調査員の「目」

 日常の何気ない雑感とつれづれ日記。

楽毅(一)~(四)(宮城谷昌光著/新潮文庫)

2005-02-28 | 書評系
 太公望呂尚の次は中国・戦国時代(紀元前475年~221年)の名将を描いた「楽毅」。

■『楽毅(一)~(四)/宮城谷昌光著/新潮文庫』


 秦の始皇帝が中国を統一(紀元前221年)する前に七つの国(韓・魏・趙・斉・楚・燕・秦※「戦国七雄」)が覇権を争っていた。楽毅はその七つの国にも数えられない小さな国「中山国」の宰相の子として生まれ、祖国を失いながらも燕・趙・魏・韓・秦の連合軍総大将として天才的な用兵を行い、大国・斉の領土にあった七十余りの城を奪い取ってしまうのである。
 物語は、楽毅が斉の首都(臨シ)に留学するところから始まる。

 楽毅将軍は、漢の高祖(劉邦)や三国時代の諸葛亮が尊敬していたと伝えられており、劉邦は楽毅の子孫を探させたり、孔明は自らを管仲(斉の桓公を補佐した名宰相)・楽毅に比肩する者となぞらえていたという。

 それ程の男を描いたのが本書である。

 西のぼるさんの挿画がまた味があって良い。


太公望 上・中・下(宮城谷昌光著/文春文庫)

2005-02-28 | 書評系
 歴史を小説で溯るときどの時代まで溯るかは人の好みだが、宮城谷昌光さんの著書では夏王朝の時代まで溯れる。作品で言うと伝説の英傑伊尹を描いた『天空の舟(文春文庫)』になると思う。
 しかし、『天空の舟』は装丁も古くて何故かあまり読む気が起きない。次に時代順に追っていくと商(殷)王朝を倒した軍師・太公望呂尚を描いた作品に当たる。

『太公望(上・中・下)文春文庫/740円』

 商(殷)王朝(紀元前17世紀~11世紀半ば)では祭政一致の政治が行われていて、甲骨文字、亀の甲羅を焼いて行う占卜を政治に用いていた、などと世界史の教科書に書かれていなかっただろうか。

本書は商(殷)を倒すのに活躍した太公望が主役なのだが、同時代の商(殷)王朝最後の王・紂王(受王)も登場し「酒池肉林」も簡単に触れられている。今日では贅沢の限りを尽くす意味して使われることが多いが、そもそもの目的は神々への祭祀だったという (酒池肉林)

 私は軍師、戦略家の人物の類いが好きなので本書を読んでみたが、太公望を宮城谷さんの文章で読めて良かった。

 ちなみにある本によれば太公望呂尚は諸葛亮も使ったと言われる「奇門遁甲」に長じていたとされている。今から3000年以上も昔のことであるから真偽はどうでもよいが、卜が盛んであったことから何らかの占星術は修めていたのかもしれない。

 ところで全くの私見になるが、『楽毅』もそう感じだのだが、宮城谷さんの文章って主役の人物が妙に落ち着いているというか、人物描写を抑えているというか、味気ないというか・・・・。あくまで過去に読んだ記憶と感覚的な印象を基に書いているだけなので宮城谷さんのファンは怒らないで欲しいのだが(笑)、ファン以外の人で読んだ人の感想ってどうなんだろう。

 どうしても司馬遼太郎氏の作品と比較してしまうんだよな~(笑)。司馬さんの作品だと人物や情景が結構リアルに浮かんでくるのだが、宮城谷さんの作品だとそこまでいかないんだよな・・・。

 今、宮城谷さんは文藝春秋で「三国志」を書いていて1巻~3巻はもう刊行されているのでそのうち買ってみよう。