そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない





ゴールデングローブ賞を獲り、アカデミー賞最有力候補になっている作品。
どんなものかと公開直後に映画館にて観賞。
その感想。

これは相当な傑作。
星4つ。★★★★
感動できるいい映画、みたいなものでは全然ない。
どちらかと言えば、面白い、に近い。
笑える成分もかなり入っている。
中西部ミズーリ州の小さな町を舞台に、怒りが怒りを呼んでいき、悲しみが悲しみを招く「負の連鎖」を恐ろしく、ときに滑稽に描き、さらにその「負の連鎖」を理性と愛で押しとどめようとする人々の良心までをきちんと描きつつ、アメリカの田舎町に根深い人種差別の問題をがっつり織り交ぜ、アメリカの田舎町あるあると風刺とペーソスの効いた細部の遊び、そして意外性のあるパンチの効いたストーリーで描いていくという、なかなか妙味溢れる映画。
思わず上映中に「おおそうきたか」と唸ってしまった。
観客の想像しているようなベタなストーリーには全然ならないのがすごい。
最後の終わり方も秀逸。
うん、よく練られた脚本です。

これはアカデミー作品賞獲っても仕方ないな。
すっげー名作ではない(小粒といえば小粒な映画なの。だってFOXサーチライトだから)。
過去のアカデミー作品賞のどれに似ているか感覚的に言うと、「アメリカン・ビューティー」に近い。
でも「よくこんな脚本書いたなぁ」とは思うので、脚本賞受賞だけは間違いないだろう。
「シェイプ・オブ・ウォーター」との一騎打ち、どちらが獲ってもおかしくないと思う。

唯一の不満は、観客の誰もが抱く「あれへの答え」を一切提示せずに終わる点だと思う。
そこの答えをもし上手に用意できていたら(脚本的な妙味は失わずに、だ)、この映画は100%の名作になったかも知れない。
だが、答えがないからこそ名作になる映画もあるわけで。
でも僕は答えがある方が好きではある。
そこだけ。
うん、不満点はそこだけだな。

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