岩堀修明ブログ

ドクター岩堀の
「私設動物資料室」

イモリの肺

2019-01-17 | ドクター岩堀の「私設動物資料室」
 イモリは、いろいろな器官を使って呼吸をする。水中にいるときには、主に皮膚や口腔粘膜などを使って呼吸をしており、肺の呼吸器として役割は小さい。動物種によっては、肺内の空気量を増減することにより、浮力を調節する水力学的器官としての機能が、肺の主要なはたらきになっている。陸上にいるときには、肺が呼吸に占める比重は、大きくなる。
 肺は、縦長の嚢状をしている。左右で形態に違いがあり、左側の方が長い。左右の肺ともに、上半部は割に太いが、下方に行くに従って、次第に細くなっている。細くなっている部分は、「気嚢」と呼ばれる。
 肺の内表面は、背の低い隔壁で小区画に分けられていることもあるが、多くの動物では平坦で、表面を呼吸上皮が覆っている。呼吸上皮の下にある結合組織には、多数の毛細血管が分布している。呼吸上皮を介して、毛細血管内を流れる血液と、肺内にある空気の間でガス交換が行われる。ガス交換は、主に肺の太くなっている上半部で行われている。
 肺の下方部を占める気嚢は、空気の貯まり場になっている。気嚢は、平時には、殆ど機能していない。長時間にわたって換気ができず、肺の上半部に入っている空気の酸素含有量が少なくなると、気嚢は活動を開始する。気嚢は積極的に収縮と拡張を繰り返し、気嚢内の空気と肺の上半部の空気を混合し、上半部の空気を刷新して、新たなガス交換が行われることに寄与するのである。つまり気嚢は、空気貯蔵庫としての役割と、「鞴(ふいご)」としての機能を秘めている。気嚢は、爬虫類や鳥類の肺で大きく発展していくのである。
 有尾両棲類類の肺は、呼吸器としての意義はそれほど大きくはないが、爬虫類や鳥類の肺で発展するいくつかの要素を含んでおり、肺の進化を知る上で、重要な位置を占めているのである。

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カメの呼吸器と呼吸運動

2018-12-12 | ドクター岩堀の「私設動物資料室」
 カメの呼吸器は肺である。カメの肺は、体の背側部にあり、胸腔という腔所に入っている。ガス交換は、肺呼吸をする爬虫類の他の動物の場合と同様であり、胸腔の大きさを変えることにより、肺の大きさが変化し、肺に空気が出入りすることにより行われる。
 カメの体は、亀甲で覆われている。肋骨は亀甲と癒着しているため、動かすことができない。さらに、腹筋も退化している。呼吸運動の際に、重要な役割を果たしている、肋骨や腹筋などを使うことができなくなっている。このため、カメでは、特異な呼吸運動が行われる。
 カメの呼吸運動は、次のように行われる。亀甲に付いているいくつかの筋が活動することにより、胸腔の大きさが変わる。さらに、前肢や後肢を出したり引っ込めたりすることによっても、胸腔の大きさが変化する。胸腔の大きさが変わることにより、肺に空気が出入りして、ガス交換が行われている。
 ウミガメなどの水棲のカメは、水面に出てきて呼吸をしなければならない。これはクジラなどの場合と、同じである。ただし水棲のカメでは、口腔、咽頭、排出腔などの粘膜でも、補助的にガス交換が行われている。このため、かなり長時間にわたり、水中にとどまっていることができる。

参考資料
Kardong, K. V., Vertebrates, McGraw Hill,
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サソリの呼吸器

