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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

貧困ビジネス

2018年07月09日 | 現代の病理
数日前の『毎日新聞』夕刊に「多様化する貧困」のタイトルで、路上生活者は「厚生労働省の調査でも10年前の13.24人が17年は5.534人と半減した」とあり、インターネットカフェや等の過ごす人が増え、ホームレス状態が多様化しているとありました。

ちょうど借りきていた『貧困の戦後史―貧困の「かたち」はどう変わったか』(岩田 正美/筑摩書房)に次のようにあります。

「こんにちの貧困問題の核心は、個人的対処を賞賛し、貧困を覆い隠す市場の装置を
放置しつつ、「自立」支援や「子どもの貧困」対策をふりかざす政治にあると言うべきであろう。」(以上)

「貧困を覆い隠す市場の装置」とは

たとえば、バタヤや炭坑などの古い労働関係、民間の血液銀行と売血、労働宿舎のシステム、寄せ場の人夫出し業やドヤ経営、被保護者にまでおよぶ消費者信用の過剰供与、ネットカフェなど、貧困者をターゲットにし、しかし貧困からの脱出を阻止するような装置によって、日本の貧困は市場や企業の中に隠され続けてきた。なかでも、多様な産業(風俗産業も含めて)と結びついた労働宿舎(寮・借上げアパート等)の存在は、日本的な特徴であることを強調したい。(以上)

貧困を覆い隠す市場の装置に大学がなりつつあるということでしょう。『貧困の戦後史』は、ざっとしか読んでいませんが、時代によって“貧困の「かたち」”は、様々です。著者に敬意をはらって目次だけ紹介していきます。

第一章 敗戦と貧困 01
1 総飢餓?---生活物資の絶対的不足とインフレ 016
  「食べるものすらない」/「ヤミ市」という名の裏市場ノインフレと統制経済/生活困
  窮者への支援策/新たな貧困救済のスタフトノ「引き下げられたレベル」での平等
2 壕舎生活者と引揚者の苦難 032
  焼け跡の標準住宅/窮乏する壕舎生活者/引揚者への援護/引揚者定着寮/引揚者
  と緊急開拓事業
3 「浮浪児」「浮浪者」とその「かりこみ」 043
  餓死すれすれの人びと/「かりこみ」という一斉強制収容/「浮浪児」と「戦争孤児」
  /「浮浪者・児」問題の特別視/蝟集と犯罪性への恐怖/「闇の女」の由来/餓死と隣
  り合わせの極貧/「かりこみ」の様子/「浮浪者・児」の収容先/「島流し」先として
  の「浮浪児」収容施設

第二章 復興と貧困 067

1 ニコヨンーデフレ不況と貧困の「かたち」 070
  緊急失業対策法/「仕事出し」としての扶助/「適格者」選別/ニコヨン」と呼ばれ
  た失対日雇/職安と二コヨンノユコヨン世帯と家計/二つの公的扶助/被保護旦雇
  世帯
2 「仮小屋」集落の形成とその撤去 093
  「浮浪者」から・「仮小屋」生活者へ/東京の「仮小屋」集落/「蟻の街」の理想と現実/葵の出現/葵の解体過程
3 被爆都市と「仮小屋」集落 
  広島基町住宅と「土手」/「土手」へやって来た人びと/原爆スラム調査/相生通りの
  「仮小屋」撤去とその後

第三章 経済成長と貧困 129
1 二重構造とボーダーライン層問題 132
  「もはや「戦後」ではない」/「近代」と「前近代」の二重構造/「低消費水準世帯」  の推計結果/「社会階層」論による「貧困」把握/貧困プール論

2 負の移動と中継地--旧産炭地域と「寄せ場」地区 142
  経済成長と失業多発地帯/石炭鉱業の危機と大量解雇者/炭鉱離職者の移動/生活
  保護・売血・不就学/「寄せ場」地区/三大「寄せ場」/「寄せ場」の労働と生活/月
  単位で見た山谷労働者の生活/「寄せ場」の暴動
3 スラム総点検と生活保護の集中地区 172
  スラム問題と住宅地区改良法ノスラムの分類/本木フハタヤ」/「スラム改良」事
  業/そして何か残ったか’‐―-生活保護からみた「問題地区」

第四章 「一億総中流社会」と貧困 187
1 大衆消費社会と多重債務者 191
  七〇年代と「一億総中流化」/「豊かさ」の追求と家族の縮小/二億総クレジット社
  会」の出現/「サラ金・クレジット問題」の顕在化/多重債務が作り出す貧困の「かた
  ち」/多重債務者の特徴/多重債務世帯の生活レペルノ多重債務と生活保護
2 「島の貧困」の諸相 214
  山谷「正月騒動」/越年対策という「法外援護」/「寄せ場」総合対策の矛盾/開拓農
  家の窮状と開拓行政/開拓事業が作り出しか貧困の「かたち」/北上山地と新全総/
  改良住宅地区の再「スラム」化/再「スラム」化と再生計画/生活と住まい方の混乱・自律性の喪失と、制度への依存
第五章 「失われた二〇年」と貧困 239
‐ 格差社会と貧困 243
  路上の人びとの急増ノホームレスという貧困/収入ゼロのホームレス生活/路上生
  活者と仕事/誰がなぜホームレスになったのか/どこから路上へやって来たのか?
  イブリーター・ニードから派遣労働者問題ヘノネットカフエ難民‐隠れたホームレ
  スノT不ツトカフエ難民」調査/なぜ住居を失ったのか/年越し派遣村
2 保護率の上昇と相対所得貧困率 279
  保護率の上昇/生活保護利用者の特徴/被保護者の単身化・高齢化/OECDの相対
  所得貧困率/相対所得貧困率と子どもの貧困
3 「かたち」にならない貧困 296
  ○歳○日虐待死と貧困/こうのとりのゆりかご/「未受診や飛び込みによる出産」か
  ら見た貧困

おわりに1‐‐-戦後日本の貧困を考える 311
1. 貧困の継続・「かたち」の交錯 312
2. ポーガムの貧困論と戦後日本の貧困の「かたち」 314
3 貧困の「かたち」に影響を与えた諸要因 バ
4. 貧困者はもう十分「自立的」であり、それが問題なのだ
(以上)
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