岩堀修明ブログ

ドクター岩堀の
「私設動物資料室」

魚類と両棲類の口腔腺

2020-02-11 | ドクター岩堀の「私設動物資料室」
 脊椎動物は水の中で生まれ、水の中で進化してきた。魚類は、そのまま水の中での生活を続けてきたが、一部の動物は陸に上がり、陸上で生活するようになった。魚類と、陸に上がった動物である両棲類の口腔腺を比較してみると、水の中で生活している動物の口腔腺はどの様なものであり、これが陸上で生活をする動物になって、どの様に変わったかを知ることができる。

魚類の口腔腺
 魚類の口腔腺は、単細胞腺が主であり、これに少数の多細胞腺が混在している。
単細胞腺を構成する腺細胞には、粘液細胞と漿液細胞がある。腺細胞の数や分布様式は、動物種によりいろいろである。
 粘液細胞は、口腔粘膜のほぼ全域に分布しているが、口腔の後部に多く集まっている傾向がある。多くの粘液細胞が密集している所では、腺細胞のために、粘膜が肥厚している。粘液細胞の多くは単細胞腺として存在しており、多細胞性の粘液腺を作ることは稀である。
 漿液細胞は、粘液細胞よりはるかに少ない。動物によっては、漿液細胞が欠如していることもある。漿液細胞は、単細胞腺を形成していることが多いが、多細胞性の漿液腺を形成していることもある。
 
両棲類の口腔腺
 両棲類の口腔粘膜には、魚類と同様に、単細胞腺が分布しているが、この他に、多細胞腺が発達している。多細胞腺の歴史は古く、口蓋部の骨の形態から判断すると、絶滅した迷歯類にも、口蓋部に多細胞腺があったことが推測されている。
 単細胞腺は、口腔のほぼ全域にわたって分布している。
 多細胞腺は、存在する場所により次の3つに分けられる。
①上顎間腺:口蓋に開口する腺であり、両棲類の主要な口腔腺の1つである。動物によっては、左右の腺が融合して1つの腺になっていることがある。一部の有尾類では、頭部の皮膚の直下にまで広がっており、頭部の皮膚腺と混在している。分泌液にアミラーゼが認められることがある。
➁舌腺:舌の発達している動物では、よく発達しており、逆に舌の発達の悪い動物では、舌腺の発育も悪い。舌筋の間に分布している多くの小さい腺房が集まって、1つの腺を形成している。一部の動物では、分泌液にアミラーゼが含まれている。
③咽頭腺(後鼻孔腺):後鼻孔の周囲を取り囲むように配列している腺である。腺体の中央部は口蓋にあるが、外側部は鼻腔に入り込んでいる。この腺は、口腔腺と鼻腺の一部が合体してできたものである可能性がある。外側部の腺の一部は鼻腔に開口している。

水中の口腔腺から陸上の口腔腺へ
 魚類の口腔腺には、粘液線と漿液腺があり、それぞれ粘液と漿液を分泌している。この両種の液の分泌は、魚類の時代から始まっていた。両棲類になると、アミラーゼの分泌も始まっている。
魚類では、粘液線の方が漿液線より、はるかに多い。このことから見ると、魚類では、口腔腺の主要な目的は、食餌と口腔粘膜との間の摩擦を少なくすることである、と考えられる。
 魚類の口腔腺と比べると、両棲類では、漿液腺の割合が非常に多くなっている。陸棲の動物になると、口腔が乾燥するのを、防ぐ必要がある。漿液腺が著しく増加したことは、口腔の乾燥を防ぐ上で、漿液が重要な役割を果たしていることを、示唆している。
 両棲類の中には、舌を長くのばし、その先に食餌を接着して捕食するものがいる。この様な動物では、粘着性の唾液を分泌し、舌の表面に粘着性を持たせることも、口腔腺の重要なはたらきになっている。粘着性のある唾液の産生は、爬虫類のカメレオンや鳥類のキツツキなど、少数の動物に引き継がれることになる。
 両棲類になると、単細胞腺の他に多細胞腺も見られるようになる。単細胞腺と多細胞腺を比較してみると、分泌物の量は多細胞腺の方がはるかに多く、分泌腺としての機能は、多細胞腺の方が優れている。陸上で生活するようになると、口腔の乾燥などに対応するために、多くの分泌物が必要になったため、多細胞腺が出現したものと考えられる。
 多細胞性の口腔腺の起源としては、口腔粘膜に由来する固有の口腔腺である可能性と、外部から移ってきた腺に由来する、という可能性がある。
 両棲類には、構造上、魚類の多細胞腺とよく似ている腺が認められることから、一部の多細胞腺は、魚類の多細胞腺を引き継いだものであることが、示唆される。両棲類の口腔粘膜には、腺に変わりつつあるいろいろな段階の腺がみられるので、多くの多細胞腺は、口腔固有の腺で、両棲類になって初めてできた、両棲類オリジナルの口腔腺であるものと、推測される。
 両棲類の口腔の周囲には、口腔と密接に関係のある皮膚腺が存在している。これらの皮膚腺の中には、導管が口腔内に開口していたり、腺体が口腔腺の腺体と混在していたりすることがある。これらの皮膚腺の一部や、さらに鼻腺の一部などが、口腔腺に変化した可能性がある。

本ブログの、“爬虫類の口腔腺”と“鳥類の口腔腺”も参照してください。


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