疑似餌釣り師の酒蔵だより

酒好きルアーフィッシャーが蔵出しするボヤキ

活き〆めの記憶

2005年08月16日 | 雑記
何年か前のお盆に子供達を連れてカミさんの実家へ行ったときのこと。
近くで夏祭りをやっていて、子供達と行ってみるとニジマスのつかみ取りのコーナーがあった。小学生のみ参加できて一人2匹まで。
子供達は二人とも頭からびしょ濡れになってそれぞれ2匹ずつのニジマスを持ち帰った。

カミさんの実家に戻ってからビールを飲んでいるとカミさんがきて
「やっちゃって欲しいんだけど。。。。。。」
「??」
「殺してって事だよ」
「何?お前を?」
「バカ、子供達が持ってきた魚だよ。あんな普通に泳いでるの料理できないよ」
俺は疑似餌釣り師。釣った魚をキープすることはめったになくなったが、(キープサイズを釣ることはめったにないが、の方が正しい表現かも)活きたニジマスを〆めることくらいどおってことない。
むしろ、カミさんもその母親も生きてる魚を殺せないって事に少し驚いた。
聞いて見ると、始めはそのまま包丁を入れようとしたが、動きが激しくて固定できない。
キッチンのシンクにしばらく放って置おいたらそのうち弱って死ぬんじゃないかと思い、やってみたがいつまでもシンクの中でバタンバタンやってて、その音を聞いていたら、なんだかかわいそうになったんだと。

たらいの中で泳いでいるニジマスを1匹ずつ取り出し、玄関先のコンクリート地面にニジマスの頭をガツンとやるとほぼ1発で逝ってしまう。
カミさんはその様子を汚らわしいものでも見るような目付きで、少し離れた所で見てたっけ。

きれいに塩焼きされたニジマスだったが、カミさんとその母親は、泳いでいる元気な姿を思い出して、かわいそうで食べられないと言っていた。
養殖物だが、臭みもなくけっこううまいニジマスだったと記憶している。

活〆めというと、私にはもっとすごい記憶がある。
ここまでの話はその振り。以下少し残酷。
私がまだ小学校に上がったばかりの頃の話。
私の父親は農家の七男で婿養子。その父親の実家へ行ったときの話なのだが、祖母は孫(私ね)の来訪を歓迎して、鶏肉をごちそうするという。
今から40年近く昔、田舎での話なので、そんな時代設定で。
その家では鶏をたくさん飼っていて、今日食べるために1羽〆めるから見るか?と言われ、のこのこ後を付いていった。
当時〆めるって何のことか分からなくて、単に捕まえてくるぐらいにしか考えてなかった。

祖母(だったか伯父さんだったかは定かでない)は鶏小屋の中の1匹を網で捕まえると、近くにぶら下がっている縄に手早く足を結び付け、逆さ吊りにした。
ギャーギャー暴れる鶏。
何をするんだろうと考える間もなく、ナタで鶏の首が切り落とされた。
その瞬間、一緒に見ていた従姉妹はキャーっと叫び顔を覆ってしゃがみこんでしまった。
首のない鶏は、なおも羽根をバタバタさせ鮮血が飛び散る。
「こうやってしばらく血を抜いてから、羽根を全部取ってそれから料理するんだ」
祖母はそう言った。

その日、せっかく出された新鮮な鶏肉を食べられなかったのは言うまでもない。
そんな強烈な記憶をカミさんの実家でニジマス食べながら思い出した訳さ。