二つの死に方

この国では今、二つの死に方が増えつつあるのではないかと危惧している。
一つは理由なき殺人事件の被害者になり、死ぬこと。
二つ目はその加害者として、死刑になること。

みなさんも池袋通り魔事件のことは記憶しているだろう。地方の進学高に在籍していた少年の家庭は、両親が借金を払えなくなり蒸発し、崩壊した。学校にも通えなくなり、彼は中退し、東京に出奔する。大学進学の夢も無残に砕けた。新聞販売店などに住み込みで働くが、都会の絶対的な孤独の中で、徐々に罪を犯すことに対する耐性が低下し、遂に無差別殺人を行ってしまう。当時の新聞などによると、亡くなった方2名、重軽傷者6名だ。犯人造田被告は一審で死刑判決を受けている。

別の事件もあった。刑務所を出所した40歳の男が、職もなく、お金もなく、コンビ二に強盗に入る。たまたま、店に居合わせた19歳のアルバイト女性が刺殺された。

まだある。同じく刑務所を出所して保護観察中だった45歳の男が愛知県のスーパー内で、1歳半の幼児を刺し殺した。

被害者の立場にたてば、これほど無念で、許されない死はない。しかし、私は、犯人だけに問題があるのだろうかと考えてしまう。かつて、この国は治安が良く、世界中の先進国から、羨ましがられた。ほぼ完全雇用が達成され、終身雇用という最大の福祉を認識している経済人も多かったし、政府もそれをよしとした。貧富の差があまりない厚い中間層が社会を構成し、納税などの義務も果たした。それがここ15年ぐらいで、崩壊してしまった。経済は生き物だから、あるていど変化するのは仕方ない。しかし、変化に対する政策があまりにもお粗末だったのがこの国だ。仮に私がドイツ人で大学生の子供がいるとする。残念ながら失業したとしても、子供が経済的な理由で学校を中退する必要はない。なぜなら、失業者には最大で3年間、雇用手当てが支給されるし、条件次第で延長も可能だ。また大学の授業料もほぼ無料だから、子供も困らない。一回や二回人生に挫折しても、希望までは失わない社会的な政策が必要だと思う。そうすれば、少しでも犯罪に走る人間は減らせるし、その被害にあう人間も減らせる。
欧州ではEUに加盟する条件の中に死刑制度廃止がある。私はその詳しい法律制定の過程は知らないが、多分、彼の地の人々は、社会の中で人間が何故罪を犯すかに悩み、考え、議論し、その結論に達したのだと思う。被害者や残された遺族の感情とは別の次元で、凶悪犯に、厳罰を与えるだけでは決して日本の社会から、不条理な死は失くならない。

栃木県でまた、幼い子供が犠牲になる事件が起きた。容疑者は捕まっていない。希望も何もない人間が犯人なのだろうか。

目ない足ない
おまえミミズ
暗たん人生に
何の為生きるの  ― 永山則夫に死刑が執行されてから、もう8年になる。

コメント ( 2 ) | Trackback ( 6 )
« I am 職人. 私家版・世に... »
 
コメント
 
 
 
構造改革の弊害 (なかまた)
2005-12-04 19:16:21
何でも社会のせいにするのはいけないでしょう。ただ先日紹介した医療の論文でも貧困と殺人の多さは,少なくてもアメリカでの各州で比較し因果関係が認められています。

このような構造改革は進んでいきます。
 
 
 
管理人 (nizan)
2005-12-06 04:08:16
なかまたさん、はじめまして。TB、コメントありがとう。混合診療には反対です。日本の誰でも医療を受けられるシステムは維持されるべきですよね。なかまたさんと違い、私たち素人はそれを進めようとする人間に対して、対抗する有効な言葉をどう持ちえるかが難しいです。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。
 
規制緩和・構造改革の裏側で (ファミリー メンタル クリニック)
 マンション設計偽装事件は疑獄へ移り変わる様相を呈しているようだ。まだ「拒否できない日本」を読んでないが,素朴な疑問がある。  1998年に建築基準が規制緩和で今回の事件の発端となる民間審査となったようだ。ボクも単純に思うのは,阪神大震災の後に法律が改正された
 
 
 
子どもの安全を守るには (Make Your Peace)
子どもが犠牲にまる痛ましい事件が次々に起こり、報道されて、子を持つ親の心配はつのるばかりです。どうしたら子どもの安全を守ることができるか、学校も自治体も国も途方に暮れています。本当にどうしたらいいのでしょうね・・・。 そういうニュースを見る度に、我が家
 
 
 
地域社会の崩壊 (家にいさせて)
防犯パトロールのことを書くと言いつつ 流行語大賞の結果に、フォーー!フォーー!言ってたら 1日延びてしまいまして。 私、自転車の籠の前面に「○○区防犯パトロール」という 結構情けない表示を掲げている1人です。 「見做し防犯パトロール隊員」とでも言うんでしょう
 
 
 
愛の余韻----被害者感情と死刑廃止論 (とりあえず)
 先週のUnder the Sunのお題が「愛」で、それぞれに恥をさらした(実は私だけ?)のはよいとして、TNさんが続きを書いておられる。最近の光市母子殺人事件に関連して、被害者の怒りに死刑という刑罰でこたえるべきかどうか、という問題である。 日本とともに非武装を掲げる
 
 
 
世界でもサイテ~の教育政策で、日本は金持ちしか専門職につけず、ボロボロの国になるかも?! (日本がアブナイ!)
 今回は、前記事のつづきをアップするのだが・・・。 当初は2~3回に分けてアップする予定だったものを一気にアップすることにしたので おそろしく長い記事になってしまった。(-_-;)  興味を抱いて下さった方は、どうか疲れない程度に、何回かに分けて読 ...
 
 
 
多数の国民が反対する法案の通し方(政府与党・自公政権に捧ぐ) (村野瀬玲奈の秘書課広報室)
改憲手続加速法(いわゆる「国民投票法」)を5月3日の憲法記念日までに与党の単独採決ででも成立させたいと自民党の二階俊博国会対策委員長が語ったと報道されました。 障害者の生活を追い詰める「障害者自立支援法」、教育の主