2018-11-17 | ドクター岩堀の「私設動物資料室」
 サソリ類は、鋏角動物の中では、原始的な部類に属する動物である。歴史的にみると、非常に早い時期に、水棲から陸棲に変わった動物である。
 サソリの体は、「前体」と「後体」より構成される。呼吸器は、後体の第3〜第6体節にそれぞれ1対ずつ分布している「書肺」である。書肺は、皮膚の一部が、連続して薄板状に陥凹できた、多数の肺葉より構成される。
 書肺がどの様な進化の過程を経て形成されたか分からないが、カブトガニなどに見られる「書鰓」が変化したものであろう、という説が有力である。書鰓と書肺は、非常によく似ており、どちらも皮膚の一部が、連続して薄板状に凹凸を繰り返した構造になっている。書鰓は、表皮の一部が連続して薄板状に突出したものである(本ブログ「カブトガニの呼吸器」参照)。これに対して書肺は、表皮の一部が連続して薄板状に陥凹したものである。空気呼吸の場合、肺葉の表面の湿潤性を保つとともに、呼吸に伴って体内の水分が失われることを防ぐために、薄板状に陥凹した構造になっている。しかしながら、呼吸器としての仕組みはどちらも同じであり、内方には血液があり、外方には、鰓の場合には水があり、肺の場合には空気がある。内方の血液と、外方の水または空気との間で、ガス交換が行われる。
 サソリ類の遠い祖先は、水の中で生活しており、書鰓で呼吸していたもの、と考えられている。陸に上がるに際し、水棲用の呼吸器である書鰓は、ほぼそのままの形で、陸棲用の呼吸器である書肺に変化した。
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Converse eye と inverse eye

2018-11-01 | ドクター岩堀の「私設動物資料室」
 眼球は視細胞(光受容細胞)の配列様式により、converse eye(CE)とinverse eye(IE)に分けられる。CEでは、視細胞の光受容部は、光の入ってくる方向を向くように並んでいる。これに対してIEでは、光受容部は、光の入ってくる方向とは反対側を向くように配列している。
 扁形動物には、CEを持った動物と、IEを持った動物が存在しており、両種の眼とも、扁形動物の段階で形成されたものと考えられている。両種の眼の歴史は非常に古く、しかもほぼ同じ時期に形成されたものと推測されている。
 CEは、いろいろな動物が持っているが、軟体動物のイカやタコなどの視覚器として大きく発展した。更に脊椎動物の頭頂眼(松果体)もCEである。これに対してIEは、脊椎動物の外側眼(左右の眼)で大きく発達した。
 CEとIEとは、ある意味で正反対の構造を持った眼である。両種の眼は、非常に早い時期に、ほぼ同時に作られ、現在まで生き残っている。何故2種類の眼が存在するのであろうか。存在する必然性があるのであろうが、その理由は分からない。
 脊椎動物は、外側眼にはIEを使い、頭頂眼はCEで作り、両種の眼を使い分けている。脊椎動物の視覚器を探求してみると、CEとIEの存在理由が明らかになるかもしれない。
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ヒトデの管足

2018-10-03 | ドクター岩堀の「私設動物資料室」
  ヒトデの管足は、歩帯溝の両側の皮膚が管状に突出したものである。管足の内部は、水管液で満たされている。
 管足の先端部はやや膨らみ、接地面は軽く窪んでいる。管足が岩盤などに接地すると、管足の底面の中央部分が陥入して真空の領域ができ、吸盤としてのはたらきをする。管足の背側部は球状に膨らんで「瓶嚢」となっており、管足の内圧を調整している。
 管足壁には、2種類の筋が分布している。「管足後引筋」は管足壁を縦走しており、管足を短縮したり、屈曲させたりするはたらきをする。「瓶嚢筋」は、瓶嚢壁をいろいろな方向に走っており、瓶嚢の大きさを調節している。
 管足は「側管」により放射水管とつながっている。管足と側管の結合部には弁がある。弁が閉じている時には、管足と瓶嚢は、周囲から独立した静水力学的骨格として機能する。弁が閉じている時に、瓶嚢筋が収縮すると、瓶嚢の水管液は管足に向かって集まり、内圧が上昇するため、管足は長く伸びるとともに“硬直した”状態になる。瓶嚢筋が弛緩し、管足後引筋が収縮すると、管足は短くなる。管足後引筋の一部が収縮すると、管足を曲げることができる。
 管足は、多彩なはたらきをする。原始的な段階では、管足は主にガス交換に関与していたものと考えられている。進化の過程で、管足は食餌を集め、これを口に運ぶはたらきをするようになった。現生のヒトデでは、管足は重要な運動器官となっている。ヒトデは、管足を使って移動している。この他に、管足は海底を掘り起こすはたらきもしている。
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