に見られるが、なかでも有蹄類に共通してみられる。
➁反射物質による分類
 ❶グアニン化合物:魚類や夜行性のキツネザルなどが持っている。
 ❷亜鉛化合物:ネコやイヌなどの肉食哺乳類に見られる。
 ❸脂肪小滴:硬骨魚類やオポッサムの壁板に代表される。
 ❹線維:有蹄類の壁板は、コラーゲンを含む線維より構成される。
 私たち脊椎動物の眼は、視細胞の光受容部が、瞳孔から入ってくる光に対して、背を向けるような配列をしたinverse eye(反転眼)である。瞳孔からの光に背を向けているということは、光受容部は、壁板の方を向いているということである。この様に配列した光受容部は、壁板からの反射光をまともに受容することができる。壁板は、反転眼にとっては、非常に効果的である。
 反転眼では、何故、光受容部が瞳孔から入ってくる光に、背を向ける様な配列になっているのか、理由は分からない。発想を転換して、反転眼の光受容部は、壁板からの反射光を、主要な光源とするように設計されたのではないか、と仮定したらどうだろうか。このような見方をすれば、反転眼の光受容部は、主要な光源の方を向いているのであって、きわめて理にかなった構造になっている。一つの可能性として、私たち脊椎動物の眼は、壁板からの反射光を主要な光源とするような設計で、作られたのかもしれない。さらにもう少し踏み込んで想像すれば、反転眼とは、瞳孔を通ってくる光のみならず、壁板で反射される光も受容し、光の弱いところでも機能できるような、性能のいい視覚器を目指して作成されたのかもしれない。

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