読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

柳美里

2006年03月01日 | 日々の雑感
柳美里『家族シネマ』(講談社、1997年)

この小説で第106回芥川賞をとったということだが、えらい人たちの考えることは私のような凡百の考えなど遠く及ばないもののようだ。構成としては面白いと思う。ばらばらになった家族が女優志願の妹の発案から、姉である私の誕生日に集まって家族を再生させようという映画を作ろうとするが、それはあくまでも演技のことなので、演技をしながら、その実態が醜いまでに出てしまう。その醜さを、これまたちょっと業界ずれした若手の監督が面白がって、太鼓もちをする、そのあいだに、私が本業である出版の企画で知り合った、これまた変な陶芸家?彫刻家?にお尻を写真にとられ、もちろんそこまでは書いていないが、肉体関係を結んでしまう。家族シネマのほうはあるパチンコ屋の支配人をしていた父親が解雇されることになり、あえなくシネマ自体がなりたたなくなり、私のほうもお尻フェチの初老の男に別の女ができてしまうということで、企画自体がなりたたなくなる。

柳美里という人の実人生での壮絶な話はちょっとは耳にしたことがあるし、ある舞台人とその子との話もなんか見たことはあったので、以前から読んでみたい作家の一人だったのだが、まぁ一応評価の定まったこの作品を読んでみても、これ以上この人の作品を読んでみようという気にはならない。作者履歴を読むとずごい数の作品タイトルが挙げられているので、多作な人なのかもしれないけど、もういいやっ、て感じです。

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