㈱ワールド 良いんでないかい

2006年12月03日 | Weblog
なかなか是正されず、むしろ実質的には増々広がりつつある『格差』社会の中で少し、うれしくなるような、ホッとするようなニュースである。

  パート5千人を正社員化 ワールドが人材囲い込み

 ワールドは二十一日、直営店で販売に携わるパート、アルバイト約五千人の雇用形態を正社員に切り替えたことを明らかにした。人口減や景気回復で「今後は人の奪い合いになる」(寺井秀蔵社長)と予測し、安定雇用で優秀な人材を確保し競争力強化を狙う。流通・アパレル業界では人件費を削るため非正社員の比率が高いだけに、人材活用のあり方に一石を投じそうだ。(西井由比子)
 同社によると四月一日付で、自社の店舗運営子会社・ワールドストアパートナーズ(東京)のパート、アルバイト約六千人のうち、希望した五千人を正社員に登用した。今後も希望者のうち一定の基準を満たした従業員を正社員に切り替える。
 アパレル業界では製品のデザインに加え、販売力も業績を左右する。正社員化で従業員は待遇が向上するが、企業側も社員教育の充実や、優秀な社員の販売ノウハウを蓄積できるなどの利点がある。
 同社のブランドは若者向けから中高年向けまで幅広く、寺井社長は「(正社員として長く働いても)年相応のブランドで知識を生かしてもらえる。販売職以外にも活躍の道はある」としている。
 正社員増に伴い社会保険などの負担も増えるため、二〇〇七年三月期は前期に比べ人件費が二十二億円増える見込み。
 同社は〇五年十一月、経営陣による自社買収で株式上場を廃止しており、寺井社長は「コスト増に直結する経営手法なので、上場していれば株主に理解を得られなかったのではないか。非上場だからこそ、踏み切れた」と話している。(神戸新聞WEBより)

ワールドという企業について私は詳細な知識があるわけではないが、アパレル業界も競争が激烈で、経営陣は何もパートや契約社員の為だけではなく、政治的な意図があるわけでもなく、あくまで自社の競争力維持の為に今回の措置を取ったのだと思う。しかし、考察すれば、かつて日本の企業社会では当たり前と言えば、当たり前のことを復活させただけではないのか。経営陣から、末端の社員までが正社員(経営陣は社員ではないが)として働き、企業の一体感を維持し、業務の遂行能力を高め、社員個々の生活の向上もはかる。基本的に終身雇用を是としていた。しかし、80年代半ばに労働者派遣法が施行されたころから日本の勤労者の立場は除々に侵食されだして、小泉、竹中内閣の頃それがピークに達した。雇用の優等生だったはずの製造業ではいまや、偽装も含め請負なしでは製品一つまともにつくれなくなっているのが現状だろう。

ワールドの場合、上場廃止を決めたわけだが、企業防衛の意味合いも強いだろう。この辺は悩ましいところで、企業が発展し、近代的な開かれた経営を目指すのなら、株式公開がその一つの実績になるし、市場から直接、資金を調達できる。同族などの古い経営形態から、脱皮することになる。逆の考え方もあって石油元売大手の出光興産のように長いこと非上場を貫き、社員に定年もなかったが、最近、上場した企業もある。

結局、企業は誰の物であるかという観点からみれば、今回ワールドが取った措置も悪くはない。改正された会社法や商法とも絡んでくる問題で、その辺はとりあえずさんの記事を読むと勉強になる。
ワールドの英断(?)をひとまずは評価したいと思う。