継続の法則 自助努力のススメ 公認会計士 内藤勝浩のブログ

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あか~ん チン No13 賞与引当金と社会保険料

2022-11-01 12:44:39 | 会計



 賞与引当金という勘定科目があります。
 従業員等に支払う賞与額のひとつの表現方法と考えてください。
 どのようなものか、事例で説明します。
 賞与の計算期間、支払月、会計期間は、下図のとおりとします。



 図のように、12月から5月までの賞与の支払いはX1期6月ですが、X0期3月において、12月から3月までの賞与が発生していると考えて、この期間分の金額を見積もって、費用として計上します。
 これが賞与引当金の考え方です。
 このとき、当該賞与引当金分の社会保険料(会社負担分)を計上すべきという考え方があります。
 仕訳で示すと次のようになります。



 賞与を支払えば、その分の社会保険料が必ず発生するので、賞与の発生とともに、社会保険料も発生していると考えるべきだという理由のようです。
 私は、この考え方に違和感を持っています。
 賞与の発生額を見積もって、賞与引当金として認識することには異論はありません。
 しかし、その分の社会保険料(会社負担分)を認識するというのは、どうなのかなぁ?と思うのです。
 これを考えるには、社会保険料がどのように計算されるかという情報を基に判断されるべきと考えるのです。
 下図は、上記の賞与計算期間の場合の月ごとの社会保険料額を示しています。
 この図のように、社会保険料は月単位で計算します。
 月単位で計算するとは、月ごとに被保険者であるかどうかを判定し、被保険者である場合は保険料を計算するということです。
 計算された保険料は、当該月を被保険者期間とする保険料と考えられます。
 そのため社会保険料は、月単位で発生すると考えるのが合理的であると私は考えています。
 これらの月ごとの社会保険料は、翌月末日までに支払うことになります。
 賞与については、実際に支払われた賞与額ではなく、被保険者に支払われた賞与額(税金等控除前の金額)の千円未満を切り捨てた金額を、標準賞与額として、この標準賞与額に保険料率を乗じて、賞与の社会保険料を計算します。
標 準賞与額は、健康保険では、年度の累計額573万円、厚生年金保険では、1ヶ月あたり150万円が上限となっています。
 ほとんどの場合、賞与額と標準賞与額は、ほぼ同じとなると考えますが、考え方として、賞与額から切り離した標準賞与額を設定して社会保険料を計算します。
 これは、標準報酬月額と同じ考え方です。



 また、図に記載したように、賞与を受け取ったら、必ず社会保険料が徴収される訳ではありません。
 被保険者が退職した場合、退職した翌日に被保険者でなくなりますので、例えば、6月10日に賞与を受け取り、6月15日に退職した場合は、6月は被保険者ではありませんので、賞与分及び報酬分の社会保険料は課されません。
 以上のような理由で、決算において、賞与引当金を計上したとしても、当該賞与引当金に対応する社会保険料は計上する必要はないと考えています。
 賞与を支払った月に、その月に被保険者である者の分の社会保険料を、報酬分と合わせて費用として計上すればいいのではないかと考えます。
 決算書類を1年に1回作成するような企業、また、2回作成するような企業にとっては、賞与引当金に対応する社会保険料を計上しても、計上しなくても、期間損益に与える金額的な影響は、大きくないと考えます。
 公認会計士が監査をしている企業等では、「計上すべきである」との指摘をよく目にします。
 あくまでも見積りですので、企業側が、私のような考え方に基づいていれば、絶対にしなくてはいけないということでないと考えます。
 社会保険料の場合は、月単位で計算しますので、賞与に対する社会保険料が賞与計算期間を通じて発生したとしても、実際の計算と不合理は生じません。
 賞与支払月に発生した社会保険料を賞与計算期間に配分する形になるからです。
 しかし、労働保険法の場合は、保険料の計算が、月単位ではなく、保険年度(4月から翌3月までの1年間)と事業期間となりますので、賞与計算期間とダブリやズレが生じ、賞与計算期間で労働保険料が発生したとすると不合理が生じてしまいます。(賞与引当金と労働保険料の関係については、説明できれば、いずれ説明しようと思います。ちょっとややこしい部分があります。)(いつになるか分かりませんが・・・)


 会計に関連した私の考えについて、書こうと思います。
 できるだけ分かり易く書きたいのですが、難しくなるときもあるかもしれません。
 (今回は、少し難しかったかもしれません。) 
 会計は分からないけど興味がある方、会計を勉強したいと思っている方、会計に携わっている方、何かのご縁で私のブログを読んでいただいた皆様のお役に立てれば幸いです。

 皆様に、神さま仏さまのご加護がありますように。
 61歳のオッサン公認会計士でした。
 では、また。